やませみ38号 2004年1月1日発行
 
もくじ
1.年頭の挨拶
2.守る会の「県民休養地構想プランニング」
3.木馬がコンクールで「審査員奨励賞」を受賞
4.リレーエッセイ
5.2003年年表
6.編集室から 

1.年頭の挨拶

「昔、天覧山と多峯主山の裏のほうを崩して団地を造ろうなんて話があったんだって」
「あっさらしー、とんでもねぇー話だね」
「おらほうの大事な宝をなくしちまうところだったよ」
なんて事を五〇年後の飯能人が会話するシーンを想像しました。
  一九九五年、天覧山と多峯主山の一帯を団地にするという事業計画が出されて以来、開発の変更を訴え続けて早くも九年目を迎えようとしています。二〇世紀後半の凄まじい開発の波は、多くの緑を消滅させました。そうした開発の波が押し寄せる中、当会の執拗な保全の訴えかけで、この地における開発の着手を遅らせる事が出来ました。この間バブルがはじけ、自然を壊して団地を造っても売れない時代になりました。現に「飯能大河原分譲地」は、多くの山を崩したまま放置され、ススキの原と化しています。
  本来、事業者も含め、市民・行政が真剣に議論し、望ましい飯能市のあり方を決めてゆくべきなのに、この運動の間に保全を訴える市民運動と、開発をすすめようとする市側とに対立が生まれてしまいました。そうした状況の中で、理想的な会議の場が昨年十一月二四日「はんのう市民環境会議」として発足しました。沢辺市長の公約でもあった市民・事業者・行政が共に環境を考える場が出来たのです。それは昨年策定された「飯能市環境基本計画」を実現してゆくための具体的な会議であり、実行してゆく場です。まだまだ暫定的な体制ではありますが、それ故に会議参加者の主体でつくり上げてゆくことが可能なのです。
  昨年は木馬づくりの協力を通して、商店街や林業関係の人たちと共働の輪が大きく広がりました。低迷する商業、林業の抱える問題と、緑と清流を保全してゆく事はどこかで繋がると考えています。多様な考えを持つ多くの市民が集まる「はんのう市民環境会議」は、その回答を得られる場になると期待しています。
  そうした場において、当会の目的である天覧山・多峯主山一帯の自然環境保全を実現するためには、ワクワクするような説得力のある構想案を作る必要があります。多大な時間と労力を使ってまとめられた「自然環境調査報告書」を礎に、目に見える形で保全並びに活用できる計画案を示す事から、次なる歩みが始まると考えています。     天覧山・多峯主山の自然を守る会 代表 浅野正敏

 


2.守る会の「県民休養地構想プランニング」

  天覧山・多峯主山周辺地域は、西武鉄道による団地開発計画区域を内包すると共に、埼玉県による飯能県民休養地構想の該当地域でもあります。県により提示された構想案では、団地開発計画区域を除外して飯能県民休養地の立案がされており、このまま開発及び県民休養地構想が進められた場合、当地の生態系にとって多大な影響がでることが予測されます。
  そこで私たち天覧山・多峯主山の自然を守る会では企業・行政とは別の視点で、独自の自然環境調査の結果を踏まえ、当地の活用案をまとめることにしました。

