東谷津レポート その40

2009.4.4() am10:30 山梨 薄曇り 気温18.7° 

 

今年の春はなんだか変だ。谷津田周辺も変だぞ。谷津田の入り口の桜、ソメイヨシノが連日の寒さで開花が足止をくらっている間に、山では山桜が咲き出したのだ。梅と桜が一緒に咲くことはよくあることだが、ヤマザクラがソメイヨシノより先に咲くという逆転現象は初めてのことだ。

昨日まで続いた寒さもついに北へと去って行ったようであり、週間天気予報はオレンジ色の晴れマーク一色、里山は春爛漫、こうなると山は待ってはくれない。いっきに花が咲きはじめたのだ。あと数日で木々は新芽を出して山はもえぎ色に色付き、針葉樹の深い緑色とのグラディエションでみごとなまでの美しさを見せつけて数日のうちに色を変えて行く。葉を出すより前に花を咲かすものから、葉の後に花を付けるものにあっと言う間にバトンタッチ、昆虫達も動き出す、忙しくなるぞ。
 

シロバナタンポポ:名のとおり白い花をつけるタンポポだ。西日本では普通に見られ、四国や九州にはこの白花しかないところがあるそうだ。最近、ここ飯能でもよく見掛ける。


キュウリグサ:別名タビラコ、道端で見掛ける背の低い2年草、直径2ミリ程の極小さな花を次々と咲かせる。注意しないと見逃してしまいそうだ。葉をもむとキュウリの臭いがするそうだが、写真を撮ることに夢中で嗅ぐのを忘れてしまった。
 


キランソウ:道端で普通に見られるこの花は、別名がジゴクノカマノフタとすごい名前がある。地べたにはうように葉が広がり、中心付近に1センチ程の花を沢山つける。
 



スイバ:田んぼの畦などで普通に見られる。この写真はまだつぼみで、花は茎がもっと伸びてから咲く。子供の頃、これくらいのものを選んで摘み、茎を2つに裂いて塩水に浸し、何本かを束ねて木に吊るし、半日程風に当ててシナシナしたものをおやつ代わりに食べたのを思い出す。これに似たギシギシは旨くない、不味い!!

 


ネコノメソウ:里山の湿地に群生した情景は見事だ。名は果実が2つに割れ、その裂け目が昼間のネコの目の瞳孔に似ているからだそうだ。


クロモジ:落葉の低木で言わずと知れた良い香りがする高級楊子の材料、小さな花が枝先に集まって咲く。名の由来は、幹に現れる黒い斑点を文字にみたてたらしい。
 


ウグイスカグラ:林間で見られる落葉の低木、枝先に花柄を出し1個の花を下向きにつける。名は一説にはウグイスが神楽を舞っているように見えるからとのことだが、どうも定説は無いらしい。果実が旨いらしく、熟すとすぐ鳥に食べられてしまい、なかなか見ることが出来ない。


モミジイチゴと思われる。直径3センチ程の花が下向きに咲いていた。葉が出てから確かめるとしよう。
 


クサボケ:明るい林の脇や田んぼの畦に生える極小さい落葉低木。雄花と両性花を同時に付ける。果実は大きく秋に黄色に熟し、食べられると言うが見たことが無い。畦などで草刈りと一緒に刈られてしまうからだろう。良い香りと酸味があり、果実酒に最適とのこと。


 

東谷津レポート その39

2009.3.28() pm1:00 山梨 薄曇り 気温11.2°水温13° 

 

ここ何日かの冷え込みで桜の花も開花を遅らせているようだ。谷津田では風が上空を通るせいか、ちょっと暖かい気がする。ヒサカキやキブシの花が咲き出した。

池では何やら騒がしい「ググッ、ググッ」何かがさかんに鳴いている。時期からしてヒキガエルの産卵が始まったのかもしれないと、彼等に気付かれないように身をかがめ、抜き足差し足、音をたてずに近付いて行く。心臓が期待でドキドキしてきた。

