東谷津レポート その90

2011.1.11() 山梨 am10:00〜pm3:30 晴れ

 

『多目的石窯つくりー13 初焼き』

いよいよ最終段階に入る。1月23日は『初窯まつり』と題して人寄せしているのだから、嫌が上でも初焼きまで行かねば。焼き室のドーム全体への更なる粘土塗りだ。これは3次材とでも言おうか、市販粘土に耐火セメント、樹脂材と混ぜた今までの2次財に更に現地調達の粘土(天覧山近辺では昔陶器用の粘土を採ったとの記録があり、ここほとけどじょうの里でも粘土層が露出している)を混ぜ合わせたものだ。粘土をこね合わせているうちにカマドに火を入れ、試し焼きも始まった。昼食用のジャガイモ(何と初物がジャガイモとは)と冷凍のピザ、おおっと、薪も作らねば。

試し焼きのジャガイモとピザも何とか昼食となり、粘土塗りも終了。薪もたくさん積み上がって、本日の作業を終了した。(次回の定例作業は1月23日日曜日、午前中は仕上げ作業とまつり準備、午後は『初窯まつり』モザイクでの装飾は更に先延ばし)

 

『雑木林の虫探し-2』

 冬の虫探しは簡単ではないことを前回レポートしたが、こんなこともあるのだ。飯能市街を流れる入間川沿いに、河岸林を保護している場所がある(埼玉県みどりのトラスト4号地、対岸は市のトラスト地となっている)、この両岸の管理を任されているグループでの作業、たい肥作りの落葉履きでのこと。『こんな虫がいたよ』落葉の裏に虫がペタリとしがみついていた。『う〜ん、これはジャノメチョウの幼虫かも』『この近くに多くいるクロヒカゲの幼虫かもね』虫好きの者達は、クマデを止めて頭をひねる。写真を撮らせてもらい、そっと居心地のよさそうな所に置いた。労働奉仕へのご褒美かな。
 


ヒビの補正:焼き室のドーム全体にひびが入っている。まずはこれを補正して、更に粘土材を塗付ける。
 


粘土掘り:露出している粘土層に沿って掘り出す。
 


薪割り:これがなければ、いくら立派な石窯があっても役に立たない。一昨年萌芽更新の種に切り倒したコナラとクヌギを山から引き出して、黙々と薪づくり。
 


初物:この石窯で焼きあげた初物は、なんと、大きななジャガイモだ。1月23日の『初窯まつり』は道具もそろえてちゃんと焼きますのでご安心を。
 


本日の終了:現地調達の粘土を混ぜた3次材を、更に厚さ7センチ塗り、すっかりグラマーになった焼き室。
 


コナラの幹の輪切り:直径30センチほどの幹にたくさんの穴があいていた。これはカミキリムシの幼虫の仕業、真っ暗な芯部でどの様に方向を知るのか、互いの幼虫はぶつかることなく垂直に掘り進む。成長し終齢になった幼虫は突如水平方向に向きを変え、皮1枚残して蛹になり、羽化した成虫がその皮を噛み切って外に出るのだそうだ。
 


ミヤマセセリの幼虫:落葉の裏にいたこの幼虫は『ミヤマセセリ』(春先に飛翔する蝶、成虫はレポート-67参照)の終齢幼虫のようだ。若齢幼虫は樹上で葉を折り曲げて巣を作り脱皮を繰り返す。晩秋終齢幼虫になると巣とともに地上に落ち、春に蛹になるのだそうだ。頭部の先にあるクモ糸状のものは巣の一部かも知れない。
 


クヌギの幹に何だろう:雑木林のたくさんの木々の中の1本のクヌギの木の幹の一部が黒ずんでいるのが見えた。(写真中央部)近付いて見ると・・・。
 


ヨコズナサシガメの幼虫であった。おおよそ100匹はいるだろうか、くぼみを利用しての集団越冬だ。この集団越冬は、桜の老木のくぼみや樹洞でよくみかけるが、クヌギで見たのは初めてだ。
 

 

東谷津レポート その89

2011.1.1() 山梨 am6:15〜am8:30 晴れ

 

『新年明けましておめでとうございます』
挨拶も凍てつくような朝6時15分。てんたの会恒例の年明け行事"初日に祈る山歩き"だ。挨拶も早々に皆天覧山山頂に向かって歩き出す。このばかりは時間厳守、いつもの飯能時間に慣れきっている人たちは置いてけぼりだ。山頂に急げ、初日の出に間に合わなくなるぞ。急坂をハアハアと息を弾ませ到着すると、もう展望台から人が溢れていた。6時50分『うわ〜』一斉に歓声が上がる。2011年の初日の出。

