NPO法人 天覧山・多峯主山の自然を守る会 会報No.51  2008.1.1 

 

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「もくじ」

●年頭によせて/浅野正敏

●大盛況だった天覧山谷津の里づくりプロジェクト/大石 

●第15回全国雑木林会議に参加して/岡部素明

●天覧山・多峯主山の四季〜森の賢者の号/市川和男

●日よう日ふる里散歩のおしらせ

●編集後記

 

 

●「年頭によせて」NPO法人天覧山・多峯主山の自然を守る会    代表理事 浅野正敏

 

<全国雑木林会議>

 全国雑木林会議の主催者から、次回の会議を飯能で開催しませんかとの呼びかけがありました。定例会・理事会等で検討してきましたが、第15回石見銀山大会(島根県、10月)において次回開催地に立候補した結果、今年の第16回飯能大会の開催が決定しました。(詳しくは別項、岡部素明氏の報告をお読み下さい。)

 大会は、飯能市が進める森林文化都市宣言やエコツーリズムを全国に知らせる良い機会です。平行して、飯能市に共同開催や支援を依頼してきましたが、市からは、森林文化事業としての資金等の支援に加え、大会の事業企画に盛り込むエコツアーの支援として参加者受付事務を担当して頂けることになりそうです。

今年はさっそく第16回全国雑木林会議実行委員会を立ち上げて準備に取りかからなければなりませんが、てんたの会として全面的に協力して行かなければならない大きな事業となります。

 

<里山の保全>

 昨年立ち上げた「てんた里山基金」による東谷津田のナショナル・トラストによる土地買取りを実現したいと考えています。この地は本年41日より市の景観緑地に指定される予定です。市民によるトラストの実績をつくり狭山丘陵トトロの森のように点から面への広がりになればと願っています。

 天覧山谷津(通称ホタルの里)の保全については、はんのう市民環境会議の「天覧山谷津の里づくりプロジェクト」が動きだしましたので、てんたの会として、草刈り、水路づくり、田圃づくり等の里山保全活動に主体的に協力して行きます。

 

<エコツーリズム>

 飯能市が進めているエコツーリズム事業において、当会は、「ホタルの里の水辺づくりツアー」、「里山自然観察ツアー」や「里山のメリークリスマス」といったエコツアーを実施しました。市報等により広範囲にお知らせが出来るためか、初めての参加者も増えてきて驚いています。大切に守って行きたい飯能の身近かな自然を知ってもらえる機会を更に広げるため、今年も積極的に実施して行きます。

 以上の事業はすべて人と人の繋がりによって進められるものであり、まちづくり(活性化)へとも結びついてきます。そうした視点を持ってひとつひとつの事業に取組んで行きたいと思います。

 

 

2007年事業年表」

 1  1日◇ふるさと散歩「初日の出で新しい年を迎えよう」の巻

      1日◇やませみ48号発行

 212日◇ふるさと散歩「冬山のバードウオッチング」の巻※

 311日◇ふるさと散歩「ホタルの里の水辺づくりツアー3」の巻

      エコツアー事業として実施予定であったが雨天のため中止

    23日◇飯能市長、飯能市市議会議長に「奥武蔵鳥瞰図」を進呈

    24日◇てんた里山文化の集いとNPO発足式

       「奥武蔵鳥瞰図」完成発表

       「てんた里山基金パンフレット」完成発表

 4  1日◇天覧入り谷津田を飯能市が正式に西武鉄道より借入れ

    8日◇ふるさと散歩「さくら、さくら、山桜」の巻※

    22日◇東谷津田の手入れ作業

      (社)飯能青年会議所のメンバー体験取材

 513日◇ふるさと散歩「新緑の中へ」の巻※

    14日、21日◇飯能第一小学校環境学習支援

    18日◇やませみ49号発行

      19日〜20日◇ツーデーマーチ会場にて「奥武蔵鳥瞰図」等展示販売

 6  6日◇上田埼玉県知事が天覧入り谷津を視察、

       てんたの会より「奥武蔵鳥瞰図」を進呈

    10日◇NPO法人認定後第1回総会、懇談会

    27日◇「ホタル観察会」川越環境ネット15名を案内

    30日◇ふるさと散歩「ホタル観察会」の巻

 7  8日◇ふるさと散歩「ホタルの里の手入れをしよう」の巻※

    14日〜92日◇埼玉県立歴史と民俗の博物館にて「奥武蔵鳥瞰 図」の展示販売

    2122日◇き・ま・ま工房木楽里10周年展にて「奥武蔵鳥瞰図」の展示販売

 812日◇ふるさと散歩「川を歩こう」の巻※

    26日◇東谷津田の手入れ作業

 9  9日◇ふるさと散歩「秋の野草観察」の巻※

 10  1日◇やませみ50号発行

      6日〜7日◇第15回全国雑木林会議へ3名参加(島根県大田市)

    13日ふるさと散歩「天覧山周辺の里山自然観察エコツアー」の巻

       エコツアー事業として実施

 1114日◇第25回ナショナル・トラスト全国大会へ参加(東京都渋谷区)

