やませみ28号(2001.3.15)

1.飯能市の街づくりー12万人構想見直しを
2.第5回奥むさし環境講座
3.ふるさと散歩感想
4.タンポポがささやくころ
5.公開質問状
6.編集室から
 
 

1.飯能市の街づくりー12万人構想見直しを

  この程、飯能市から「第3次飯能市総合振興計画後期基本計画」の素案が発表されました。この素案は、今3月の定例市議会に諮られた後正式な形になるものです。
  第3次飯能市総合振興計画(以後、第3総振と呼ぶ)とは、'96年から'05年までの10年間における飯能市のまちづくりの基本方向を示し、5年ごとの行政計画(基本計画)を起こし、3年単位で事業を明らかにしてゆくというものです。
  今年がちょうど前期5年間の節目に当たり、後期基本計画のための見直し策定がなされました。
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  第3総振後期基本計画の素案を見ますと、何と言っても大きな修正点は将来人口の想定です。'05年までに12万人としていた第3総振の基本構想は、住宅団地開発による計画的な人口増加を見込んでいました。
  この将来想定人口について後期基本計画素案では、「人口増加は一層鈍化し、増加の大きな要因となる開発事業の計画も、現時点では流動的になっている。」とした上で、「近年の人口動向を踏まえ、平成17年(2005年)の人口を8万5千から9万人と推計し、これに基づいた計画とする。」と記しています。住宅都市整備公団の新たな宅地開発からの撤退等を踏まえた、的確な修正案であると評価できます。
  しかし、この想定人口修正についての埼玉新聞('01年1月10日付)の記事によりますと、市は「12万人構想はあくまでも目標で、これをあきらめるわけではない」とし、基本構想の見直しはしない方針を打ち出しています。
  この事は想定人口について行政としてのまちづくりの方向性を曖昧にしています。これからの5年間、造成地は事業者任せのまま、放置され続けるのでしょうか。
  山紫水明の地として誇れる飯能のまちづくりは、丘陵地を削って造る団地開発による人口増を求めるのではなく、積極的に緑を保全し活用してゆく「緑のまちづくり」であって欲しいものです。

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  第3総振後期基本計画の素案の中に、天覧山・多峯主山周辺の保全についても記載されています。これは、'95年に当会が行った「飯能市緑と清流の保全条例」制定の直接請求が、市議会によって否決され、その後市が策定した「飯能市環境保全条例」の中の景観緑地に、天覧山・多峯主山周辺が指定されたことに基づいています。ここで注意をしていなければならないことは、多峯主山南斜面に計画されている道路と学校の予定地は、景観緑地の指定から除かれていることです。また、景観緑地に指定された土地は5年間で更新となりますので、永久に保全されている訳ではないことも知っていなければなりません。
  ともあれ、良好な緑地や山林を保全・活用してゆくためには、維持管理など市民の共同体制が必要と記されていることから、市民活動のパワーが期待されているようです。こうした市民参加の確立が第3総振の基本理念の大きな柱の一つになっていますが、私は、市民参加型を超えて市民自ら考え、自ら行動するといった市民自主型の心構えが必要な時代に来ていると思っています。

天覧山・多峯主山の自然を守る会
                  代表  浅野正敏

2.第5回奥むさし環境講座

  里山を考える
       講師・田村説三氏

  ・・・・人里に近い山々は千年を越える遠い昔から、農民が食糧生産の場として、また田畑の肥料にする芝や草の刈取り場「抹場(まぐさば)」として、さらには現金収入のための稼ぎ山としての「薪炭林」(一般に雑木林と呼んでいる)を経営してきた。このように人里に近い山々の自然は、人里離れた奥山と異なって人々の生活と深い関わりの中でつくられ、維持されてきた自然である。人々の生活の痕跡が深く残るこの自然を最近多くの人が「里山」と呼ぶようになった。・・・・・
 田村氏は埼玉県玉川村植物史を監修され、里山について大変造詣の深い方です。みんなで「里山」について考えるよい機会です。多くの方のご参加をお待ちしています。

日時・2001年3月25日(日) 午後1時30分〜4時
場所・飯能市美杉台公民館
 
 

3.ふるさと散歩感想

  今日私たち山歩き部は、「道無き森に足を踏み入れる喜び」という題のもと、天覧山・多峯主山の自然を守る会の活動に参加しました。
  私たちが天覧山・多峯主山に行くのはこれが初めてではなく、小学校の遠足の時に一度来たことがあります。その時の行程のきつかったこと、木々の緑が美しかったことなどを憶えています。そして今回は開発計画の中の道路予定地に沿って、道の無い所を行くといういつもとは少し違った山行をみんな楽しみにしていました。当日、そこは本当に道の無い深々とした森でした。やぶこぎがあって、薄明るい何とも神秘的な谷があって、沢やぬかるみもありました。おまけに、道に迷いそうになったりと、ずいぶんてごわい山歩きになりました。もちろん、登りきると座り込むくらいへとへとになりました。そんな深々とした森です。自然も豊かでした。ふかふかの落ち葉、谷には青々とした緑、きれいな水が流れる川やカエルの卵、それにウサギまで見たというからびっくりしました。どんなウサギだったのだろうか。僕も見てみたかったです。
  そんなふうに山歩きが終わりましたが、天覧山・多峯主山周辺はいいところでした。ここに道路が通ってしまうなんてもったいない事です。この自然はこれからもこんな豊かな自然でいられるのか分かりませんが、今回この活動に参加させてもらって本当に喜びでした。