初日の出を拝んだ後谷津に降りての早朝散歩。霜柱を踏み締めて歩く、冬の早朝の山歩きもよいものである。
 

2011年初日の出。7時18分、日の出の瞬間を拝んだ人たちは早々に引上げ、すっかり静まった山頂。コントレイル(飛行機雲)が太陽の光と重なって一直線に延びていた。
 


お散歩:初日の出を拝んだ後、谷津に降りてお散歩する。野鳥でも見えたかな。
 


ウラギンシジミ:枯葉に留まっていたウラギンシジミ、頭部や脚は枯れた葉柄のように見えるが、翅の銀色は目立っている。どうやら留る場所を間違えたようだ。

 

東谷津レポート その88

2010.12.21() 山梨 am10:00〜pm4:30 晴れ

 

『多目的石窯つくりー12 火が入ったぞ!!』
 前回の粘土材がまだ固まっていない、1週間も経つのに指で押すと変形するほどだ。予想したことだが、ドーム部にもヒビが入っている。ドーム全体を木片でパタパタと叩いてヒビを修正しながら全体を締めて行く。さて、今日の仕事は、カマド部への2次材塗りと煙突部のダンパーの取付けがだが、これらが首尾よく行けば、火入れまで行きたいとの説明だ。2次材の粘土材作りは前回経験済み、手慣れた手順でてきぱきと進むはずだ。が、そこは定年組、立ち上がっては腰を伸ばしながらの重労働だ。一方では、発電機で廻すサンダーでジージーとダンパーの微調整。『さあて、火を入れてみますかあ』ダンパーが完成し、火入れが始まった。煙突から初煙、内部の木型を燃やすのと、煙を見ながらの全体調整。やがて、もくもくと上がっていた煙も出なくなり、ダンパーも機能しているようで、中は完全燃焼だ。やがて粘土塗りも終わり、カマドの鎮火を待って作業を終了した。
(次回の定例作業は1月11日火曜日、全体への更なる粘土付け、モザイクでの装飾予定)

『雑木林の虫探し』
 雑木林の葉がすっかり枯れ落ちて冬本番になると、虫達も一斉に姿を消す。どこに行ったのか、その虫達を探しに雑木林に入ってみよう。小さな木、大きな木や枯れ木までも幹や枝先を1本1本根気よく見て歩くのだ。落葉の下にも居るかもしれない、1枚1枚そっとやさしくはぐってみよう。春や夏のように通りすがりに見つかることはまず無いのだから、腰を下ろしてじっくりと探してみよう。そして、この次期の虫観察に大切なことは、見つけた虫はそっと元の状態に戻しておこう。彼等も冬はとても寒いのだから。
 

粘土たたき:前回7センチの厚さで塗った粘土材は予想通りヒビ割れていた。木片で表面全体を叩いて修正しながらシメて行く。
 


ダンパー作り:取付け場所の穴形に合わせて微調整しながら仕上げて行くと。ピタッと決まった。
 


火入れ:ダンパーが取り付けられ、ついに火を入れる条件が整った。中に残っている木型の間から火を入れる。
 


煙がでたぞ!!:この煙の出具合を見て状態を判断し、調整する。右側ではまだ粘土材を塗付けている。
 


本日の終了:窯全体が粘土材で覆われ、内部の木型も焼け落ち、煙も出なくなって完全燃焼している。『いいねえ、うまくいってるねえ』 鎮火を待って本日の終了とした。
 


フユイチゴの果実:里山のあちらこちらで見られる。見つけると口の中がすっぱくなって、思わず手が伸びる。甘酸っぱい独特の味が広がる。冬の山歩きの楽しみのひとつだ。
 


アカボシゴマダラ(蝶)の幼虫:この蝶は、本来もっと南方にしか生息していなかったが、近年、ここ飯能でも見られ、このように定着したようだ。この幼虫、オオムラサキやゴマダラチョウの幼虫に酷似している(レポート-32参照)が、背中の3対目の突起が大きいことで見分けがつく。越冬のため枝先から地上に降りて来たもの。
 