    23日◇ふるさと散歩

      「天覧山谷津の里づくりプロジェクト・里山復活祭」に協力

12  1日◇飯能市広報12月号にてんたの会の活動紹介掲載

   9日◇ふるさと散歩「里山のメリークリスマス・エコツアー」の巻

       エコツアー事業として実施

   13日〜15日◇東京ビックサイト・エコプロダクツ2007にて

       「奥武蔵鳥瞰図」の展示販売

 

*この他に、毎月2回の定例会兼理事会、やませみ編集会議と配布、

 ホームページ更新、1・2・6・8・9・1011月にも東谷津田の手入れ作業などを実施。

*表中の※印は、「はんのう市民環境会議」との共催事業。

 

 

●「大盛況だった天覧山谷津の里づくりプロジェクト」文・絵/会員・大石 章

 

 てんたの会念願の「天覧山谷津の里づくりプロジェクト」がいよいよ始動し、「里山復活祭」と銘打った第1回のイベントが、1123日(11日から延期)に開催されました。

 これは、荒れつつある天覧入りの一部を地権者である西武鉄道等から飯能市が借り受け、市民の手で里山として再生しようというもので、はんのう市民環境会議主催の下、多くの関係団体が協力して行うものです。

 朝9時、中央公園に数十名が集合し、はんのう市民環境会議木川会長、当プロジェクトの浅野委員長(てんたの会代表)のあいさつの後、天覧入りへ向かいました。みな長靴と作業服に思い思いの用具を持ち、子どもたちも数名混じっています。

 天覧入りの入り口には車進入禁止の立て看板が出ています。これも市民環境会議の成果ですが、草花の盗掘等も少しは減るでしょう。まず、手分けをして、広場への看板設置、ススキ・ヨシの刈り払い、土手のヤブ刈り払いを行います。

 今回手を入れたのは、天覧入り左奥の昔田んぼだった場所です。草刈り機以外の機械を使わず、基本的に手作業によるもので、急がず少しずつ以前の里山の風景に近づけようというものです。ススキ・ヨシ原はカヤネズミや小さな冬鳥が利用しているため、今回の刈り払いは一部にとどめました。谷津を暗くしている土手のササや常緑樹を刈り払うと見違えるように明るくなりました。ゆっくりと少しずつ水辺づくり作業を進めることで、ホタルなどへの影響も少なく、減少しつつあるといわれるカエルやトンボの増加も期待できます。また、草原を作ることで、チョウも増え、ノスリもやってくるでしょう。

 その後、市川和男さんの案内で観察会を行ったほか、すっかり埋まってしまった水路を掘り起こす作業まで行うことができました。空には、タカらしき鳥が姿を見せ、暖かくなってきて赤トンボ、ミルンヤンマ、ルリタテハ、キタテハなどが飛び交います。

 昼は、市の環境緑水課長率いるジャズバンドの演奏を聴きながら、西川木楽会とてんたの会に作っていただいたキノコ汁、ムカゴごはんをいただきました。最終的には65人もの参加者がありましたが、暖かい日差しの中、自然の恵みでおなかがいっぱいになると、日頃の疲れも忘れ、勤労感謝の日に相応しいイベントだと思いました。

 今後は、月に1回程度作業を進めながら、年3回程度こうしたイベントをやっていこうと考えているそうです。どこに田んぼを作り、どこにため池を作るかは、乱暴者イノシシの様子を見ながらの試行錯誤の作業になりそうです。どんどん会議や作業に参加して市民の望む里山をつくっていきましょう。

 

 

●「第15回全国雑木林会議に参加して」文・写真/岡部素明

 

平成19107日、日に第15回全国雑木林会議・石見銀山大会が、島根県大田市で開催され、飯能から浅野正敏さん、久下武男さん、そして私の3名が参加しました。

 私にとって参加の目的は、@何故石見銀山が世界遺産に登録されたかを確認する、A石見銀山を観てみたい、B雑木林会議とは何を目的とし、何をやるのか知りたい、でした。参加して、それらの目的は達成されました。

 まず@の何故世界遺産となったかについては、申請する地元の人たちの発想になかったそうですが、銀の採掘という産業と森(自然)との共生ができたということが最大の理由であると言うことでした。銀の鋳造には炭が必要であり、炭は森林を伐採し生産する。多くの鉱山は自然を破壊してしまった所が多いそうです。「もののけ姫」のモデルとなった「たたら製鉄」と合わせ、なるほどと思うことがたくさんありました。

 Aの石見銀山を観たいと言うことについては、地元のガイドさんの案内で、まだ一般公開していない本谷遺跡群ルートを歩くことができました。ここでは世界遺産をいかに護って行こうかという気概と、現実にはびこる竹との闘いを感じました。ガイドさんいわく「まだわかっているのは全体の0.3%ぐらいです」という言葉に?でしたが、たぶん、まだまだ森や土や竹に埋もれた遺跡は多いのだろうと感じました。