黒っぽい個体、茶色い個体がうごめいているのが見えてきた。やはり、ヒキガエルだ。廻りの山じゅうのヒキガエルが一斉に池に来たのだろうか、ざっと数えても50匹を越えた。池は波立ち、バシャバシャと水音をたてて抱きついている。雄同士が合戦を始めたのだ。そう、これがカエル合戦、雄は誰それかまわす抱きついては雄だと分かると離れ、また、近くのカエルに抱きつく。雌はまだ池にきていないよいうだ。

近づき過ぎたのか、私に気づいた奴は、水に潜って落葉の下や泥の中に潜って隠れてしまう。そんな中、ボールのように固まっている連中がいた。近寄っても離れない、中心にはまだ数少ない雌がいるのだろう。うまく抱きついた奴の間に無理矢理入り込もうと何匹もが絡み合ってゴロゴロところがっていた。面白くてしばし見入っていた。数日後には池一面に帯状の卵塊が見られるであろう。


池には沢山のヒキガエル(ガマガエル)がきていた。


オイ、美ガマが来たらしいぞ。


どこだ、どこだあ〜美ガマはどこだあ〜。


おい何する俺のもんだぞ。そうはいかぬ奪い取ってやる


俺もう疲れた、一休みしよう。(こいつら少ししてまたトライしていった。)

 



あっちは大変だね、俺たちいい場所を見つけもんだね。
 




 

あ〜あ、とんだ目にあったよ!!ったく。(ようやく2匹っきりになって)

 




キブシ:雑木林の湿地を好む。廻りの木々が葉を落としているうちにいち早く咲き出すのでよく目立つ。
鐘形で直径7ミリ程の花を鈴なりに付ける。雌雄異株とのことだがこの木はどちらか遠くて分からない。
 




ヒサカキ:山地の臨床で普通に見られる。枝先に直径3ミリ程の小さな花を沢山つける。雌雄異株でこの木は雌株のようだ。
 

 

東谷津レポート その38

2009.3.15(日) pm1:00 山梨 晴れ 気温19.1°水温20° 

 

朝9:00からトラスト4号地でのジャガイモの植付けと、椎茸の駒打ちを行い、午後から谷津田訪問だ。

東谷津ではアカガエルのオタマが大きく成長し、単独行動を始めた。一方ではまだ産卵が続いていて、休耕田やため池の中は奇妙な状態になっている。今日のような陽射しの強い日は、アカガエルの卵塊ある浅瀬は水温が20度にも達している。

前回のレポートのトウキョウサンショウウオなのか、谷津田のため池への水路で三日月形(ドーナツ形と言うほうがよいかな)の卵塊を確認した。となると、ひと山越えたホタルの里でも産卵が始まったかもと急いだ。ため池から水路沿に注意深く見て行くと、やはりあった水路に一対(トウキョウサンショウウオは2つの卵のうが繋がっている)、もしや今年から始めた試作田の中にもあるかも知れないぞ、さらに注意深く畦にそって見て行く。

「あったぞ!!」ここにもあっちにも、4対みつかった。今年始めた試作田なのに早速産卵したのだ。環境が良いのだろう。来週末の作業は要注意だ。

帰り道、ウグイスの初鳴きを聞いた。初鳴きにしてはちゃんとホーホケキョと鳴いていたので数日前から鳴いていたのだろう。初聞きと言うべきかな。
 


約2センチ程に成長し、単独行動を始めたオタマ達。


トウキョウサンショウウオの卵塊:今年から始めた試作田の中に産卵されていた卵塊。写真には2対ある。


シキミの花:毒性の強い面白い形の実を付ける。子供の頃、この実をヤマガラに餌として与えた記憶がある。ヤマガラは強固な嘴でこの堅い実の殻をたたき割って食べていたのだ。特に実は猛毒とのこと、ヤマガラはこの毒を中和する機能を持っているのだろう。(私の記憶が正しければだが・・・。)


ヒメオドリコソウ:オオイヌノフグリ、ホトケノザの中で咲きだした。

 

東谷津レポート その37

2009.3.7(土) pm1:30 山梨 晴れ 気温16.2 

 

