やませみ33号

1.ホタルの観察会を終えて
2.第7回奥むさし環境講座
3.二日間だけの「天覧山・多峯主山自然博物館」
4.自然博物館子供展示に参加して
5.私にとっての多峯主山
6.「天覧山・多峯主山自然博物館」
 
 
 
 
 
 

1.ホタルの観察会を終えて
 六月二九日と七月六日、天覧入りにてホタルの観察会が行われました。
  1回目の観察会では、約五〇人参加されましたが残念ながら雨が降ってしまいました。「一頭でも見られればいいなあ」と話していたのですが、一頭どころか四〇頭近くものゲンジボタルが確認され驚きました。二回目の七月六日には約二〇〇人の方が参加され、幸運なことにゲンジボタルとへイケボタルの両方観察でき、最初のうちは数をかぞえていましたが、途中からかぞえていられなくなってしまいました。双方でそれぞれ一六〇?二〇〇頭はいたのではないかと思われます。
 参加者の年齢層もまちまちで多くは地元の方でしたが埼玉の他市町や東京からの参加者もいらっしゃいました。ホタルを観るのは初めてという方も多く、皆さん喜んでおられた様子。
 しかし、予想以上の参加人数、そして参加者の素直な反応に私たち自身も喜びましたが、後になって考えてみるとそれだけの人間が一度に入り込むというのはとても大変な事です。谷戸の畔や湿地は踏み固められ、これから羽化しようとする虫などに影響が出ないとも限りません。これでは観察会等を通して身近な自然を守っていこう、特定の生物に限らずあらゆる生物を含む環境について考えていこうとする私たちの主旨に反してしまいます。それに数十、数百という人数に対してリーダーはわずかに数名。夜ということもあってとても目が行き届きません。何事もなく終える事ができ幸いでした。今後はこういった観察会を催す場合、ある程度参加人数を限定していく必要がありそうです。
 尚、日本固有種であり、世界的に見ても稀な生態を有するゲンジボタルを日本の「国虫」にしてみてはどうでしょう。

   植本 裕(うえもと ゆたか)

 

2.第7回奥むさし環境講座
 都市近郊や集落周辺の身近な自然環境の一つである里山は、古くから薪や炭の生産等、人の生活の中でいろいろな形で利用されてきました。最近は自然や開発に対する見方も変わってきて、人と自然とのふれあいの場として、あるいは多様な生態系を育むすぐれた地域として、適正な保全・利用を進めることが大切であるという意見が強くなっています。しかし、二次林、雑木林を中心とした里山は、手を付けずにそのまま放置すれば自然の生物の移り変わりによって植生等が変化し、多様な生態系が失われるおそれもあります。人手をかけた里山であったからこそ様々な花が咲き、土の中の微生物によって枯葉が腐り、そこから食物連鎖による多様な生態系が形成されてきたといえます。こうした、里山と現代の都市近郊に生きる私たちとの積極的な関わり方をテーマに、神奈川県森林研究所専門研究員で、雑木林の再生・保存活動にかかわっている中川重年(なかがわしげとし)氏に講演していただきます。中川氏はまた「玉川アルプホルンクラブ」を結成して、間伐材利用のアルプホルンを製作・演奏もしていらっしゃいます。
 
 
 

3.二日間だけの「天覧山・多峯主山自然博物館」
 守る会では約一年半にわたり、天覧山・多峯主山周辺の自然環境の実態を現地調査し、それを一〇〇ページを超える報告書としてまとめました。これを元に、もっとビジュアルに展示する場を設けたいと、五月末の開催をメドに話し合いが重ねられてゆきました。企画案が出る度、出来るかな? と不安を抱きつつ、報告書の内容に留まらないものへ広がってゆきました。更に参加型の企画も盛込まれる事となったのです。
 三ヵ月の準備期間にもかかわらず、一週間は徹夜に近い作業が続きました。
 開催期間中には、沢辺飯能市長はじめ教育長、多くの市議の方々も姿を見せ、地域の自然に関心を寄せていました。また、バッチづくり等にはたくさんの子ども達が参加してくれたので、用意した材料が足りなくなるなどうれしい悲鳴をあげる状態でした。

 今回の展示会では、より広範な人々に天覧山・多峯主山のすばらしさを知って頂くことが出来たと思います。たった二日間でしたが一〇〇〇人近いご来場があり、スタッフ一同一所懸命やった甲斐があったと大いに喜びました。
 今回の資料・作品は、展示する機会があればまた利用しようということになり、さっそく出張展示が決まりました。また市内の小中学校の総合学習の場での、自然教育学習にも一役買っています。ただこうした活動は、同時にボランティアの負担が大きすぎて今後に課題を残しています。
 これまで身近な自然は、経済優先の名のもとにゴルフ場や団地に開発されて来ました。しかし世の中の動きも、闇雲に開発するばかりがまちづくりではないという方向に向かっています。この森の正確なデータをもとに、よりよい保全のための新たな土地利用の提案ができればと考えています。

