やませみ36号

目次
1.東やつ・ほとけどじょうの里だより・・・早瀬成憲
2.東やつ田の田植え報告・・・江口良二
3.田植え感想文(寄稿)・・・手島あずさ
4.天覧山・多峯主山の間伐材を生かす ・・・浅野正敏
5.天覧山の間伐材を運んで(寄稿)・・・甲斐美空
6.リレーエッセイ「サイクルショップを通して」・・・三上和志
7.編集後記・・・秋郷伸一
 
 

1.『谷津田』の今昔
天覧山・多峯主山を水源とした四本の沢で、現在稲作が行われているのは、この東やつのある諏訪沢だけになってしまいました。
 江戸末期のこの周辺の古地図を見ると、天覧入りでは、多峯主山頂の真下にまで谷津田が作られています。本郷入りも御嶽入りも同じく、水源の山裾にまで谷津田が延びていたのがわかります。
 里山の【谷津】や【入り】と呼ばれる沢や湿地で日の当たりの良い所は、ことごとく丁寧に辛抱強く谷津田が作られていたのでしょう。しかしながら、稲作には不向きな低い水温、日照時間が短いこと、足を取られる深い泥田……谷津田は平地の田んぼに比べると、収量が少ない割に骨のいる、つらい農作業だったことでしょう。
 東やつの周りも「今は林となっているが、以前は畑が拡がっていた。」と土地の人は話してくれました。きっとそれらの畑では、桑や芋や麦、それと自給用の野菜が作られていたのでしょう。

                 会員 早瀬成憲

 
 


2.東やつ田の田植え報告
 今年で三年目になった米作りは、五月二十六日まずまずの天気の中、大人十一人、子供四人をまじえての楽しい田植えとなりました。苗は一ケ所に五本づつ。しかし八本になったり終わりの頃には三本になったりでした。やつ田の田圃はわき水がいつもしみでていて沼地のようなのでずぶずぶと足をとられ移動するのがたいへんです。田圃もいろいろなところがあったようで中には腰の上まで泥にまみれ田植えをする姿をテレビで見た事があります。
やつ田の田圃ももう少し浅いと、もっと皆が田の中に入りやすいかなと思いました。
 去年は、台風の大雨と猪が土をほじくりかえしたりで、畦が壊れたので、田植え前に間伐材を使って修理をしま   した。猪はなんとも言えませんが台風にはきっと大丈夫でしょう。
 これからも 水の見回りや、草とりなどが稲刈りの時までつづきます。どうぞ皆さんもどんどん参加しませんか!楽しいですよ。  

会員 江口良二

 
 
 

3.田植え感想文(寄稿)
 守る会の人たちと田うえをしました。田んぼにはいったとたん、ころんでしまいました。はだしでやりました。足がはまったりころんだりしました。田うえはちょっとむずかしかったです。なえをまっすぐにうえられなかったりなんか多すぎたり、足がうまくまえにすすまなかったりしました。だけどたのしかったです。
  おたまじゃくしもいて、ふみそうになりました。ちいさなやごもとんぼもいっぱいいました。おにぎりをたべてると、おとうとのぼうしにとんぼがとまっていました。あとおじさんのシャツにもとまっていました。おもしろかったです。いまでも土と言うと足がもぞもぞとします。わたしはなえから一つぶのおこめができると思ったけど、なん百つぶもできるから、ふしぎだなぁーとおもいました。

   美杉台小学校二年   手島あずさ

 
 4. 天覧山・多峯主山の間伐材を生かす
 昨年秋から今年始めまで埼玉県による緊急雇用対策として、天覧山・多峯主山一帯で景観間伐事業が行われました。(本来、間伐は良好な木材生産の一環として行う間引き作業ですが、今回はハイキングコースを中心とした景観に配慮した間伐でした。)そこで伐採された木材が山中に野積みされ、腐るまで放置されています。その主な理由は間伐材搬出の費用が多大で、木材として販売するまでの費用に見合わないためです。昭和三〇年代ぐらいまでは、盛んに建築現場の足場材とか電柱材などに利用されていましたが、産業の近代化に伴いそうした需要は殆どなくなってしまいました。近年の日本の林業は、高齢化や安い外国産材の需要におされ、経営がなりたたなくなり、林業地の手入れ不足によって木材資源としてのダメージと水源涵養等の環境機能の喪失といった状況が起っています。約七〇%が山林という飯能市では、団地開発等によって丘陵地の緑を失うという危機に加え、そうした山の問題をもろに抱えています。
 一方市街地では、大形店鋪の進出やモータリィゼイション化によって、車での買い物に便利な消費形態へと変化をして来ています。その結果、既存商店街では空地・空店鋪が目立ち、閑散とした状況が日毎に増しています。
 こうしたさまざまなマイナス要素をプラスに考え、山を守り街を活性化させようとする新たな活動が始まりました。まちづくりに関心のある市民等によって天覧山の間伐材を街に運び出し、木馬を作ろうという話が持ち上がり「木馬をつくる会」が発足しました。さらに山林所有者の西武鉄道と能仁寺さんから、天覧山周辺の間伐材を自由に活用して良いとの了解も得られました。
 これまで三回にわたって間伐材を山から街に降ろす搬出作業を実施。間伐材の皮むき作業を飯能第一小学校の広場で子ども達に見てもらう場で子ども達に見てもらうパフォーマンスも行いました。
 六月の一〇日から一五日までは、飯能大通り商店街にあるギャラリー・ゼフィルスで木馬づくりを開催し、子ども達を含む多くの人達が参加してミニチュアや、人の乗れる木馬が出来上がりました。今年の夏休みが終わるまで作り続け、出来た木馬を街の中に展示してゆく予定です。
 このように始まった取組みに「天覧山・多峯主山の自然を守る会」も積極的に協力しています。天覧山の間伐材が、楽しい木馬に生まれ変わり山と街を繋ぐ役目を担ってくれる事を期待しています。
        守る会代表  浅野正敏