 この天覧山・多峯主山周辺の地域をどう公園化していくのが最適な方法なのかについての柱として、私たちは次の点を重要だと考えます。
 まずは、野生動植物の保全ということです。この地の最大の特色は、谷地という複雑で水の豊かな多様な環境と谷津田や雑木林という人が創出した環境との相互作用によって、たくさんの野生動植物が生息していることです。
  とりわけ、天覧入りはホタル、トウキ ョウサンショウオ、イモリなど多数の希少な野生動植物が生息している地域であるので、この地域を重点的に保護 保全していく必要があります。現在この天覧入りの谷津田の跡は、ヨシなどの大型抽水植物に覆われており、環境がどんどん単一のものに収斂されていき生物の多様性は減少していくことでしょう。また、この天覧入り湿地上流部は、市街化区域に指定されており、この場所が開発されればこの環境に依存している希少野生植物に多大な影響がでることも明らかです。従って、この天覧入りについては、湿地復元地域とするとともに、木道などを設けて、人の移動経路を確保するとともに、環境に対する負荷を低減する事が望まれ
ます。
 次に、里山の復元です。里山の生物多様性は、放置し遷移が進行すると低下し、農用林としての管理によって回復し、または維持されることが、最近、明らかになってきました。従前に行われていた谷津田や広葉樹の伐採など里山の利用・維持・管理というサイクルを再開すれば、生物の多様性を維持増進することが期待できます。また、失われていきつつある里山の文化を次世代へ承継するという意義もあります。当地では、最も色濃く谷津田としての面影が残されており、作業小屋跡とか、茶畑のある本郷入りで里山としての機能を再興してみたら良いのではないかという意見が多数ありました。
 最後に、飯能市民にとっての貴重な自然とのふれあいの場として、重要であると考えます。里山、数あれど、人口8万人都市の中心部から、歩いて20分ほどに位置するという里山は、他には少なかろうと思います。また首都圏から訪れるハイカーの多くは、飯能駅や東飯能駅からここまで歩いてきます。市にとっても商工関係者にとっても、多くのハイカーが飯能の中心部を通ってやってくるというのは、魅力な観光資源と言えるでしょう。また、里山としてこの山を利用するための、農道や林道がたくさん残っています。
  こうした道を整備すれば、自然環境への負荷は低減できますし、ハイキング用のルートとしても、谷地地形の様々な変化を楽しむことが期待できます。
 今後は、より多くの会員の方々と話し合いを通じて、天覧山・多峯主山周辺の地域をどのように保全していくか考えていきたいと思っております。  守る会々員 丸山隆

 


3.木馬がコンクールで「審査員奨励賞」を受賞

 天覧山・多峯主山一帯では間伐事業が行われています。
  「木馬をつくる会」は商店街(まち)と山(自然)を結びつける新たなまちづくりを目ざし、飯能市制五〇周年事業として昨年四月に発足しました。以前より商店街や林業関係者の間でも木馬の話題が上がっており、活性化を考えるそれぞれの立場の方々が「木馬」によってさらに繋がっていきそうです。「守る会」でも間伐材を利用した山の保全策を探っていた事から「木馬をつくる会」の活動に対して積極的に協力を行っているところです。
  活動はまず、間伐材を山から街へ運び出すことから始まり、皮むき体験やミニ木馬づくりなど、こども達も巻き込んでの準備作業が進められました。夏休み期間に誰でも参加できる木馬づくりワークショップを開催し、五体の木馬が完成しました。それらは「間伐材で作った楽しい木馬のある西川材のまち」のイメージづくりが図られるよう、飯能市街地の商店街の店先などに置かせて頂いています。
このような「間伐材で木馬をつくる」という一連の活動が、林野庁主催の「平成一五年度・間伐、間伐材利用コンクール」で審査員奨励賞を受賞しました。全国から二三〇点もの応募の中、一〇点が選ばれ、みごとその一つに輝いたのです。
  こうしたきっかけにより活動の輪が広がり、「まち」のこと「山」のことを身近に感じつつ、飯能らしい自然豊かなまち、賑わいのあるまちが築いてゆければと願っています。   守る会代表 浅野正敏

 


4.リレーエッセイ

 縁があって先日、秋田県は角館から大館まで約100キロを走るローカル鉄道『秋田内陸縦貫鉄道』に乗って来た。
地元では内陸線の愛称で親しまれている。角館を出発すると、まず目に入ったのは大きく広い青空だった。
それだけ視界を遮る建物が無いと云う事だろう。その青空に照らし出されるように、黄金色に輝く田園風景が、都会から来た僕には妙に新鮮に映し出される。そしてその田園を取り囲むように、何処までも続く名も無い山々の風景がこのローカル鉄道の旅にはマッチするではないか。
 車内を見渡すと私を含めて五名程の人しか乗っていない。これでは年間3億円の赤字も当たり前か。ビールのプルタブを引いて一口ゴクリと飲みながら、見るともなしに外の風景を見ていると、里山にはアルプスにある雄大さはまったくないけれど、何処かやさしくそして疲れた心を癒す作用があるんだなぁと思ったりもする。全山紅葉するって訳でもないのだろうが、たおやかな山並みの曲線が織り成す五線譜に何時の間にか、心が軽やかに唄いだす。
 ローカル列車は長い長いトンネルを抜けた。幾つもの鉄橋を渡ると間もなく阿仁合の駅が見えてくる。冬になれば辺り一面は銀世界に変わると云う。
 また、冬に来よう。そう心に決めて、今夜の宿泊地のある阿仁合に下車した。  寄稿◎川越市 熊谷 誠二