フタスジヒラタアブの幼虫:落ち残っていた葉に居た扁平で棘ばっているこの虫は、成虫が花の蜜や花粉を食べる花アブの仲間だ。幼虫は、枝や幹にいて蝶などの幼虫が通るのを待ち伏せして補職する食肉性。この姿(左が頭部)で越冬する。
 


ミミズク:まず鳥ではないぞ昆虫だ。この体色で落葉の中にいたらまず見つからないだろう。この個体は道標の上にいたものだ。越冬はこのまま成虫なのか卵なのか幼虫なのか定かではないようだ。
 


コミミズクの幼虫:こちらも木の幹にそっくりな色をしている。おまけに頭部がへらのように反り返っていて、木のくぼみにぴったりと体を密着する。脚も隠してしまうのでまず見つからないが、この個体は、ふらふらと歩いていた。このまま幼虫で越冬する。
 

 

東谷津レポート その87

2010.12.14() 山梨 pm1:00〜pm3:30 小雨ときどき曇りのち晴れ

 

『多目的石窯つくりー11 粘土張り』
『次回は、粘土張りに入るので雨でもやります』てんたの会の定例会で意思決定。その雨になってしまった。でも粘土がいじれるとあってか気分は暗くない。『この個体粘土をばらして、セメントと樹脂材を少々加えて、水でこねて粘土材を作って、それを7センチの厚さで均等に塗って下さい』職人肌のリーダーから、煙突を取り付けるたつめに屋根に穴を開けながら声がかかる。いつものようにいきなりまかされてしまうのだ。『えっ、粘土をそのままくっつけるんじゃないんだ』さてどうしよう。考えていると『スコップでバラして足でこねてみましょう』もう一人の職人肌の声。そうだ、今日はいつものように2人のリーダーが揃っている。かくして、いつものように2種類の仕事が同時に進んで行く。

結局、粘土材を作るのは、手が一番、ゴム手袋をはめて手でこねることになった。ちょうどよい具合に練られた粘土材(2次材)を焼き室のドーム部にペタペタ、練ってはペタペタ。なれてくると乱暴者がベッッター『ウワ〜』またベッッター『やめてえ〜』半世紀も遡って泥んこ遊びの再演、それでもそこは皆大人、7センチを目安に塗付けて行く。大方塗り終わる頃、検査治具(棒切れに線を付けただけのもの)を突き刺して、ドーム全体均等に調整して行く。煙突も無事付いて作業終了だ。『このままでは何か物足りないねえ、何か貼付けようよ』で、表面にモザイク装飾が付されることになった。
(次回の定例作業は12月21日火曜日、かまど部への2次材の粘土付け、モザイクでの装飾予定)

『冬を迎えた雑木林』
 谷津を取り巻く雑木林は、かなりの木々が染め終わった葉を落とし始めた。こうなると、冷たい木枯らしが強く吹き抜けた翌日は、すっかり景色が変わり、まるで別の場所に来ているようだ。そして、今まで見えていなかったもの達が見えてくるのもこの季節なのだ、相対して、見えなくなってしまうものもある。物陰に隠れてしまうもの、姿をまるで変えて生き延びるもの、じっと動かないで冷気を堪えるもの、これらを探しながら落葉をガサガサと踏み分けて歩き廻る。そっと落葉を剥ぐってみたり、コナラやクヌギの樹皮の深いクレバスの底を覗き込んだり、枝先も見たりしながら雑木林の奥まで行ってみよう、きっと何かに出逢えるはずだ。大好きな季節到来だ。
 


2次財つくり:市販の粘土を小さくばらして、セメント、樹脂材、水を加えて混ぜ合わせる。足で踏み付けるのは最初だけ、後は手で混ぜ合わせて塗り付け易い堅さに練る。
 


焼き室粘土張り:前回擦り付けた厚さ3センチの1次財の上に、2次材を7センチの厚さで覆う。
 


煙突付け:屋根材に穴をあけ、煙突を付ける。
 


本日の終了:焼き室の粘土材(2次材)張り付けと煙突が付いた。残りはカマド部への2次材の張り付けだけとなった。
 


マムシグサの果実:花は(レポート-42参照)林床に咲き、あまり目立たないが、雌雄異株で雌株は晩秋このように枯葉色の中で見事なまでの存在感だ。
 


ウスタビガの卵:葉が変色して落ち始めると、見えてくるものがある。これはウスタビガ(大型の蛾の1種)の繭、中は羽化してもぬけの空だが、先端(下側)に卵がついているのが見える。雌は羽化して繭からでてくると同時に待ち受けていた雄と交尾し、その繭殻に産卵して飛び去る。話しには聞いていたが、見たのは初めてだ。卵で越冬する。
 


