やませみ49号

もくじ
@天覧山・多峯主山の四季〜柳絮(りゅうじょ)の季節〜/市川 和男
A報告「NPO発足式及びてんた里山文化の集い」/浅野正敏
B天多を食べよう 春〜夏編/大石 章
C日よう日ふる里散歩のおしらせ
D編集後記



@天覧山・多峯主山の四季〜柳絮の季節〜
 


5月上旬の薫風の中、多峯主山周辺の谷戸を歩いていると、新緑をバックに白い小雪が空中を舞うような不思議な光景に出会いました。

空を見上げると大きな雲もなく、五月晴れに近い状態です。気温も暖かく、とても雪の降るような状況ではありません。また、ここは標高の低い丘陵地であり天候が急変するような山岳地帯でもありません。しかも今はもう5月です。

その光景をしばらく眺めていると、小雪のような白い物体は谷戸にどっしりと構える大きなアカメヤナギの枝先や、その横に育つ小さなイヌコリヤナギの枝先あたりから飛ばされていくのが判りました。胸に下げた双眼鏡でさらにその枝先を見ると、白い綿のようなものが枝先で揺れ、薫風を受けては少しずつ空中に飛ばされて舞い上がるのが見えます。



とても不思議なこの現象は、中国では柳絮(りゅうじょ)、北米ではコットン・ウッドと呼ばれ、最盛期になると吹雪のように視界を遮り、車がヘッドライトを点灯しなければ走れなくなる事も時々あるそうです。春の風物詩ともなっている小雪の正体は、ヤナギ科の植物が飛ばす種子でした。大陸ではドロノキやポプラなどの種子の飛散が有名で、飯能周辺ではおもにイヌコリヤナギやアカメヤナギ、バッコヤナギ、カワヤナギなどの種子が風に舞います。

風に舞うヤナギの種子を手に取りよく見ると、細かな白い綿のような繊維の中に小さな種が含まれているのが判ります。綿毛に包まれた柳絮(りゅうじょ)と呼ばれるこの種子は、春風に乗って遠くへと運ばれ、漂着した地ですぐに発芽します。柳絮が発芽することができる期間はおよそ一週間といわれ、漂着した場所が湿地のように湿っていれば発芽することが出来ますが、乾燥した場所に落ちてしまうと発芽することは出来ません。

イヌコリヤナギ

春風は谷戸の地形に沿って山裾から山頂に駆け上がり、さらに山奥へと向かいます。ヤナギの仲間は子孫を風に託して舞い上がらせ、新たな湿地へと進出していきます。湿地の多くは、そのままではやがて乾燥化が進み、土壌の度合いによって植物の生育できる種の構成は変化していきます。乾燥化が進むとヤナギ科の多くは他の植物に負けてしまい、そのまま生育を続けることが困難となってきます。ヤナギは新天地を求めて移動しなければなりません。柳絮の運命は気紛れな春風の気分次第といったところでしょうか。

市川 和男 ((財)日本生態系協会 会員)



ANPO発足式 てんた里山文化の集い

NPO法人 天覧山・多峯主山の自然を守る会(てんたの会)
代表理事 浅野正敏

去る3月24日(土)、飯能市市民会館小ホールにて「NPO発足式及びてんた里山文化の集い」を開催しました。「天覧山・多峯主山の自然を守る会(てんたの会)」がNPO法人として認証・登記(昨年12月)されてから早くも三ヶ月が経ちました。NPO法人化を内外に大きくアピールするためのイベントとして企画しました。

NPO発足式では、最初に今年2月に逝去された故谷口順子氏(当会前副代表)に全員で黙祷を捧げた後、浅野代表理事がこれまでの経緯を交えて挨拶いたしました。次いで、来賓として、沢辺飯能市長、佐野市議会議長、吉田教育委員会委員長、木川はんのう市民環境会議会長の各氏から、市民と行政の協働のもと自然環境を保全してゆく時代になったとの祝辞を頂きました。12年前(1995年)の当会結成時以後の団地開発の変更を求める活動に対しては、開発を進める立場にある行政・議会との対立という不幸な関係が続いたという経過と、それを乗越えて今があるということを、素直にこの場で話せることに感慨無量のものがありました。そして、いろいろな立場の方々が一同にこの会場に会するのも画期的なことと、思いを新たにしました。しかしながら、開発の中止を求めてきたこれまでの活動には、皆熱く燃えることが出来ましたが開発が中止された今、これから永く自然環境を守り育んでゆくことは、いままで以上に困難であると思われます。こうした認識を踏まえて、早瀬副代表理事から今後の決意を述べ、NPO発足式の締めくくりとしました。