   東久留米市立久留米東中学校  二年  石塚高秋

4.タンポポがささやくころ

  水温むころ、天覧山から多峰主山を
目指し下ると普段の喧騒を忘れさせて
くれる谷戸地……山あいの谷部に広
がる湿地で自然のダム……があります。谷戸地はこの機能を通して種の多様化の源となっています。変化に富んだ微地形が土壌の保水性に幅を持たせるため、尾根沿いの乾いたところにはツツジやリョウブ、ネジキが、斜面の谷よりにはクヌギやシダ植物が見られ地形や土壌水分、日射量によって植物が分布域を分けていることが伺えます。動物や植物はその自然環境によって独自の進化と暮らし方をしてきています。それは、私たちが人間だけで生存していけないように、様々な種が共に結びつきをもって協力しているのです。
  そうした彼らの生活の一部を垣間見れば、私たちと彼らの暮らす環境がどんなに悪化してきているかが見えてきます。また、一つの種が消えるとそれに伴って共生関係の種は消える運命にあります。

  季節の変化を表すのに、気象庁は生物の季節変化を通して観測を行い発表しています。基準になる植物は標本木(標準木)とか標本植物とよばれ、タンポポでは日本タンポポですが、北海道は西洋タンポポで行っています。タンポポ前線の北上は平年値で鹿児島の2月15日、東京では観測が行われずに前橋が3月29日、仙台4月10日、札幌4月29日、稚内5月10日と約2ヶ月かけて北上します。
  天覧山・多峯主山周辺の谷戸の畦に開花するタンポポをよく見ると、黄色の花弁を包む総苞(そうほう)が反り返る西洋タンポポと反り返らない在来の日本タンポポの仲間があります。在来タンポポは、肥沃で有機質に富んだ土壌を好み水田や川の畦によく生育します。また、種子は他花受粉で結実するため、蜂や蝶などの昆虫とタンポポが群落形成をしないと絶えてしまいます。花が終わり種子の飛散したタンポポは、背丈の高い夏草に覆われるころ地上部が枯れて種子と共に休眠します。それに対し、西洋タンポポは繁殖力と環境適応能力が強く、自花受粉で種子を付け、土壌を選ばないため痩せた造成地やアスファルトの割れ目の間でも生えます。さらに、秋にも花をつけ種子を飛散させます。在来の日本タンポポは交雑しやすく、時おりカントウタンポポとエゾタンポポの両方の特徴のあるタンポポが見られます。

  天覧山から名栗方面に行ったところに自由の森学園がありますが、ここには、おばけタンポポと呼ばれる花茎が巨大化したタンポポが発生しています。ちょうど、石化エニシダの幹のような形です。このタンポポは1年で消えるのではなく、毎年発生しています。セイヨウタンポポ、在来タンポポの両方に見られることから、突然変異株の発生に化学物質や遺伝子かく乱物質(環境ホルモン)が影響していると思われます。
かつて使用され今は使用されてない除草剤の2-4Dは稲のばか苗病から作られたホルモン剤でそうしたものが影響しているのではないかとも考えられます。20年位前になりますが、キュウリの肥料としてブロイラーの鶏糞を使用したところ、鶏の飼料として抗生物質やホルモン剤が使用されていたため、その影響で奇形が発生したというデータも報告されていました。
  農薬や環境ホルモン(遺伝子かく乱物質)大気汚染物質や、開発という名の環境の大変化によって痛めつけられた自然は、特定の種のみが我が世の春を謳歌する傾向にあります。そこにあるもともとの種がいつまでもありのままである自然を次世代に残せる環境を願いたいものです。

     埼玉県生態系保護協会会員        関口 浩

5.公開質問状

  天覧山・多峯主山の自然を守る会は、飯能市市議会議員選挙に先立ち、立候補予定者33名に左記の3項目について公開質問状を提出しました。

@飯能市第3次総合振興計画の中の推 計人口の見直しについて
A飯能県民休養地推進協議会設置につ いて
B飯能県民休養地予定地内の小・中学 校建設留保および横断建設道路計画 について

質問の詳細並びに立候補予定者からの回答は、当会の意見等は付け加えずやませみ号外、ホームページ等で公開します。

6.編集室から
今度の市議選について。
今までも選挙の立候補者に、会としてアンケートを採ったり、公開「討論」会を開いたりと候補者の意見を伝えようとしてきた。しかし、それによって守る会はどういう政策を支持するのか、どういう方向性を持って政治活動をして欲しいのか、候補者(議員)に何を期待しているのかというはっきりした意思表示がなされてこなかったのではないか。もちろん天覧山・多峯主山の自然を守る会という会の名称から、また今までの活動を少しでも見てくれれば当然分かることではある。それでもアンケート結果の公表を前にして、「私達はこういう立場に立って活動している」と簡潔に分かりやすい言葉で表明しておくべきではないかと思う。

何時の選挙の時にアンケートしたか。

私達は今度の市議選に際して立候補者にいくつかのアンケートをお願いしました。お配りするその回答は、以下のような立場に立って守る会が行ったものだということを理解してお読みいただければ、より多くの事柄を読みとっていただけると思います。

○(当選の後)議員に期待するのは政策であって政党ではない。私達は個人の集まりであって、特定の議員や政党との関係はなく、支持するものではない。
○期待する政策とは、天覧山・多峯主山周辺の道路(宅地)開発を中止して、同地域の自然環境を、市民・行政が協力して積極的に守ってゆく事です。
○さらに同地域を守ることだけでなく、私達市民が穏やかに生活できるように飯能市周辺の自然をよりよく残せる開発の形をイメージできることです。