クリオオアブラムシ:山栗の葉が落ちて枝に黒い塊が見えた。クリオオアブラムシの集団だ。”皆でいれば恐くない”のだろうか。卵で越冬するとのこと、やがて産卵して死んでしまう。体長3ミリほどとアブラムシにしては大型だ。
 

 

東谷津レポート その86

2010.11.28() 山梨 pm1:00〜pm4:30 晴れ

 

『多目的石窯つくりー10 扉がついたぞ!!』

今日は、飯能市の市民清掃デーのため作業は午後からだ。作業は、カマドと焼き室の扉付けと、焼き室ドーム部への1次財耐火モルタルと耐火セメントの混合材の塗付けだ。入荷した扉は、厚さ6ミリの鉄板製で、重厚感が有り素晴らしい出来映えだ。この扉に見合った石窯に仕上げなければと、皆、更にやる気が増して来たようだ。『耐火モルタルと耐火セメントを混ぜて下さい』『これとこれですね、はい』 今日は職人肌1人と助手3人だけ、職人肌は扉に係っきりで、ドーム部の加工は助手にまかされてしまった形だ。助手達はペタペタと塗り付ける。『厚さを3センチにドーム全体に均等に塗って下さいね』と目もくれず言葉だけの指示。ペタペタ3センチ、ペタペタ3センチといい調子に進む。『耐火セメントは何処ですかあ』材料の山の中を探す。『これ何ですかあ』違った袋がでてくる。『えええ〜!!』こっ、これが"耐火セメント"、では、いままでのは"普通のセメント"、あらかた塗り終わったものを全部はがして塗り直しと相成ったのだ。剥がした1次材は、カマド側面の耐火煉瓦に塗り付けて事なきに終わった。もしセメントが足りなくならなかったらと、助手達は顔を見合わせて『ぞ、ぞぞっ〜!!』 作業が全て終わると、当たりは暗くなりはじめていた。(次回の定例作業は12月14日火曜日、石窯全体への2次材の粘土付けの予定)

『リンドウの花』
 谷津の草原はすっかり枯れ葉色に染まってしまい、花を付けているのはリンドウぐらいになった。この花は、夕方花を閉じ、翌日の昼近く花に陽が当たると開花、これを繰り返し、長い間咲き続ける。受粉してくれる虫達が極端に少なくなったこの時期に結実するための知恵なのだろう。長く咲いて気長に虫を待っているのだろうと思う。他方では、ひょんなところでひょんな虫に出逢う、季節に取り残されたもの達だ。
 


カマドの扉付け:木型の一部を取り除き、扉を設置。ぴたりと納まった。
 


扉廻りの加工:ここは机上の計算では出ない微妙な箇所。レンガを切り刻んで現物合わせで乗り切る。職人の腕の見せどころだ。

 


焼き室ドームへのモルタル塗り:耐火モルタルと耐火セメントを半々に混ぜ合わせ、水を加えて練り合わせた1次材を、厚さ3センチで全体に均等に塗り付ける。
 


焼き室扉付けとカマド側面へのモルタル塗り:カマドの扉を付け終え、焼き室の扉に取り掛かる。同時に、カマドの側面に耐火モルタルと耐火セメントを混ぜ合わせた1次材を塗る。
 


本日の終了:ハプニングはあったものの、終わってみればこの通り。扉が付いて、全体に1次材が付いた。
 


リンドウ:晩秋の陽を受けて、長い間咲き続け受粉してくれる虫を待つ。ようやくヒラタアブの仲間が寄って来て、花の中の花粉を食べようと潜り込む。受粉はうまくいったのだろうか。
 


ヒメエグリバの幼虫:ポップな色彩の蛾の仲間の幼虫、谷津田の畔の木道にいたものだ。近くには、食草のアオツズラフジは見当たらない、何故にこんな所にいるのだろうか。
 


マイマイガの幼虫:こちらも蛾の仲間の幼虫、全身に針のような剛毛が生えていてとても触る気にはなれない。道案内の柱でじっとしていた。頭部のハの字がなんともユーモラスだ。
 