発足式後のイベントでは、市川和男氏制作のスライド「飯能の生き物たち」の上映、天覧山・多峯主山のテーマを作詞・作曲者である「トシ&ハル」の音楽ライヴと、大いに楽しませて頂きました。この後、NPO発足に伴う記念として制作した「奥武蔵鳥瞰図」のお知らせと「てんた里山基金」設立のPRを行いました。この日、鳥瞰図制作者の友利宇景氏もお祝いに駆け付け、「当会の熱意に強く動かされて天覧山を中心にした飯能の山々を描きたいと思った」と挨拶を頂きました。

講演会では、「ブータンに学ぶ」と題し、NPO法人ブータン開発協力会議理事の脇田道子氏にスライドを交えてお話し頂きました。仏教の精神に支えられた生活と自然を大切にしているブータン国民の姿は、経済的には決して豊かではないが、本当の豊かさは何かを考えさせるものでした。フィナーレは、ひのこバンドによる音楽ライヴ。飯能にゆかりあるオリジナル曲でステージは盛り上り、全プログラムを無事に終了致しました。



B「てんた里山基金」のパンフレットができました!



てんたの会では天覧山北東側にある谷津田「東やつ」を買い取って、里山環境の保護活動を実践して行こうというナショナルトラスト運動を進めています。そのために「てんた里山基金」を設立し、その活動を紹介したパンフレットが出来ました。ぜひご覧になって活動にご協力ください。パンフレットは市内の「銀河堂」「豆さる」「銀座通り商店会事務所」他に置いてあります。里山基金へのご寄付は下記へお願いいたします。

「てんた里山基金」郵便振替口座
名称/NPO法人 天覧山・多峯主山の自然を守る会 
口座番号/00580-9-16342



C天多を食べよう 春〜夏編

文/自然観察指導員 大石 章
イラスト/黒住 浩次    

春から夏にかけて、山では緑が濃くなり、エゴノキ、コアジサイ、チダケサシなど白い花が目立ちますが、よく目をこらすと、おいしい自然の恵みがそこここに。今回は、食べられるものを紹介しましょう。山菜の本にある植物もたくさんありますが、根から掘り取るなど、回復不可能な採り方はやめましょう。



木イチゴ類はバラの仲間で、フユイチゴの仲間以外は、ほとんどこの時期に実をつけます。意外にたくさんの種類があります。5月後半から6月上旬に、林縁にクサイチゴ、ニガイチゴ、モミジイチゴが、日の当たる土手にはナワシロイチゴが実を付けます。そのまま食べてもよし、たくさんとれたらジャムに。ヘビイチゴもありますが、毒ではないもののまずいです。



キノコも夏にはたくさん出てきます。食べられるものかどうか、見分けが難しいですが、詳しい人に教えてもらいましょう。きれいな赤いキノコは毒と思われがちですが、タマゴタケはおいしいキノコです。きれいなのですまし汁のほか、煮ても焼いても天ぷらでも。チチタケ(チタケ)は、傷つけると白い汁が出るのでその名があります。茹でてあえたり、油いため、天ぷらなど。



●参考図書:山口昭彦/解説、木原浩・平野隆久/写真「山の幸」山と渓谷社



D編集後記

『人は昔、鳥だったかもしれないね。こんなにも空が恋しい』中島みゆきのこの歌詞を初めて聞いたとき胸が高鳴った。空を見上げると懐かしいような、恋しいような不思議な想いが湧き上がってくるのを、いつも体験していたからである。

意外にも多くの人が同様の体験をしているということを知った時、人には空に反応する遺伝子が存在しているに違いないと勝手に結論づけた。

そう言えば、以前ラジオで、こんな事を言っていた。「一日五分でいいから、空や星を見て下さい」と。遠い昔から存在している、空や星や木々。どんな癒しグッズよりも、きっと心を穏やかにしてくれるに違いない。
    
(会員 木崎久美子)