一週間ぶりに陽が差した。延び延びにになっていた東谷津のため池の補強に使う間伐材の搬出を、美杉台団地に隣接する「森のようちえん」(自然の地形を利用した雑木林の遊び場)でチェーンソーを使い適当な長さにして運び出す。

作業中、音も無く何かが林間から出て来た。「ニホンカモシカだ!!」 日本の特別天然記念物のニホンカモシカがこんな市街地でおどろきだが、ここでの遭遇は2度目である。こちらにチラッと目を向けて白昼どうどうと道路を渡って向かいの茂みに入って行った。どうやらこの辺に棲みついているらしい。 
 
せっかくの晴天、作業の後、谷津田に向かった。不純な天候のせいであろうか、もう無いだろうと思っていたアカガエルの産卵はまだ続いている。このところの雨で増水した東谷津のため池につづく水路は、ところどころに流れ出した落葉が引っかかって流れを妨げている。落葉を取り除いていると何か動いてどんどん潜り込んで行く。でかいドジョウかも、慌てて網を持ち出して廻りの落葉と泥を一緒にすくってみた。落葉を1枚いちまい取り除き濁りを澄ますと、ドジョウのはずが手足がある。そうトウキョウサンショウウオだ。トウキョウサンショウウオも産卵のために林から水辺に出て来たぞ。
 


美杉台公園近辺に棲み付いているらしく、時折目撃される特別天然記念物のニホンカモシカ。2008,10,23に撮影したものだが、この時はマクロレンズしか持っておらずこんな写真になってしまった。今回はカメラを持っておらず残念。こんなものだね写真は


上手く隠れたつもりかな。尻尾が見えているぞ。


産卵のために林から水辺に出て来たトウキョウサンショウウオ。


メスなのだろうか、おなかが大きいように見えるが・・・。数日後には三日月形の卵塊が見られるかも知れない。楽しみだ。


頭胸部を拡大、実に愛らしいではないか、顔や手を観ていると思わず微笑んでしまう。


ハコベ:これはコハコベのようだ。ハコベの仲間は直径6,7ミリの極小さな花を咲かせる。花びらは10枚あるように見えるが、基部まで2裂しており5枚しかない。春の七草の1つだが気づかず通り過ぎてしまう。

 

東谷津レポート その36

2009.2.18(水) am9:30 山梨 晴れ 

 

東谷津のヤマアカガエルの卵も、2/2に一斉産卵されたものが孵化を始めた。大きな塊の33個の卵塊が全てオタマジャクシになっている。1つの卵塊に約1,000個の卵があるというので(研究者は面白いもので、これを数えたんだね)ここに3万3千匹ものオタマがいるってことになる。池底は真っ黒になっている。しばらくの間これらは、お互いに身を守るためか身をすり寄せて群れているためだ、これで大きく見せているのだろう。やがて独立して散らばって行く。

アカガエルの卵の調査をしているとき、東谷津のため池の上のコナラの大木の樹上に何やら大きな塊が見えた。双眼鏡で観ると、なんと猛禽類のノスリだ。小鳥や両生類が集まる谷津田、ここを狩場にしているのだろうか下をじっと観ている。早速カメラに収めたのだが遠すぎて写真にならない。身をかがめ物陰に隠れながら近ずくのだが、いつも逃げられる。こんな光景を人が見たら笑ってしまうだろうなと思いながら・・・。近いうちに大きく写し出されたノスリの姿をレポートするぞ!!