ザトウムシ:長い長い脚を持つこの虫、クモと同じ仲間のチュウケイ類。長い脚を巧みに使って、コナラやクヌギの樹皮の深いクレバスをひとまたぎ、地上に降りても枯葉や枯枝をひょいひょいとわたって、食べ物の小昆虫やその死骸を探し廻る。薄暗い所が好きで、人影を見るとさっさと逃げてしまう陰気なやつだが、そっと近づくと、自慢の長い脚を手入れしていた、こんな姿を見せてくれる。

 

東谷津レポート その85

2010.11.9() 山梨 am10:00〜pm4:00 晴れ

 

『多目的石窯つくりー9』
 いよいよ今日から焼き室作りに入る。まずは、その木型の設置だ。あらかじめ造られた自前の木製のドーム型木型をカマドの上に仮設置、四方八方から眼を凝らせて位置決めする。微細な仕事が要求されるとろろは現物合わせが一番なのだ。炎と熱風の取り入れ口と、煙突部のカマドとの接続が本日のハイライト、『ああだ』『こうだ』と知恵の出しくらべで細かい作業をこなし、何とか出来上がる。後は、耐火レンガと耐火モルタルでカマドと焼き室ドームを接合して行く。煙突を仮設置、先ほどの微細な作業の成果、ぴたっとおさまった。
(次回の定例作業は11月28日日曜日、カマドの扉付けと焼き室ドームへの粘土付け予定)

草原では谷津で最後に花をつけるキチジョウソウとリンドウが咲き出した。
 

焼き室の木型設置:カマドの上に焼き室の木型を設置。
 


煙突部の加工:カマドと焼き室の煙突を接続する。ここにはこの窯の熱量をコントロールするダンパーがつく部分、慎重に進める。本日一番の見せ所、こんな真剣な顔見たことないよ。
 


レンガの切断:微細な寸法取りが要求される所は機械を使う。初めて登場した文明の利器。職人達は便利さに気付いたようだ。『いいねえ、これ』思いどおりに切断されたレンガをもって苦笑い。
 


焼き室とカマドの接合:耐火レンガと耐火モルタルで接合して行く。
 


煙突がついた:『煙突をつけてみるか』の声で即実行。午前中の慎重に加工した部位に、アルミ製の煙突を置いてみる。角度を微調整するとぴたりと収まった。
 


本日の終了:焼き室がのり、煙突がついて石窯の全貌が見えてきた。
 


キチジョウソウ:吉祥草と書く。吉事があると開花するという伝説からこの名がついたとのこと。谷津の草原ではリンドウとともに一番遅く咲きだす。
 


アカスジチュウレンジ(蜂の仲間)の幼虫:複数で群をつくり、皆同じポーズで一緒に食事する。近付くと、腹後部をサッ、サッと左、右、左と一泊づつおいて皆一緒に同じ動きで威嚇する。まるで社交ダンスを踊っているようだ。ハンノキの葉を食べていたが、図鑑によるとバラ属の葉を食草にするという、新事実発見かな?
 


卵を守るジョロウグモ:コナラの幹にジョロウグモの卵塊(白いマユ状の塊)があった。この卵の生みの親なのか、卵塊の上に体をはって守っているようだ。この親らしき成虫はもう一週間もここにいる。卵を守るために戦ったのだろうか、右前脚を失っている。生み捨てられた卵塊はたびたび見掛けるが、守っている(?)のを見たのは初めてだ。

 

東谷津レポート その84

2010.10.24() 山梨 am10:00〜pm4:00 曇り一時晴

 

『多目的石窯つくりー8』
さて本日の石窯作りの作業は、レンガ積みの延長戦だ。朝、にわか職人たちが集まると、一人ひとりがそそくさと準備を始め、早速作業に入る。そう、皆、この2週間が待ちどうしかったのだ、実はね。いつも通り、メジ材の練り組とレンガ積み組に分かれる。自分の持ち分を心得ているようだ。こうなると阿吽の呼吸とやらで作業はどんどん進む。カマド部のレンガはあっという間に積み上がり、焼き室の底部つくりに取掛かる。ここは焼き物が置かれる部分、コテを使って慎重に耐火モルタルと耐火セメントを塗り上げて行く。水平に、滑らかに、まるで氷が張ったように仕上げられ、江戸時代のコテ使いの名人"伊豆の長七"の仕事かとも思わせる見事な出来映えだ。(だいぶ大げさになった所で、次回の定例作業は11月9日火曜日、土づくりの予定)

