東谷津レポート その80 |
2010.9.14(火) 山梨 am10:00〜pm3:00 晴 |
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『多目的窯つくりー5』 先日の雨で、あの猛烈な暑さも少しづつ癒えて来たような気がする。谷津の奥からの風が何となく涼しく感じる。 いよいよ窯作りに入る。今日の作業は、窯の土台づくりだ。レベル合わせのための地ならし、杭打ち、セメント打ちと力仕事が続く。朝10時集合してみると、男二人と後方部隊の女性四人でなんとも心細い、20キロのセメント15袋の運び込みもある、やれやれどうなることやら。とっ思いきや「おはようございま〜す」なんと男四人女性四人、皆地下足袋姿の頼もしい助っ人参上、これで大丈夫、不安がふっ飛び一気にやる気が出てくるから不思議なものだ。
マンパワーでイケイケと作業は順調に進み、指揮系統がまごつくくらいだ。気が付くと、セメントが残り少ないではないか、大幅な読み違い、せっかくのマンパワーこの機会をのがしてはなるものかと急遽補充に走る。いつもの通りハプニングを身軽にかわし、作業は予定通り完了した。 地ならし:窯の設置場所を丁寧に地ならしする。 レベル測定:透明のビニールホースに水を入れた原始的な方法をあえて採用。自然の法則に従って、注意深く慎重にさえやれば精度は保証されるのだが・・・。
杭打ち:あらかじめ型枠で打ち込み場所をきめる。後は力仕事、交替ごうたいでマンパワーの見せ所。だが、ここで予期せぬ事態、カケヤを振り上げると屋根に当たってしまう。振りを小さくした技能仕事になってしまい、やっとのことで乗り切った。フウ〜。 型枠、補強鋼設置:整然と見事なまでに打ち込まれた杭を囲み、セメント流し込みの型枠が設置され、補強用の鋼鉄の網が置かれる。15センチの高さまで流し込むのだ。
セメントこね:20キロ入の簡易セメント(あらかじめ用材が混ぜ合わされていて、水を加えるだけ)2袋分を1回で混ぜ合わせる。全体をまんべんなくこねて完全に混ぜ合わせないとセメントの強度に問題が出る。ベテランの指導のもと、これを15回繰り返すことになるのだ。
セメント打ち:ネコ(一輪車)の荷台を使ってこねたセメントは、そのまま流し込む。この簡易セメントは固まるのがはやくてうかうかしていられない。交替でこねては流し込み、次第にリズムに乗ってくる。「あっ、ヤバい」そう、2段めの補強鋼を入れるのを忘れていたのだ。あわてて入れてことなきを得る。 完了:不足分の15袋を急遽調達し、今回もすったもんだの挙げ句、終わってみれば完璧な仕事ぶりである。 ヤブツルアズキとクロウリハムシ:草原は秋を気配を感じとっているのだろう。小豆の原種と言われるヤブツルアズキが咲き、クロウリハムシが可愛らしい黄色のお尻を見せて一休み、いや秋にやっておくべきことを考えているのかも知れない。(どこでも普通に見られる6ミリほどのこのハムシは成体で越冬する)
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東谷津レポート その79 |
2010.9.8(水) 山梨 pm4:00 雨 |
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待ちに待った雨。長く続いた猛烈な暑さで、谷津のため池は干上がって底を見せ、草原はカラカラに乾燥し、秋の花を咲かせる準備もそこそこに立ち枯れ寸前のものも見られる。昆虫達も流石に影を潜めた。もうすべてが限界であったのだろう。この雨は恵みの雨となり、谷津は息を吹き返すだろう。 こんな状況でも、元気に飛び回っている蝶がいる。『ツマグロヒョウモン』それもそのはず、この蝶は数年前までは南国にしか生息していなかったのだ。とろろが、近年、栽培スミレの増加と温暖化の進行が係って生息域を急激に広げているのだそうで、幼虫は市街地の民家の庭や公園のパンジーの葉を食草とし、成虫は、その廻りの花壇に咲く花の蜜を吸う。ここ飯能にも完全に定着しているのだ。出現期間も春から晩秋まで世代を変えて飛び廻る。真夏に市街地で一番見掛ける蝶と言っても過言ではないだろう。
数カ月の間、その成長の過程を断片的に垣間見ることが出来たので、繋ぎあわせてみた。