 


5.2003年年表

 1月1日…ふるさと散歩「初日を浴びて山歩き」の巻
〜 5日…埼玉県自然学習センター(北本市)で天覧山・多峯主山自然博物館出張展示
2月2日…ふるさと散歩「木の芽、冬の芽、春支度」の巻
   6日…飯能市より(仮称)飯能市環境市民会議設立準備会委員に 「守る会」が公式に委嘱を受ける。
3月16日…ふるさと散歩「やつ田のお米で七草がゆ」の巻
4月13日…ふるさと散歩「山桜で彩られた山道を行く」の巻
  25日…ふるさと散歩「豊穣祈願!やつ田の田植え」の巻
  30日…ふるさと散歩「ほーほーほーたる来い」の巻
7月5日…ゼネラル石油労働組合より、環境保護活動支援のための助成金を受ける。
  27日…ふるさと散歩「天覧山で夕日を見よう」の巻
8月10日…ふるさと散歩「早起き、朝露、蝉時雨」の巻
  21日…飯能都市計画「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針の決定」の構想及び「区域区分の変更」の構想に関する公聴会に公述人発言を行う。
9月21日…ふるさと散歩「秋に花咲く野草を見よう」の巻
10月4日…12月7日…天覧山・多峯主山自然博物館出張展示(県立自然史博物館主催の『里山の自然』特別展にて)
  15日…埼玉県知事特別秘書に陳情「天覧山・多峯主山一帯の市街化区域の見直しと県民休養地構想の再開について」
  18日…木馬に呼ばれてフリートーキング(これは削っていい?)
  26日…ふるさと散歩「秋だ!やつ田の稲刈りだ!」の巻
  31日…埼玉県への陳情について、飯能市(建設部長)へ報告
11月6日…全国間伐材利用コンクールで「木馬をつくる会」が審査員奨励賞を受賞
8日…県立自然史博物館と秩父の里山「金ケ岳」ハイキング
9日…ふるさと散歩「秋の河原でムカゴごはん」の巻
24日…「はんのう市民環境会議」が発足、当会も団体会員登録
12月14日…ふるさと散歩「冬の楽しみリース作り」の巻

●この他に、「やませみ」34・35・36・37号発行、保全のための市民案作成検討委員会、毎月2回の定例会、毎月第4土曜日の東やつでの作業、やませみ編集会議、総会などを実施。
●「木馬をつくる会」への協力事業として、5月から間伐材搬出作業や皮むき作業。6月からは大小の木馬づくりを、ギャラリーゼフィルス等で実施。

 


6.編集室から

 何分経っただろうか、汗がスーっと顔を流れ落ちる。
 セイタカアワダチ草、アレルギーを引き起こすと言われ、最も嫌われている帰化植物のひとつであろう。この嫌われ物に薬効があると言う。「家庭でできる自然療法」(東城百合子著)に依ると、体に溜まった毒(薬毒や添加物)を体外に出す力があると言う。浴材として使う方法とお茶にして飲む方法があり、いずれも穂先から三〇センチぐらいのところから蕾(開前の花穂の蜜の中に酵素が多くあるので有効)も葉も茎も一緒に刈る。よく乾燥させて適当な長さにカットして使う。
 ボーっと半身浴、ほのかに匂う、子供の頃に枯草の中で遊んだ記憶が蘇る。発汗作用があるのだろういつもより汗をかいている。
 続けてみよう。さて効果のほどは…。     M Y