『巨大なイモムシ』
『ぎゃー!!』ななにごとか、草刈り組の方から悲鳴、駆け寄ってみると、ツリフネソウの葉柄の上に体長8センチほどもある巨大なイモムシだ。写真撮影の邪魔になる葉を取り除こうと、恐る恐る手を伸ばすと、ずずっとずれ動いた。思わず手を引っ込める。心臓が飛び出さんばかりにドキドキしている。大きな毛のないイモムシのたぐいは私も"ぎゃー組"なのだが、その素振りを見せず「こっ、これはベニスズメの幼虫だよ。飛びついたりしないから全然大丈夫さ」100ミリのマクロレンズのおかげでそれなりの距離をたもってホッとしながらシャッターを切った。帰り道、同じスズメガ科のホシホウジャクにも出会えた。

*レポート-82の8枚目の写真の正体判明、クサカゲロウの仲間の幼虫でした。クサカゲロウの仲間の数種類の幼虫は、写真のように、塵や食べかすなどを背中にくっ付けているのだそうです。情報提供者さん有り難う御座いました。
 

煙突部の加工:カマド部の最上部となるため、高い精度が求められる場所だ、水平器を使う。カンではちょっとうまくない部分だ。
 


炎の通過部の加工:下のカマドで炊かれた薪の熱風や炎が上がってくる部分、ここも慎重に加工する。
 


焼室の底部のレンガ張り:特殊な長い耐火レンガをカマド上部全面に敷き込む。ここは、目地材を使わずベタ置きにする。
 


焼室の底部の耐火モルタルぬり:ベタ置きした耐火レンガの上に、厚さ2センチで均等に塗付ける。
 


焼室の底部の耐火セメントぬり:耐火モルタルの上に、さらに厚さ1センチの耐火セメントをぬり、滑らかに仕上げて行く。
 


本日の終了:まるで氷のスケートリンクのように滑らかに仕上がったところで本日の作業を終了した。
 


ベニスズメ(スズメガ科)の幼虫:体長8センチほどにもなる巨大なイモムシが食草のツリフネソウの葉柄にいた。近ずくと、すっと頭(写真再下部)を引っ込めて2対の眼状紋で威嚇してきた。


ホシホウジャク:ブブブブッ、ブブブブッと低音で高速感のある羽音で飛び回り、花に近づくと、空中で静止しホバリングのままで蜜を吸う。今まさに、長い口吻をムチのように振りかざし、狙いを付けて花に差込もうとしている。吸蜜時決して花に止まらない、産卵もホバリングのままなのだそうだ。

 

東谷津レポート その83

2010.10.12() 山梨 am10:00〜pm4:00 曇り一時晴

 

『多目的石窯つくりー7』
今日からいよいよレンガ積みに入る。いつものようにまずは力仕事、材料の運び込みからだ。全員で重い耐火レンガと目地に使うモルタルを運び終わると早速作業に入る。事前につくられた精密模型のような型枠(何とこのチームは型造りまで出来ちゃうのだ)を仮設置してみる。非の打ち所がない出来映えで、ぴたりと決まる。レンガを仮設置、こちらも思惑どおりだ。「これでいいね」早速レンガ積に入る。モルタルをこね、仮設置したレンガにモルタルを塗り1つひとつ慎重に積み上げる。(次回作業は10月24日日曜日、レンガ積みの続きの予定)

『アサギマダラの訪問』
レンガ積みの途中、大きな蝶が優雅にひらひらと舞い降りて来た。あの飛び方は「アサギマダラだ!!」独特な飛び方は以前何度か見ている。南の国に帰る途中、土産話でもと窯作りを見に来たのだろうか、草原一面に咲いたミゾソバの花の蜜を吸って一休みすると、谷津の上空を輪を描いて峠の方角に飛んで行った。

『キアゲハの幼虫』
この次期、谷津を歩くとカレーの匂いに気付いたことがあるだろうか。ノダケの花が発散する匂いだ。先日、その匂いが一段と強い株に出会った。ぷーんと匂って食欲を誘ってくる「何か誘いにのっているぞ」、背の高いこの草の根本から茎、枝分かれ部、葉の裏、と上方に目を凝らして見て行くと、てっぺんの花の近くに「いた、キアゲハの幼虫だ」4齢か5齢なのだろう既に幼齢期の擬態の衣を脱ぎ捨て、黄緑色と黒の縦縞、赤い斑点と威嚇模様に変わっている。『変なのが見ているぞ』っとでも思ったのか、食事を止めた。こちらも動かない、数分の沈黙、やがてこいつは安全と思ったのか、カレーの臭いに耐えられなくなったのか、やおらもぐもぐと食べ出した。
 

