やませみ47号(2006.10.15発行)

●NPO法人への移行について/大石 章
●天覧山・多峯主山の自然を守り伝える憲章を作ろう/浅野正敏
●秋の渡りと天覧山/市川和男
●編集後記
※当会のホームページアドレスが変わりました。どうぞおいでください!
http://www.tenranzan.com/

--------------------------------------------------------------------------------

NO法人への移行について・・・文:守る会 会員 大石 章

天覧山・多峯主山の自然を守る会では、現在、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づく特定非営利活動法人(NPO法人)へ移行するための準備を進めています。順調にいけば、10月1日の設立総会を経て、1月頃にはNPO法人へ移行できるでしょう。今回は、NPO法人とは何か、法人化によって当会がどう変わるのかをご説明したいと思います。

NPO法人とは何か
 NPOはNon Profit Organization(非営利組織)のことで、広い意味では株式会社など営利を目的とする組織でない団体すべてを指しますし、一般的にはいわゆる「ボランティア団体」「市民活動団体」のことを言い、最も狭義ではNPO法に基づき認証された法人のことを言います。
 NPO法は、阪神・淡路大震災でのボランティアの活躍を踏まえて、NPO活動を支援するため、98年に制定されました。法では、行政の関与をできるだけ排除してNPOの自由な活動を保障しつつ、市民に対し開かれた責任ある公益活動をしてもらうことを目指しています。
 これまで公益法人については、監督官庁が、その設立から運営について許認可や行政指導を通じて細かく関与できることにより、その公益性について保障してきました。しかし、NPO法人については、そうした過度の関与をやめ、法律等で定める要件さえ満たせば原則4か月以内に認証し、その後も相当の理由がなければ立ち入り検査等はできないことになっています。一方で、利害関係人への情報公開が義務付けられているほか、行政への設立時の申請書や毎年の報告書の一部は公開されますので、市民による監視が可能となっています。つまり、NPO法人の公益性の判断は、多くは市民に委ねられるわけで、積極的に活動を知らせ情報公開を行う中で、市民の信頼を得ていく仕組みとなっています。
 なお、NPOが有償で物やサービスを提供するのはおかしいという方がいますが、NPOも組織運営や事業には当然経費はかかりますので、すべて無償ではやっていけません。NPO法でも収益事業を行うことは可能とし、ただし、その収益は非営利活動に充当することになっています。「非営利」とは、活動により生じた利益を団体のメンバー等に分配せず、目的とする公益のためにのみ支出することであり、利益を株主に分配する株式会社との大きな違いはそこにあります。

NPO法人になる理由
 守る会がNPO法人になることについては、
今年1月の環境講座でNPO法人制度について勉強したほか、総会や定例会で検討を重ねてきました。その結論は次のとおりです。
・これまで、東谷津の田を借りて、米づくりやホ タルの池整備などを進めてきたが、土地取得の機会が生まれ、その手続きには法人化が必要となっている。
・ホタルの里周辺の里山保全を進める話が出てき ており、そうした事業を展開するには市との協働や補助金確保が必要となり、そのためには法人化が望ましい。
・引き続き世代を超えて活動を繋げてゆくには、法人化しておく必要がある。
・現状では、一番設立が手軽でかつ市民の信頼が得られる法人形態は、NPO法人である。

NPO法人化に伴い何が変わるか
 現在の案では、名称は「NPO法人」が付くだけですし、会員・会費を簡素化し、運営体制を総会−理事会としましたが、実質はほとんど変わりません。今までどおり誰でも参加可能な月2回の定例会で検討しながら事業を進めていきますし、定例会は必要に応じて理事会を兼ねることになります。
 NPO法人になると、土地、自動車、電話などを守る会として保有することが可能になるほか、現実の問題として、各種補助金を受けやすくなります。また、最近、指定管理者制度の導入など法制度が整備されたことにより、自治体の施設運営や事業をNPO法人が受託する例も増えてきました。NPOは本来行政機能(公益)の一部を担うことを目的としているわけですが、法人として契約が交わせることで、行政との協働作業がよりスムースに進められることになるでしょう。
 なお、常にNPO法人に相応しい活動に努め、市民からより信頼される団体となることが求められることは言うまでもありません。



天覧山・多峯主山の自然を守り伝える憲章を作ろう・・・文:天覧山・多峯主山の自然を守る会代表 浅野正敏  

  当会では、これまで天覧山・多峯主山周辺の自然環境をよりよい形で後世に伝えてゆくための保全方法を検討し、練り上げてきました。その一つとして2001年には、1年半の時間をかけ専門家の力も借りながら、当地の詳しい自然環境調査を行い「天覧山・多峯主山自然環境調査報告書」を作成しました。
 自然環境を保全するためには、個々の地域の特性にふさわしい保全方法を検討することが必要です。そこで今回、報告書のデータを基に天覧山・多峯主山地域を以下の四つのゾーンに区分けしてみました。

1・貴重な動植物の保護を図るべきゾーン 
2・人の手を入れる保全活用ゾーン(かつての里山環境に戻す地域)
3・史跡も多いことから、その修景維持の必要なゾーン 
4・地域内の散策路の整備を提案するゾーン