ツマグロヒョウモン幼虫:春、卵から孵化した幼虫は、昼夜を問わずスミレ科の植物の葉を食べまくり、あっという間に成長する。4〜5回の脱皮を繰り返して終齢幼虫になると、採食を止め、所かまわず歩き回って蛹になるための最適な場所を探す。鋪装された歩道などで出くわすことがある。(4月パンジーの近くをうろついていたもの) 前蛹:あちらこちら探しまわり、適当な場所を見つけると、尾端を固定してぶら下がって静止、蛹になるべく体の変化を静かに待つ。(最下部が頭) 蛹化:幼虫の最後の皮を頭部から徐じょに脱ぎ、蛹の体形が現れる。蛹の尾端(写真の上の部分)には脱いだばかりのしわくちゃな皮が見える。
蛹の中期:時間が経過するにつれ、変色して黒ずんでくる。こうなると、南部鉄製の芸術品のようだ。一部の突起は金色に輝く。
黄金色の突起:金色の突起部分を拡大してみた。一片のくもりも無く、鏡のように輝いていて黄金のようだ。どうしてこのような色が出せるのだろう、何のために、成虫にはどこにもこのような黄金色は無いのだ。
蛹の後期:横から見てみる。固定は尾端だけで不安定で風に揺れる仕掛けだ。黒ずんだ体色は、陰影に錆まで付けたようで、芸術品は増々完成の域に達する。やがて、この芸術品に亀裂が入り、成虫になった蝶は、躊躇なくこの芸術品を脱ぎ捨てる。卵、幼虫、蛹、成虫と完全変態を繰り返すのだ。(残念ながら羽化の瞬間は見逃してしまった)
ツマグロヒョウモン成虫メス:秋、谷津へ向かう途中の公園のマリーゴールドに来ていた雌。この蝶は雌の方が彩色が凝っている。(雌雄とも開張60ミリほど、2009年撮影) ツマグロヒョウモンの成虫オス:雌の近くにいた雄。この通り豹紋だけである。晩秋になると、卵、幼虫、蛹のいずれかで、ここ飯能でも越冬し、次の年に命をつなぐ。
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東谷津レポート その78 |
2010.8.22(日) 山梨 am10:00〜p3:00 晴れ |
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『多目的窯つくりー4』 東谷津での作業日。朝からじりじりと陽が照りつける。連日の猛暑、TVのニュースでは連日熱中症で病院に運ばれた人の数が報道され、数年前の他国のニュースを見ているようだ。 さて、今日は屋根の工事だ。仕事の手順を確認、全員の意志統一が出来たところで『今日は、暑いので熱中症にならないよう適当にやりましょう』と棟梁からの優しい心遣いだ。午前中に何とか屋根板がつけられ、長めの昼食と休憩をとり、午後はいよいよ屋根材のガルバニュームの波板張りだ。この波板は無塗装で銀色の素材色のため強烈な照り返しがあり、その暑さがカメラのファインダーを突き抜けてくるように伝わってくる。皆黙々と作業を進め、予定通り3時に屋根材を張り終えた。小屋作りへの情熱が熱中症を乗り越えたのである。『でもね、その情熱がいけないのだよ、暑いのにご苦労さん』帰り際に水路のホトケドジョウが言ったような気がした。 (次回は9月14日火曜日、石釜作りの整地とレンガ積みに取り掛かる予定) 屋根に取掛かる:『縦板、横板、屋根材、釘、金槌 準備ヨシ!!』 縦板取付け:「たかが小屋」と言うなかれ。水糸を張ってキチッと精度を出す。なんと図面が有り、ミリ単位の精度が要求されているのだ。 横板張り:位置を計測し、手際よく取り付けられて行く。
屋根材の仮設置:どんな具合か屋根全体に置いてみる。材の波の部分を重ねあわせるので、直線が強制されて何回もやり直す。『こっちはいいけど、そっちはどう!!』「もうちょっと右!!」『前に出過ぎだよ!!』照り返しの猛烈な暑さのせいか、言葉が少々荒くなる。 精度確認:全員で確認、ちょっとおかしい所発見。こうなると「たかが小屋」幾多のヤマを乗り切って来た職人芸、得意の現物合わせでさっと修正。 屋根材張り:すったもんだで『これで行こう!!』決まれば早い。あっという間に張り終えた。
最終点検で完了。 ドジョウ2種:水路をせき止めた農工具の洗い場で涼しげに泳いでいた。手前が普通のドジョウで奥側がホトケドジョウ。比べてみると体形の違いがよくわかる。自然の状態では見られない、トレイの中での背比べ。
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東谷津レポート その77 |
2010.8.17(火) 山梨 am10:00 晴れ |