型枠の設置:レンガ積みの作業性と精度を上げるために、事前に作成した木製の型枠を設置する。
 


レンガ積み:型枠の外側に耐火レンガをモルタルを目地にして積み上げて行く。繊細で緻密な技術が要求される作業だ。
 


本日の終了:慎重に進めるため時間がかかる。あと数段を残し本日は終了だ。
 


アサギマダラ:南国へ帰る途中なのだろう。ふわふわと独特な飛翔で谷津に降りて来てミゾソバの花の蜜を吸って行った。
 


キアゲハの幼虫:ノダケの頂上でカメラを意識したのかポーズを決めた。私を危険分子と思ったのかもしれない、食事を止めた。
 


キアゲハの幼虫の食事:結局、私を何も出来ない奴と判断したのだろうか(実際に私は毛のない芋虫型は大の苦手)、ノダケの花のカレーの匂いに我慢できなくなったのか、もぐもぐと食べ出した。

 

東谷津レポート その82

2010.10.2() 山梨 am10:00 晴

 

『昆虫達の冬支度』

『キーイキーイ、トン』とモズの甲高い鳴き声が響き谷津に秋の気配が漂うと、にわかにに虫達の姿が目立ってくる。季節に取り残されないように冬越しの準備を始めているのだろう。そのままで越冬するものはまだまごまごしていてもよいのだろうが、世代を変えるもの、卵で、幼虫で、蛹でと様々な姿に変身して越冬するもの達にとってはタイミングを読み違えるわけには行かない。準備には時間がかかる。『今年はまだまだ暖かいぞ』なんてのんきに構えていては自分のDNAが途切れてしまう。

寒さで体が動かなくなる前に「急げ、木枯らしはもうすぐやって来るぞ!!」なんて思わず声をかけたくなるものもいる。谷津の様々な昆虫達の季節の移り変わりだ。
 


ヒメシロモンドクガ(蛾)の幼虫:派手な体色に毛のヒゲ、シッポ、背中には歯ブラシ(毒の束毛)まで付けて、『近寄るなひどいめにあうぞ!!』とでも言っているようだ。実際、背中の束毛は毒針型になっていて、刺されるとかなりの痛さだと言われている。これは終齢幼虫、この木の葉の間で繭になるのも間近だ。
 


ホソバセダカモクメ(蛾)の幼虫:別に擬態もせず派手で目立つが、なんの防備燃せずせっせとアキノノゲシの葉を食べていた。そのはず、じきに土中に潜って蛹になっで越冬する。(下が頭部)
 


ホシヒメホウシャク(蛾):太っちょなボディーにちじれてくちゃくちゃな前翅、これで飛翔はえらく早いし、花を訪れる時はホバリングまでやっちゃう。このちじれ翅でも立派な成虫、この姿のまま笹や樹木の根際にとまったまま越冬するという。こんなのが朽ちた落葉の中にいたらまるで分からない。(斜め下からのアングルで実際はもう少し長め)
 


タマムシ(雄):この美しい虫、久し振りに出会った。とは言っても、自然生息状態ではない。怪我をして(外傷はなく、内臓が一部尻からでていた)瀕死の状態で道端に落ちていたものだ。家に持ち帰り手当をしたが、死んでしまった。もう雌には出会ったのだろうか?
 


コクワガタ(雄):そろそろ冬越しの家(朽ち木)をと、樹上から降りて来たものだろうか、人工物の上でうろうろしていた。体長3センチほどの小さなクワガタだが、近ずくと大アゴを持ち上げて威嚇のポーズ。
 


コガタコガネグモ:天・多の谷津では、ここ数年のうちにあまり見られなくなった。ナガコガネグモとジョロウグモばかりがやけに目立っている。コガネグモやチュウガタコガネグモにとって環境が変わってきたのだろうか?この地で子孫を残してくれていたらよいのだが。 
 