東谷津ほとけどじょうの里からひと山越えたホタルの里で展開されている「天覧山谷津里づくりプロジェクト」(市民、行政、企業が恊働して里山の保全活動を展開)では、休耕田の一部を田んぼ再生に取組むことになった。月1度の作業でどこまで再生できるかわからないし、獣害や、水の管理も心配されるが、とにかくやってみようと取組むこととなった。

田んぼが再生されれば、いろいろな生物が戻ってくるだろう。その再生を四季を通じて追ってみることにした。

2/2-09、水路の整備と田越しが始まった。アカガエルの産卵は間に合わなかっただろうが、ヒキガエル、シュレーゲルアオガエル、アマガエル達の産卵が有るかもしれない。ゲンゴロウも来るかな。期待しよう。
 


33個の卵塊から一斉に孵化したヤマアカガエルのオタマ。約3万3千匹が池の底を真っ黒に染めている。
 


東谷津のため池の樹上で餌を狙うノスリ、もう少し近付きたいのだが・・・。


何を見付けたのかな。谷津は春夏秋冬観察を楽しむ人たちが絶えない。


旅立ちがなごりおしいのか、コウヤボウキの綿毛が必死にしがみついている。仲間はもうとっくに行ってしまったのに。(花はレポート-29参照
 


「天覧山谷津里づくりプロジェクト」による田んぼの再生、整備された水路と田越しされた田んぼ。

 

東谷津レポート その35

2009.2.2(日) pm1:20 山梨 晴れ 気温11.2°水温11.5°

 

東谷津はヤマアカガエルの産卵がどっと増えていた。池にはトータルで70個程(ごちゃごちゃに産卵されているので憶測です)も有った。これって、昨年2/29にあった本番の一斉産卵(この時は50個程でした)かも知れない。だとすれば昨年よりも27日も早い、早すぎると思うが・・・。

東谷津の下の放棄田にも増えている。例の山脇の水たまりには3個増えて5個になっているし、地主さんが掘ってある水路に2個あった。



2/7-09(土) am10:20 晴れ 気温11.3° 水温12.8°

先日のヤマアカガエルの卵はもう孵化を始めた。昨年が、2/29の一斉産卵と同一日に確認してるので、孵化も昨年より22日も早い。杉花粉もとび始めたとのメディアの報道を思い出し、近くの杉林を見ると全体が赤ずんで見える。今年も多そうだ、ところで、私は花粉症を知らないのだ。
 


一斉に産卵されたヤマアカガエルの卵:アカガエルの調査の関係で、卵塊の数を数えなければならない、ひとつ、ふたーつ、みっつ、よっ・・・う〜んどこまで数えたか分からなくなってしまった〜。同じ場所でごちゃごちゃに産卵されると数えられないのだ。仕方なく家に帰って写真判定することにした。結果、この塊には33個の卵塊が確認できた。


今年は早いぞ!!  山際のよく陽の当たる水たまりでは、この通り、もうオタマジャクシになってジェリー状の寒天質の上でたむろしている。


隣の卵塊では、ちょうど孵化が始まっているところだ。力一杯尻尾を動かして寒天質の部屋からとびだして来る。


こちらはまだ卵のまま、真ん丸い黒い卵は少しずつ変形して、オタマジャクシの形になってからとびだすのだ。それまでじっと静かに待っているのだ。

 

東谷津レポート その34

2009.1.25(日) pm12:00 山梨 晴れ 気温8.8°

 

リーン、朝、電話が鳴った。「谷津田にヤマアカの卵塊が有るよ、知ってた?」と谷津田の近くに住む友人からだった。今日は東谷津ホトケドジョウの里の月例作業日なので、作業の前に一回りしてみようと思っていたところである。

谷津田に着くと、早速、情報の有った地点に行ってみると、2個の卵塊が山際の日当たりのよい水たまりで、陽光をいっぱい浴びて光っていた。産卵直後の卵塊は、卵を包む寒天質がクリスタルみたいに透明ですごく奇麗だ。卵塊の様態からヤマアカガエルであろうか、デレッと横に広がっている。昨年の産卵開始が1月16日だったので今年はちょっと遅いが、これは気の早いカップルのフライングなので他のカップルは続かないであろう。これからボチボチと第2、第3のフライング組が出た後、3月中から末の暖かい日が続いた後に突然無数のカエル達によるカエル合戦で一斉産卵された無数の卵塊に恐ろかされることだろう。このカエル合戦一度見てみたいものだ、楽しみに待つとしよう。