貴重な自然がいっぱい!
里山の自然を再確認出来る一冊です。
「天覧山・多峯主山自然環境調査報告書」
   この報告書には、調査を始めるまでの経過や、動植物各分野での調査成果が詳しく述べられています。もとより自然に関する情報は、地域の自然を保全していく立場にある市民一人一人が共有してこそ本当の価値が生まれます。そこで、この調査の成果を広く市民の皆様に知っていただき、天覧山・多峯主山の自然を理解し、保全していくための資料としてご活用していただこうと、販売もしています。
  また、飯能市内はもとより、隣接する入間市、狭山市、日高市の各小中学校や図書館、博物館等にも地域学習や環境学習の基礎資料として、寄贈させていただきました。
どうぞ御利用下さい。
 
 
 

4.自然博物館子供展示に参加して
  博物館に来てくれた子供たちが、展示を楽しんでくれたらとの思いで作成しましたが、メイン展示との関係や材料の問題等いろいろな課題にぶつかり、思ったように行かない部分もありました。展示パネルは、持ち運びや展示のしやすさとコスト面から、段ボールに経木を貼った物を使用しました。経木は飯能市内で作られている物で、埼玉では赤松が使われています。展示内容は、ただ見るだけでなくさわったり、匂いをかいだりと五感に訴えるものであることを心がけました。
  当日はこちらが意図したように、子供だけでなく大人も関心を持って、見たりさわったりしてもらえたので良かったと思います。この自然博物館の展示をきっかけに野外に出かけて自然にふれあい、今まで以上にもっと自然に関心を持ってもらえたらとてもうれしいです。         

原田恵子(はらだ けいこ/自然観察指導員)    
       
 

5.私にとっての多峯主山
  夏の終わり、多峯主山を訪れました。あたりには蝉の声しか聞こえないのが、かえって静けさを引き立てます。私は音楽活動として、高山植物をテーマにピアノ曲を作曲して、CDや楽譜を出版してきました。今度北アルプスで自作曲のコンサートのために登山をするので、その事前の足慣らしとして多峯主山を歩きました。これまでにも度々ここを訪れていました。私にとって高山が「さあ出かけるぞ」というところなら、多峯主山のような里山は安心して帰ってくるようなところです。高山のような厳しい自然とはひと味違う魅力の里山には豊かな生命の営みを感じます。麓の小川の、かすかに揺らめく水の音に耳を傾けてみますと、小さな沢ガニやドジョウ、落ち葉までが大きな自然界の営みのサイクルを感じさせてくれます。空中では時の移ろいと共に刻々と変わるトンボやチョウの姿、虫の声など生命の集まりが大きな自然界の宇宙の広がりを感じさせてくれます。音楽に例えると、ピアニッシモ(弱音)の世界の多様な音色と広がりですが、このような繊細さと大きなスケールを感じることは、私の音楽で描きたい世界と共通です。多峯主山の自然は日々のストレスで疲れていた身体を元気にしてくれ、人間本来の心に戻してくれます。このような貴重な自然の風景を、いつまでも変わることなく、未来への財産として残してほしいと思います。         

鹿野裕美子(しかのゆみこ/作曲家・ピアニスト)

 

6.「天覧山・多峯主山自然博物館」
県内出張展示第一弾
県環境科学国際センターでの開催
盛況のうち無事終了!
  去る八月二七日から九月一日まで、騎西町にある環境科学国際センターにおいて、「天覧山・多峯主山自然博物館」が開催されました。今回の開催は、同センターの主催、守る会が協力という形で実現しました。これは、「来場者の皆様に、より自然を身近に感じてもらえるような企画展示」として、私達が取り組んだ「市民による自然環境調査とその成果の展示会」が第一回目の企画として選ばれたものです。
 六日間の来場者数は九八七人。飯能市から遠く北東部にある騎西町での開催とあり、訪れる人たちは「天覧山てどこ?え?埼玉にあるんだ!」と驚きの声を上げる人が多く、飯能市の観光パンフレットを持ち帰るなど、飯能市の観光案内としても一役買ったようでした。
 守る会では、今後も県内各地での出張展示を企画しています。天覧山・多峯主山の自然が、飯能市民のみならず埼玉県民にとっても大切なものであることが伝えられていくことと思います。

     遠藤夏緒(えんどう なつお)