キタテハ(秋型):稲刈りの終わった田んぼでよく見かける。成体で越冬するが、そのための世代交替を終えたのであろうか、夢中で蜜をなめていてかなり近付けた。
 


なんだこれは?草原にしゃがみ込んでみると、こんな変な虫がいた。大きな荷物を背負って、ちょこちょことわりと早く歩く。背負った荷物は自分の脱皮柄かも知れない。体長は1センチにも充たないちいさな虫だが、障害物を器用に乗り越える。その仕草が面白くてしばし見とれてしまった。(右が頭部。同定できず、どなたか教えて下さい)
 

 

東谷津レポート その81

2010.9.26() 山梨 am10:00〜pm3:00 晴〜pm3:00 晴

 

『多目的窯つくり』『谷津田の稲刈り』『雑木林の働き者』

ここ何日かで急に癒え込んできた。晴れた日は青い空が透通っていかにも秋の空だ。谷津田では稲が実り、天覧山山頂ではタカの渡りが始まっているようで、季節は手のひらを返したように秋になってしまったようだ。

『多目的窯つくりー6』

今日の作業は窯の基礎づくりの続きで、前回のセメントの上に耐火処理を付す。今回のセメントは前回の3分の1と気楽なものだ。まず耐火セメントを5センチの厚さで打ち、その上に、耐火モルタルを3センチ付しコテで仕上げる。作業に取掛かる前に前回までの完成度をあらためて見ると『どうも水平ではないようだね』再計測してみると、誤差が見つかった。"人が多いと精度が弱く""人が少ないと体に負担"、どっちもどっちミスを修正するのが得意のチーム、体に負担のかからぬ方で楽しくいこう。(次回作業は10月11日火曜日祝日、レンガ積みに取り掛かる予定)

『谷津田の稲刈り』

ほたるの里では稲刈り、山を挟んだ2つの谷津でダブり作業だ。東谷津での窯作りの途中、隣の谷津へ山を越えて行ってみた。昨年猪にやられて一粒の米も採れなかった田んぼに今年は電柵を設けた。効果覿面、今年は稲刈りにこぎ着けたのだ。こちらも多人数、あらかた作業は終わっていた。刈取った稲束をカサガケに掛けて早々と終了、意気揚々と引き上げる。数週間後の脱穀が楽しみだ。

『雑木林の働き者』

この時期を逃すまいと雑木林でも慌ただしく動く働き者がいる。山道沿いのコナラの木の下のでは決まって無数の小枝が落ちているのが目に付く、どの小枝にも緑色のドングリが付いていて、不思議に思ったことはないだろうか? これは、ハイイロチョッキリの仕業だ。ドングリに長い口吻で穴をあけ、卵を産みつけて小枝を切り落す。 更に長い口吻をもち、同じように卵を産みつけるコナラシギゾウムシもせかせかとお仕事だ。こちらは小枝を切り落す荒技は使わないが、どちらもコナラにとってはたまったものではないだろう。この両者の仕事ぶりはなかなか見られない、なぜなら高いところでのお仕事が得意の鳶職なのだ。そんな彼等を見たくて、虫友(虫好きの友達)に相談、目線で見られる場所の情報を得て、行った、見た、撮った。
 


前回の精度誤差を調整しながらの耐火セメント打ち。再計測で高さに誤差が見つかったのだ。
 


さらに耐火モルタルを3センチの厚さでコテを使い丁寧に仕上げる。
 


猪よけの電柵に守られて見事に実った稲。
 


ついにこぎ着けた稲刈り。カサガケに稲束を掛け、赤とんぼが気持ちよさそうに止まる。間もなくモズの鳴き声が谷津に響くだろう。数十年ぶりの里山の秋の風景の復活だ。
 


ハイイロチョッキリ:ドングリにしがみついて産卵のための穴あけのようだが、お尻側からなので定かではない。
 


ハイイロチョッキリのもの思い:産卵を無事終えてホッとしたのか、あるいは交尾相手が見つからないのか、はたまた過ぎ行く秋これまでの生き様を振り返っているのか、しばしの間茫然としていた。
 


やがてハイイロチョキリは、何かを思い出したかのようにとぼとぼと歩き出した。(口吻を除いた体長7ミリほど)
 


コナラシギゾウムシ:これがコナラシギゾウムシだ。ハイイロチョッキリに比べて口吻がかなり長い、触角も大きく張り出して穴あけには邪魔のようだが、穴をあける時には口吻に折りたたむ溝があるのだそうだ。この個体はコナラの木の下のカヤの葉上にいたもので、どうやら落っこちたようだ。(口吻を除いた体長7ミリほど、写真提供:虫友より)