 Bの雑木林会議とは何だろうですが、1993年に始った会議で、市民による森づくり活動を相互連携して進めようというものです。たぶん、始めた方が里に住んでいて、里山(雑木)が開発され宅地や工場となっていく身近な環境から、自然を考え直そうよという発想であったのだと想像しました。

 会議において、来年の第16回大会が飯能市で開催されることが決定しました。森林文化都市を宣言している市であり、森林率が4分の3以上という市でもあり、エコツーリズムの市でもあります。飯能市で開催されることは意義深い事だと思います。皆さんと一緒に成功させましょう。

 

 

●「天覧山・多峯主山の四季〜森の賢者の号」文・写真/()日本生態系協会会員 市川和男

 

 新年を迎え、まだまだ寒い日は続きますが、長い冬の夜も1月7日を過ぎる頃には日の出時刻も早まり、日没の時間も少しずつですが延びてきます。今回は、陽が落ちてから活動を始める動物をひとつ紹介したいと思います。

 多峯主山から西に沈む夕陽を眺め、しばらく山頂で待っていると、南の谷から「ホッ、ホー、ウォッホ、ホーホー」と少しこもった低い声が聞こえてきました。すると、今度は東の谷から「ウォツホ、ホ、ホー」とこれに答えるかのような声がします。そしてまた南から「ホ、ホー、ウォツホ、ホゥホー」と返してきます。その鳴き声は、どちらも少しずつ移動しているようで、声は小さくなったり大きくなったりしながら山頂に届きます。

 声の主はフクロウです。陽が落ちて暗くなってから活動するため、あまり見る機会のない鳥ですが、その気になって探すと私たちのすぐ身近に存在する鳥なのです。

 体長50cm位のずんぐりした体のフクロウは、目は人間のように顔の前面につき、後ろは首をぐるりと180度以上も回転して見る事が出来ます。その目は暗闇に動く小さなネズミも見逃さず、顔の周りの羽毛は全体がパラボラアンテナのように円を描き、遠くの小動物のかすかな音さえも捉えては耳へと届けます。

 フクロウの耳は羽毛に隠れて外からは見えませんが、左右対称についている人間の耳とは異なり、左右の耳は上下に少しずれて付いています。これは、左右で獲物の方向を知り、上下のずれで奥行きを測るのに有効であると考えられています。

 フクロウの素晴らしさはこれだけではありません。闇夜の中を音もなく羽ばたき、太く鋭い足でネズミなどの獲物を捕らえます。なぜ、音も立てずに羽ばたくことが出来るのでしょうか。それはフクロウの羽に秘密があります。鳥が羽ばたくとき、翼で空気を切るために羽の表面に剥離流と呼ばれる空気の乱れが生じ、これが音となって風切り音が発生してしまいます。しかし、フクロウの羽をよく観察してみると、普通の鳥の羽に比べ細かなビロード状の毛で覆われているのが分かります。さらに、風切り羽の縁を見ると、くし型の構造となり、羽ばたきによって起こる空気の乱れを細かく分散させることで、音の発生を小さく抑えています。

 様々に進化した体の構造を武器に、森の賢者フクロウはドングリの豊作だった森に増え続けた野ネズミたちを求め、今夜も狩りに出かけてゆくのでしょうか。

 

 

●「日よう日ふる里散歩」

 当会では天覧山周辺の自然に親しんでいただくために毎月「ふる里散歩」を開催しています。お気軽にご参加下さい。

 

 ◆210日(日)

 「冬の里山バードウオッチング」の巻

 集 合/能仁寺山門前 午前9時半

 持ち物/飲み物・お弁当

 ◆330日(日)

 「ホタルの里の水辺づくりツアー」の巻

 集 合/能仁寺山門前 午前9時半

 エコツアー(要申込み)/大人2000円 子ども500円 

 問合せ、申込み先/042-974-1691 浅野

 ◆413日(日)

 「春の里山、山桜」の巻

 集 合/能仁寺山門前 午前9時半

 持ち物/飲み物・お弁当

 

★エコツアー以外は参加費300円(小学生以下100円)

★雨天中止

共催/はんのう景観トラスト、(財)埼玉県生態系保護協会飯能名栗支部、はんのう市民環境会議

 

 

●「編集後記」 

 

冬枯れの田んぼを眺めつつ、今年度の米の収穫の悪さはマムシのおかげと感慨!?にふける。無農薬10年を過ぎ、それでも天候、品種、体力の都合で毎年米作1年生。夏は草取りに励んだが、ばったりマムシと鉢合わせ…運良くか、はたまたマムシ様のご機嫌が麗しかったのか、それとも単に呑気だったのか、「さようなら〜」と言いながら猛スピードで後ずさりして難を逃れたが、あの8月以来田んぼに入ることはできなんだ…。やがて稲の根元は水草のジャングル。人間は小さい。この土地に来て12年。やっぱりこの土地に住んでいるのではなく、住まわせていただいているのが私なのだ。遠く広島から、今年もこの通信を通してたくさん感じ、考え、皆さんを応援していきます。

(デザイン担当/石岡真由海)