 


5.天覧山の間伐材を運んで(寄稿)
 私は五月四日(日)間伐材を運びました。「木馬を作る会」のおじさん六〜七人と運びました。知らない人ばかりで、私でも運べるかと不安でいっぱいだったけれど、おじさんが「大丈夫だよ。でも無理をしないでね。」と言ってくれたし、私のたんにんの本木先生もいたので安心しました。
 能仁寺の横を通って天覧山に行きました。天覧山につくと何本もはえている木の根元に間伐材がごろごろと転がっているのが見えました。
この間伐材は能仁寺さんのものですが、そのままではくさってしまうので「木馬を作る会」のおじさんが、それではもったいないということで木をもらって木馬を作ろうとこの会を始めたと教えてくれました。木馬を作るということの第一だん階で間伐材を運ぼうという事だと教えてくれました。おじさんたちは木や草にとてもくわしくてびっくりしました。
 わたしは細い間伐材を持ちました。細いけれどすごく重くて大変でビックリしました。最初は本木先生と私で持ちました。でも私は今度は一人で持ってみました。最初持ったより重たくて大変でした。運んだ間伐材をトラックにつみました。間伐材を全部で三五〜四〇近く運びました。
 全部運び終わって少し休んでから、おじさんたちの「ひみつきち」に行きました。「ひみつきち」はおたまじゃくしがいたり水の生物がたくさんいました。鳥のきれいななき声が聞こえてきました。おじさんたちの「ひみつきち」はいい所です。「ひみつきち」でおべんとうを食べました。おじさんたちはここでごはんを作って食べたりするそうです。私は面白そうだなと思いました。お昼ご飯を食べたあとトラックから間伐材をおろしました。おじさんに「あぶないから見ててね」と言われたので私は木のそばにすわって見ていました。トラックから「ひみつきち」ま
では坂道になっていたので、すぐに木がおろせました。そのあとに本木先生と木の年輪を数えました。私は木馬を作ってみたくて参加しました。間伐材を運んで私は木はこんなに重いんだとびっくりしました。夏休みにも木馬を作る会があるというので、またそれにも参加したいです。

 飯能第一小学校四年   甲斐美空

 
 
  

 

6.リレーエッセイ「サイクルショップを通して」
 昨今、ニュースや新聞などで自転車が社会的に見直されているように思います。環境に優しい事、健康作りに役立つ事などが注目を浴びている要因でしょうか。
  歴史的にも意識的にも自転車のレベルが高いヨーロッパにおいては、実際に街の構造自体が変わってきているようです。ドイツに至っては道路のしくみを、自転車を使うことでより早く目的地に着けるようにしているとか。生活形態の違う諸外国と日本を全く同じにすると言うわけにいかないのは勿論ですが、これを機会にもう少し自転車に関しての意識レベルが上がれば良いと思います。
 気が付けばいつも自転車で出かけている「自転車好き」の私ですが、何がそんなに自分にとって魅力的なのでしょうか。これからの季節「夏の自転車」などなんとも苦しそうなイメージが湧いてくるのも確かです。でも、是非試してみてください。自分の力だけで時には風を切り、時には四季の移ろいを感じながらのんびりと走ったりする事を。エアコンのきいた室内で一日を過ごすのも心地よいかもしれませんが、汗を流して風を感じることは本当に気持ちが良いのです。幸いにも都内に比べ自然環境に恵まれたこの地域には、たくさんの山・森・木があります。周辺を走り終えた後に木陰で過ごすひと時は、機械的に作り出すことの出来ないとても快適な空間を提供してくれます。
 また、交通渋滞をしている市街の移動には、車より自転車の方が速い事が多いのも事実です。同じ「移動する」という行為でも環境に優しく身体的にも向上する自転車に乗る事が精神的にも心地良いのです。
 自転車に乗り始めて一五年が経ちます。幸いにも現在は大好きな自転車を生業として生活しています。自転車の楽しいこと、辛いこと、社会的ルールについてなど、今まで培ってきた事がたくさんあります。これからはクラブ活動を通じて、自転車乗りの先輩として皆さんに広めていけたらと思っています。         

      会員 三上和志

 
 7.編集後記
 今号の「自然と共に生きる」の編集に当たって、MTB自転車レースをされている三上氏に、忙しい仕事の合間を縫っての原稿依頼を快諾していただきお礼を申し上げたい。彼は自転車ショップを経営しながら定期的に自転車での観察会を通し、自然の大切さを普及している方である。
 私もこの環境に優しい自転車の面白さを広めている一人であるが、一方、周りの環境から逆に様々な負荷を受けているという現実がある。ディーゼル排ガスを目いっぱい吸わされているのはもちろんのこと、雨が降れば酸性雨、晴れれば有害紫外線、その他にも道路条件が悪く自動車事故も絶えない。皮肉な話である。
 燃料電池車が俄然注目を集めているが、当分の間自転車が環境に最も優しい乗り物であることに変わりはない。風を切り、肌で空気を感じる自転車。今日も私は乗り続けている。     
     会員 秋郷伸一