やませみ44号
発行日2005.10.15
目次
T  会の今後について話し合った全体集会報告 ・・・ 会員 丸山隆
U 飯能都市計画の公聴会で公述・・・ 文責 浅野正敏
V ふる里散歩『俳句でハイク』part2・・・会員 林 伸子
W  東やつホトケドジョウの里だより・・・会員 早瀬成憲 

T 会の今後について話し合った全体集会報告

 武蔵丘分譲地の開発及び道路建設計画の中止により、当面の間、天覧山・多峯主山周辺の自然環境を壊滅的に損なう形の開発はなくなりました。しかし、守る会では、この結果に満足することなく、天覧山・多峯主山周辺の自然を恒久的に守っていくための方法の一つとして、今後の当地における保全活動の方針を話し合うための全体集会を、9月23日美杉台公民館において開催しました。2時間強という短い時間でしたが、会の会合は初めてという会員も含めてたくさんの方々にお集まりいただき、活発な意見交換が行われ、開発計画中止後も変わらない関心の高さを感じました。
 当地は、谷津田の耕作や薪炭林として、人の利用によって形成されていったいわゆる「里山」で、放置されて何十年も経過したことにより場所によっては荒れた箇所が多いのですが、特に近年ホタルが飛び交う時期に人が集まる天覧入りの湿地の保全活動に関しては、たくさんの意見が出ました。その中でも、皆さんの意見が反映されていると思われるものを以下に挙げておきます。
 これらの意見を参考に今後の会の活動方針を立てていきたいと思います。
●天覧入りの休耕田に沿って続く道が途切れるまで歩いてみたが、乾燥化がかなり進み、近年ホタルが減ったというのは、これが原因なのではないか。
●田圃を再生すればホタルの数は増えるのではないか。
●ホタルが補食するカワニナもかなり少ないと思った。研究して、その原因を探らなければならない。
●3年前にはホタルが多かった。人の手を入れるのも人力であるならば、失敗しても自然を再生することは可能だと思う。
●田圃に手が入らず放置されることによって、そこで生息する動植物が少なくなっていしまい、何か手を入れる必要を感じている。
●山は確かに荒れてきている。間伐等を行い、間伐材で割り箸などを作ったらどうか。
●間伐をし、遠足に来ても気分のいい山にしたい。宮沢湖と天覧山・多峯主山と市内を繋げて何かができないかと模索している。
●手入れの行き届いた山は気持ちがいい。ゾーンを決めて手を入れることはできるのではないか。
●山を歩いていてゴミの多さが気にかかる。最低のルールは必要で、市の協力で回収作業などをした方がいいと思う。
●雨乞いの池に鯉が放り込まれているが、鯉に餌をやる事を楽しみにしている人達もいて、市がそうした行為を駄目だといわないと効果がないだろう。
●野鳥のたくさん来る山を目指したい。
●いくら保全のための活動をしたくても、土地所有者の了承を得なければ先に進まない。
●どのような方針であろうと、活動をしていることを世間に周知させるよう努力しないと、この地で営利事業の声が上がったら何もならなくなる。
●エコツーリズムの一環として試しに保全活動をすることが今やることではないか。
●当会で行った調査報告書の結果をふまえて専門家の意見も聞く必要がある。NPOなど法人組織によってルールやガイドラインを作り、専門ガイドを育成できると良いと思う。
●将来の子供達が自然や環境を勉強しながら守るという活動もNPOで行ってもらいたい。

会員 丸山隆
 
 

U 飯能都市計画の公聴会で公述

<2005年8月23日>

今回の都市計画の公聴会は、5年毎の定期開催を待たずに実施されました。というのは、今年1月に西武鉄道より武蔵丘分譲地計画の中止と、その区域を市街化区域から市街化調整区域に戻したいとの申し入れが飯能市にあった事に対する迅速な対応と言えます。飯能市都市計画の変更内容は、「天覧山・多峯主山の自然を守る会」として訴え続けて来た事そのものでしたから、諸手を上げて賛成でした。異論等意見がなければ公聴会は開催せずに手続きを進行させるとの事でしたが、法律に則ったせっかくの意見提出の場なので、保全を一歩でも前に進めるものとして、次のような意見(概略)を公述人として述べさせて頂きました。