春一番の草花、オオイヌノフグリとホトケノザが今年も仲良く咲き出した。何故受粉を手伝う昆虫が少ないこの時期に花を咲かせるのだろうか、それぞれに特殊能力を持っているかららしいのだ。

月例作業は、池の整備と山の斜面のブッシュを刈り取る下刈りで2時間半の作業を終え、お茶を楽しみ終了した。

 


ヤマアカガエルの卵塊:今年もいよいよ始まった。産卵間もない卵塊は、卵を保護する寒天質が透明でクリスタルのように美しい。


産卵場所:山際の陽当たりのよい浅い池(と言うより水たまり)。このような陽当たりのよいくぼ地は、風も通らず、真冬と言えども暖かく、人にとっても心地よい場所だ。つい長居をしてしまう。


本日の作業:杉の間伐材を使って池の補強。手慣れたものだ。


本日のもう1つの作業、谷津田からせり上がる山の斜面の下草が刈り取られ里山の風情が出て来た。


ため池は適度に保水されており、良い状態で春を迎えられる。カエルやサンショウウオの産卵が待ちどうしい。ホタルやホトケドジョウはどうだろうか?今年もいろんな生き物に遭えるだろう。


ジョウビタキの雄:きれいに整備された里山を偵察に来たのか、作業が終わって静かになると早速訪問者が現れた。このジョウビタキは中国、サハリンから渡って来て日本で冬を過ごす。オスとメスは別々に縄張りを持ち単独行動しているとのこと、訪問者なんかではなく人間どもが自分の縄張りで何をやっているのか監視に来たのだろう。ヒッ、ヒッっと甲高い声で鳴いていた。昨年はメスがググッ、ググッっと低い声で鳴きながら縄張っていたのを思い出す。(レポート-5参照
 


オオイヌノフグリ:ユーラシア、アフリカが原産地の帰化植物で明治の中頃に確認された。昆虫による受粉が出来ない時は自家受粉するという事でまたたく間に日本に定着したという。陽当たりのよい畦などでホトケノザとともに里地で一番早く花をつける。4枚の花びらは元で1つにつながっているので散る時は1つの花の形だ。
 


ホトケノザ:オオイヌノフグリとともに里地で一番早く咲く。名は花の下にある対生する葉が蓮華座に似ているところから付いたとのことだが、ここまでクローズアップにすると、花そのものが仏様が座しているように見えるのだが・・・。昆虫の少ないこの時期に咲くのは、閉鎖花でつぼみの中で受粉するという離れ業も持っているからなのだそうだ。春の七草のホトケノザは、キク科の植物でコオニタビラコのことであって、この花ではない。妙な話しだ。混乱してしまう。
 

 

東谷津レポート その33

2009.1.7(水) 山梨 晴れ 気温11.5°湿度35%

 

このレポートも昨年1月から初め-32回で一年を終えた。これから2年目に入るわけで、それに相応しくこのレポートのフィールドの最高峰「多峯主山
(とうのすやま)」まで足を伸ばすこととにした。

多峯主山は標高271メートルとけして高い山ではないのだが、近くに高い山が無い事から、山頂は360度の眺望ができるとても景色のよい所だ。特に、秋から冬にかけては大気が透けて、北西側の奥秩父の山並が青く幾重にも重なっている様は格別だ。(レポート-29の写真参照)一方、登って来た天覧山方向に目を移せば、落葉した雑木の林が市街地まで続いているのが手に取るようだ。

多峯主山、幾多の峰を成す山々の主と書くこの山は、山頂に経文を書いた河原石が12,000個も埋められ明和2年(1765年)の年代が彫り込まれている経塚が立ち、山頂直下には、5代将軍綱吉から8代将軍吉宗まで4代50余年間将軍家に仕えた黒田直邦の墓、雨乞い池、源義経の生母常磐御前にまつわ
る伝説が多くある。そんなことからこの名がついたのかも知れない。飯能駅から約4.5キロ、冬の一日、街中の歴史文化を散策し、ゆっくり道草しながら登ってみてはいかがかな?

