2005年1月22日(土)

宅地開発、西武鉄道が断念
飯能・県立自然公園内2700戸

 
西武鉄道が計画を断念した「(仮称)武蔵丘分譲地」の予定地(右上の丘陵付近)。左上は多峯主山

 西武鉄道(本社・所沢市)が飯能市の県立奥武蔵自然公園内で計画していた「(仮称)武蔵丘分譲地」について、同社が宅地開発を断念していたことが二十一日、明らかになった。

 事業の採算性や自然保護の観点から、同社が今後の着工は困難と判断した。市は予定地を従来の市街化調整区域に戻した上で、同社と土地の処遇などを模索する方針。

 一帯では過去に絶滅危ぐ種のオオタカの営巣が確認され、宅地開発には地元の自然保護団体が約十年間にわたって反対運動を展開してきた。

 市や同社によると、武蔵丘分譲地は国道299号をまたいだ同社所有の丘陵(総面積約七十五ヘクタール)に、二千七百十四戸、人口八千八百三十一人の住宅団地として計画。一九七九年三月に市街化区域へ編入後、九五年三月には市開発指導要綱に基づく事前協議を終えた。

 しかし市の景勝地に挙げられる天覧山や多峯主(とうのす)山に隣接する計画に、地元の市民団体「天覧山・多峯主山の自然を守る会」(浅野正敏代表)らが「自然環境の破壊につながる」と猛反発。オオタカをめぐる環境アセスメントへの再調査の必要性などに加え人口減少や不況も重なって、開発は凍結状態となっていた。

 計画の中止は今月十三日、同社営業本部不動産部長らが市役所を訪れ、沢辺瀞壱市長に口頭で伝えたという。同社広報課は「予定だった土地のうち、299号沿いの土地は商業店舗への活用を図りたい。所有地の売却などの予定はない」としている。

 守る会の浅野代表(54)は「宅地開発の中止によって周辺環境を保全活用する方向で事が運べると期待している。これまで西武には真摯(しんし)に開発の中止を申し入れ、宅地以外の方法なども話をしてきた。今後は保全に向けて一緒に考えていけたら」と話している。

 
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