 会では、このゾーン分けに基づく保全案を「はんのう市民環境会議」に提案し、この地にふさわしい保全のあり方を多くの市民に考え、検討していただきたいと思っています。
 現在、西武鉄道が所有するほたるの里(天覧山裏の天覧入りやつ田)近辺に飯能市が土地を借り受け、市民の力により里山として再生しようという話が進んでいます。市では、森林文化都市宣言事業のプロジェクトとして「はんのう市民環境会議」を通して広く市民に呼びかけようということにしています。こうした呼びかけで、多くの市民が天覧山・多峯主山周辺の保全活用に関わってゆくことがとても大切なことだと思います。ただその際、保全活用に当たっての方向と目標を見失わないように、みんなが守るべき取り決めをしておくことが重要です。
 そこで会では、今後、先に述べたゾーン分けに基づく保存案とともに、誰にでも解りやすく共通認識となるような自然憲章を市民に提案していくつもりです。以下のような内容が自然憲章として明文化され、天覧山・多峯主山の自然を将来の世代に最善の状態で引き継ぐことが出来ればと願っています。

明文化したい内容
○野生生物の回遊できる経路の確保等、多くの野生生物が生息可能な自然環境の保護・保全
○4本ある沢の水源の確保と多様な水生生物の保護
○外来及び他地域からの生物の持ち込み、侵入、拡大の防止
○森林を荒廃させない手入れの継続
○野生生物の持ち出しの防止
○現在まで留めている里山の地形の保全
○里山文化継承のための環境教育の充実
○四季折々の自然景観と歴史・民俗的景観の保全
○現在及び将来の市民にこの豊かな自然環境を継承する義務




秋の渡りと天覧山・・・文・写真:市川 和男 (天覧山タカ渡り観察グループ代表)

 多くの土砂災害をもたらした秋雨前線の活動も弱まり、大陸からの移動性高気圧と低気圧が交互に日本列島を通過します。高気圧は東西に長く、西から日本列島を覆うようになると中心から東側では乾いた暖かい空気によって晴天となり、晴れの日が3〜4日続きます。高気圧の西側では雲が広がり、天気は次第に下り坂となっていきます。
 厳しい冬の到来を前に、この安定した晴天日を利用して、多くの鳥たちは北から南へと大移動を行ないます。その中でも9月中旬から始まるタカの渡りは雄大で、秋の青空をバックに舞うタカの姿を見ようと首都圏から多くのホーク・ウォッチャーたちが天覧山山頂の展望台に集まります。日本では秋にタカが渡りをすることは古くから知られており、芭蕉の句にも「鷹ひとつ見付けて嬉し伊良湖岬」と詠まれているほどです。
 飯能でこれまでに記録されたワシタカ類の仲間は大型のイヌワシをはじめ、中型ではケアシノスリ、チュウヒなど、小型種ではツミ、コチョウゲンボウなど合わせて16種ほどですが、渡りの時期にはサシバ、ハチクマを中心にミサゴなど約10種が天覧山上空を通過していきます。
 サシバはカラスより一回り小さな茶色のタカで、カエルやヘビ、バッタなどを捕らえ食べています。以前は飯能周辺の谷戸でもごく普通に繁殖を行なっていた鳥でしたが、ゴルフ場など丘陵地の開発や田畑の圃場整備事業による乾田化や水路のコンクリート化、農地への除草剤の大量使用によって生息地を奪われ、埼玉県内で繁殖が確認されている場所は数ヶ所となってしまいました。

 ハチクマはトビくらいの大きさで、名前のとおりスズメバチやジバチなどの蜂を主食としているタカです。翼の幅が比較的広く、クマタカに姿が似ているので「蜂熊」と名付けられました。ハチクマは低山から山地の森林に棲み、奥武蔵の山々でも少数ながら繁殖が確認されています。秋も深まるとカエルやヘビは冬眠に入り、バッタやハチの姿も見られなくなります。サシバもハチクマも食料を求めて海を越え、暖かい南の島々へと長距離を移動しなければならないのです。

 奥武蔵でのタカの渡りは、移動性高気圧が本州の上空に位置し、その中心が東へ移動する頃に渡りのピークがあり、多い日には一日に400羽を超えるサシバの渡りが見られることもあります。タカは上昇気流をつかむと尾と翼をいっぱいに広げ、旋回しながら徐々に高度を上げ、空に吸い込まれるように小さな点となると、今度は尾を閉じ、翼を一定に保ちながら一直線に大空を南西へと滑空していきます。サシバの渡りは10月上旬まで見られますので、天気図を参考に天覧山の山頂へ出かけてみてはいかがでしょうか。

天覧山山頂


編集後記・・・黒住浩二
今、ギターにはまっている。家でも職場でも、時間があれば、ギターを弾いている。(決して人様にお聞かせできる腕前ではないが……)クラシックから、JAZZまで、ゴンチチ、デパペペ、村治奏一と手当たり次第に真似をして弾く。▼聞く方も、様々なアーティストのギター作品を聞きあさっている。中でもお気に入りは、IMEHAの「HAWAIIAN FINGERS」と言うアルバム。そのサウンドはまるで、ギターで美しい景色をスケッチしているような感じだ。聴いているとハワイの、懐かしい景色が目に浮かんでくる。(行ったことはないけれど。)▼天覧山・多峯主山周辺の景色をギターで弾いてみたい。蛍の飛び交う様や、一面にチゴユリの咲く景色、オオタカの舞う姿、雪の上のウサギの足跡、いくらでも題材があると思う。▼そうした曲を集めていつの日にかTENRANZANレーベルでCDを作れたら・・・・・・途方もない夢を見ながら、さあ今日もドレミの練習。