このレポート、里山のさまざまな瞬間を季節の時々の風にのせて今年も続けます。
 


多峯主山山頂:標高271メートルと高くはないが、360度の展望が開けている。この山頂には、経文を書いた河原石が12,000個も埋められている経塚(写真中央)が立っている。ハイカーは山々の名を確認しているのだろうか?
 


多峯主山山頂から飯能市街側の雑木林:コナラ、ヤマザクラなどの落葉した林が市街地際まで続く、飯能市はここを景観緑地に指定、保全して行く計画で自然生態系の調査に基づいた手入れを今春から始める。てんたの会はこの調査に協力している。
 


「おおっ、天覧山にトロピカルフルーツ、温暖化もここまで来たか!!」と思いきやアオキの実であった。通常はスギやヒノキなどの針葉樹の下など木陰に生え、真っ赤に熟す実を付ける(レポート-15参照)のだが、間伐などで一気に日当たりが良くなるとこのように色付くようだ。
 


ジャノヒゲの実:秋には色々見かけた果実も真冬になると里山で見かけるのは、ヤブランの黒い実やヤブコウジの赤い実、ジャノヒゲの実などグッと少なくなる。この青い実を見ると子供の頃の遊びを思い出す。篠竹の一節を使い、4分の1位の所で切断し節側に細い竹を差し込み突き棒にする、一方はそのまま銃身となり、その銃身の両端からこの実を押し込み銃身の太い方から先に作った突き棒で一気に実を押し込む、実と実の間の空気が圧縮されてパンッと爆発音とともに銃身の先端の実が飛び出す仕掛けだ。次からは銃身の実のない方に新たに実を押し込み突く、この繰り返しで撃つので弾となるジャノヒゲの実を必死で集め、ズボンのポッケットは満杯に膨らみ、鉄砲を作るためのナイフ(肥後の守)が必携だったのだ。
 


オナガ:山道を歩いて行くと、突然"ギャーギャー"と頭上で声がする。カケスだと期待しながら、声のする方を見るがみつからない、さらに騒がしく鳴いている。遥か遠くの杉の木の天辺に鳥影がみえた。双眼鏡で確認すると、オナガの群れが警戒の声を発して移動していた。

 

東谷津レポート その32

2008.12.6(土) 山梨 晴れ

 

12月、ついに大好きな季節到来だ。木々の間から遠くの山肌まで見通しながら、積もった落ち葉をガサガサと音を立てて歩く楽しさは格別だ。

先日の木枯らしで、谷津田を囲む雑木林の落葉樹も皆一斉に葉を落としてピンと背筋を伸ばしている。落ち葉は、ため池の水面を覆いつくして浮いていてまるで池など無かったかのようだ。この落ち葉もやがて水底に沈み、腐敗して水中生物の餌となり土となって行くが、あまりの多さに水質は富栄養状態になり、池の環境を変えてしまうかもしれない。春先までには取り除かなくてはならないであろう。そう、あのアカガエルやヒキガエル、アマガエル、サンショウウオなどの両生類が産卵をしに戻ってくるまでに。

葉を落とした後の雑木林には、立ち木に擬態したり、落ち葉に埋もれてじっと動かず冬をやり過ごす生き物が多い。それらを探してみようとわくわくしながら雑木林に向かった。この季節の醍醐味なのだ!!
 


ため池の水面を覆いつくす落ち葉。
 


鮮やかに色付いたコアジサイの紅葉、コアジサイの葉は紅葉してもその艶を失わない。杉や檜の植林地の脇で目立っている。(花はレポート-18参照)
 


今にも旅立とうと風待ちのススキの穂が西日を受けて輝く。
 


前回に続き小さなクモを見つけた。クローズアップしてみるとわずか1mm程の腹部背面に見事な模様が現れた。この季節極小のクモが本当によく見つかるのだが何故だろう?今までこんな小さなものに関心が無かったのだろう。
 