「武蔵丘地域73haのうち、西武線鉄道より西側の地域(通称、西地区)は、天覧山・多峯主山と一体となった、歴史・文化そして豊かな自然環境を持つ飯能市のシンボル地として、また市街地と接する貴重な里山景観として重要な位置づけにあります。従って、この地域一帯の保全を確実にしてゆくために今後、土地所有者と協議を進めて頂き、特別緑地保全地区指定のようなより保全が図れる事の出来る地域指定を要望します。

尚、持続可能な緑地の保全方法としましては、特別緑地保全地区以外にも、市民緑地の指定や県立自然公園特別地区等々、他にも様々な法律がありますので、市民、行政、土地所有者の協議を行いながら、最善の方法がとられてゆく事を望みます。」

この日公述人は私一人でしたが、正式な意見として公に記録されました。

(文責 浅野正敏)
 
 
 

V ふる里散歩『俳句でハイク』part2 7月10日
 

今回も、茫洋とした人柄が好評の自由の森学園講師山口雄二先生に同行をお願いしました。用意した5つのお題に沿って、難しいことは言わずに、とにかく表現してみようという気楽な句会です。参加者からは、「数え切れないくらいに来ている場所が、違って見えてきた」「的確に、端的に、感じたことを表現する言葉を探す行為から、思いがけない自分を発見する」「見知った山が新鮮に感じられる」「同じ場所にいても、詠まれた句から自分との捉え方の違いを知ることができ、面白い」などなど、日頃使うことの無い感覚を呼び覚まされた体験が多く語られました。

講評会で票の入った中から、それぞれ自分で選んでいただいた1句です。

お題 つゆ

夏近し 麦わら越しの 光かな(光源)

雨あがり 湿気を切り裂き クロアゲハ(うどん原人)

つゆ晴れ間 読経始まる 能仁寺(快歩)
 

お題 はな   

トラノオに 似せてリョウブの 花垂るる(葉風)

白い小犬 あじさいの道 はしゃぎ回る(隅世)
 

お題 いし   

それぞれが 小さき石に 腰降ろす(野行き)

ただ静か 経にたわむる 中空の石(もの忘れ)
 

お題 たからもの 

日常も ハイクで視ると 別世界(京歌)

あれも愛 生きているから これも愛(散歩)
 

お題 みね   

振り向けば 雲間にかすむ 峯の並み(里彦)

あれが富士 嶺差す先に 雨ツバメ(敏月)
 

会員 林 伸子
 
 

W 東やつホトケドジョウの里だより

 諏訪沢上流のほとけどじょうの里で湿地保全作業を始めて、六年目の秋を迎えました。
 ここで昨年から続けてきた間伐材を利用した丸太小屋作りの、最後の作業である土壁作りを終えることができました。休耕田の土と稲ワラを混ぜて寝かせたものを素手で丸太の隙間にペタペタ詰め込んでゆく、誰にでも出来る楽しい作業でした。かっての質素な里山の民家は、丸太や土やワラなど、全て身近な素材で作られ、専門家と共に素人も一緒に自給の家作りが行われていた、そんな事が偲ばれる体験でした。
 今年は雨が多く、沢水は豊かに流れつづけ、ホトケドジョウ、カワニナ、ヤゴなどが水中で遊び、ヤンマ、シオカラ、赤トンボなど湿地の常連が、気持ち良さそうに、風の中、湿地植物の上を飛び交い私達の目を楽しませてくれました。時には向かいの雑木林の中をイノシシのウリ坊が走りぬけたり、上空でオオタカとカラスが競い合う姿も見ることができました。
 そんな中、昨年谷津田の稲がイノシシに食べ荒らされてしまい、今年は水田を休むことにしたのですが、その休耕田に昨年残っていた落穂から発芽し自然に育った稲穂が数本、実をつけたのです。その生命力の強さには驚かされました。

会員 早瀬成憲