こちらも極小、腹部背面には目立った模様は無いようだ。風が止んだ夕暮れ時じっとして動かない、時間が止まっているようだ。
 


ゴマダラチョウの越冬幼虫:幼虫の食草であるエノキ(大木になる落葉樹)の根元の落ち葉の中で冬眠中。親は樹上の青葉の裏に卵を産み付ける。孵化した幼虫は、10mm程の体長で葉が色づく前に幹をつたい、この暖かいベットにたどり着き、春に枝先に新芽が顔を出すまでじっと寝て過ごす。やっと寝付いた矢先、ちょっと失礼して写真を撮らせてもらうことにした。"急げ!! 
この幼虫一度目をさますと眠らずに動き回ってやがて死んでしまうらしいぞ"。目のさめるまえにそっと戻した。この幼虫、あのオオムラサキの幼虫とほとんど同じだ。体形、体色、エノキの葉を喰う習性までもだ、なのに人間様の成虫(チョウ)に対する扱いは天と地程の差がある。そう片や国蝶なのだ。このレポートぐらいは天の扱いをしてあげようってことで解説はこのゴマダラチョウで行うことにした。ゴマダラチョウの背中の突起は3対、オオムラサキは4対あるので一番下の写真と見比べてみよう。
 


ゴマダラチョウの幼虫:冬眠から目ざめた越冬幼虫は、越冬時の体色で枝先の若葉をめざす。脱皮して体色もこのように葉の保護色になり、何度かの脱皮を繰り返して樹上で蛹になり成虫に変態して行く。(写真は数カ月前のもの)
 


オオムラサキの越冬幼虫:同じ食草のゴマダラチョウとは背中の突起の数が違い区別ができる。4対ある。上の写真のゴマダラチョウの越冬幼虫と同じエノキの根元にいた。ちなみにこの幼虫、成虫のチョウになると国蝶なのだ。

 

東谷津レポート その31

2008.11.23(日) 山梨 晴れ

 

今日は東谷津からひと山越した天覧入り谷津(通称ホタルの里)での「天覧山谷津里づくりプロジェクト」のお祭り、里山復活祭だ。(行政、地主、市民が協力し里山の復活を目的に現地での実働を行っている。当h/pの同名欄参照)軽い作業の後、炊き出しのムカゴご飯とキノコ汁で収穫(まだ何も収穫はないのだが)のお祝いだ。

にぎやかに過ごしたお祭りが終わり、皆が引上げた谷津は晩秋の静けさを取り戻す。カヤ場はもうすっかり緑が消えて冬を迎える準備jに忙しい。パチッ、パチッっとあちこちで音がする、初秋に紫色の花を咲かせていたヤブマメが種豆を出来るだけ遠くに飛ばそうと、カラカラに乾燥したサヤを
爆発させているのだ。ホウジロがチチッ、チチッっとやけに楽しそうに鳴いている。これから次々と冬の渡り鳥がやってくる季節に入ったのだ。

クモの糸が風にのって飛んで行く。小さいクモや子供のクモは枝先までのぼり、糸を浮力にして飛ぶのだそうだ。旅立つ瞬間を見てみたいものだ。
 


里山のミニコンサート、皆、昔を思い出して口ずさんだり手拍子したり。


9月中旬に花を咲かせていたヤブマメはもう実になって鞘から種豆がはじけ出る。
 


ノブドウ:7月に花を咲かせ、初秋に淡緑、紫、碧色の果実を付ける。ブドウと名がつくが食べられない、鳥も食べないのだろう、この頃になると、葉も茎も枯れているが巻きひげで木などにしっかり絡みつき果実はまだついている。まるで里山の宝石のようだ。
 


ウマオイ(キリギリスの仲間):あのスイッチョンだ。行き場を失ったのかこんな目立つ所にいた。"早くしないとアリとキリギリスになっちゃうぞ"
 


葉が落ちると、こんな小さなクモ(体長3mm程、クモは体長に足は入れない)も見えてくる。立派な巣をはって獲物を待ち構える。
 


上の写真のクモをアップにしてみるとの腹部背面に見事な模様があった。何のためなのだろうか、こんなに小さいのだから、威嚇も擬態も要らないのだろうに。