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『真夏の草原の昆虫達』 草原に昆虫達が戻って来たぞ!! 「この夏は虫達が少ないねえ」合い言葉のように使われていた夏前半だった。なるほど、撮り貯めて未整理の写真を見ると、いつもの年ならたくさんの虫達が訪問するトラノオやチダケサシの花とともに写った写真がほとんどない。が、ここに来て草原は俄然騒がしくなった。草原から雑木林の林間にかけて、虫達が沸き出て来たかのようだ。 『蜜蜂が消えた』 前回レポート(-76)『蜜蜂が変だぞ』が当たってしまった。8月15日、蜜蜂担当の相方から「蜜蜂が消えている」との連絡が入った。樽巣を明けてみると、スムシ(ハチノススズリガ)に占領されたようで、中にはスムシの幼虫やら成虫が多数いたとのこと。蜜蜂も数匹いたのだが、これらは親が逃走した後に羽化したものたちであろうからやがていなくなるだろうとのこと。スムシは蜜蜂を直接攻撃する天敵ではないようだが、蜜蜂の巣板に取り付いて産卵する。蜜蜂はこれを嫌い逃げ出すのだそうで、正にこの状態だったとのこと、残念だ。 (前回レポート-76の訂正:ヤママユ開長70センチ ⇒ 70ミリに訂正) クマバチ:ブンブンと大げさな羽音を立て、我物顔でアキノタムラソウの花の蜜を吸っている。大型の蜂であるが刺激しなければ、以外と近付ける。
ルリモンハナバチ:8月初旬に突如現れて、花の蜜や花粉を集める。頭部から脚の先まで青く彩る(瑠璃紋)のは青い細かい毛なのだそうだ。アキノタムラソウが好きなのだろうか、この花だけでみられた。
ナガコガネグモ:ハナバチ達を観察しているすぐ脇に網を構えていた。よほど場所がよいのだろう立派な成虫になっている。網に直線状のかくれ帯を付け、触れると激しく網を揺さぶり威嚇してくる。他の場所では、まだ大げさに渦巻状のかくれ帯を張った幼体が多いのに。 アシグロツユムシの脱皮:今しがた脱皮を終えたばかりのようだ。脱皮殻の近くで、体が固まるのを待っていた。(下につり下がっているのが脱皮殻)
クダマキモドキ:草原から林間に向かうと、『どうだ分からないだろ』とでも言っているような虫がいた。クダマキモドキだ。名の通りクダマキ(クツワムシの俗名)にそっくりだ。 ナナフシ:背中に小さな翅を持っているのでトビナナフシであろう。近ずくとキッっとにらまれたような気がした。「擬態の邪魔するな!!」と怒っているようだ。
マダラアシナガバエ:青緑の金属色で全身を着飾った小さな(5ミリほど)ハエの仲間。林間の道端の低い葉の上で忙しく動き廻る。やっとの思いで撮って拡大してみると、この通り。
アオマツムシの中齢幼虫:右後脚を失い、大きな葉のくぼみでぐったりとしていた。すわっ!! ハネナシコロギスっと思わず見間違えてしまった。これがあのジージーと騒がしく鳴き、日本の秋の夜の情緒を台なしにしてしまった中国原産のアオマツムシの幼虫だ。終齢幼虫はがらりと変わって成虫に近い容姿になる。 ヒラタシデムシ:オオヒラタシデムシだと思われる。荒削りのボディーを艶消しのガンメタルブラックに塗装。頭胸部は扁平で微妙に湾曲、まるで高性能戦闘機を思わせるが、地表で暮らし、生物の死骸やゴミ溜めに集まる森の掃除やさんなのである。
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東谷津レポート その76 |
2010.8.10(日) 山梨 am10:00〜pm4:00 晴れ/雨/晴れ |
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『多目的窯つくりー3』 台風4号の影響か、蒸し暑く、雲行きが怪しい。今日の作業は、小屋の柱立てと梁の取付けだ。柱は前回の杭に丸太を鎹(かすがい)で仮止めし、番線で締め付ける工法を採用、全部の柱を取付けて数歩離れて出来映えの確認をする。「ん、何かがおかしいぞ』一人の声、皆で見る。屋根の傾斜が前後で逆であった。急遽やり直し、「全部取るな」頭を使い最小本数で済ませる。(まだ頭の柔軟性は残っていたようだ) 次は梁だ、こちらは斜めにビスを打ち込み仮止め、番線で締め付けるという新工法を現場で採用。皆の息はぴたりと一致、最後に補強板を付けると、ぴくりともしない完全な骨組みが出来上がていた。(次回は8月22日日曜日、いよいよ屋根に取り掛かる予定) 『蜜蜂が変だぞ』 数日前から、樽巣の廻りにいる蜜蜂の数が少なくなって来た。何やら、白い卵のようなものを運び出しているものもいる。今日になると巣外には一匹もいない、まるで何も無いように静かだ。"逃亡"の文字が頭をよぎる。
さいわい今日は人足はたっぷりいるし、巣の中を調べようと巣を傾けた。底板には、白い卵らしきものが一面に散乱していた。写真を拡大してみると、なんと脚が有るではないか、蜜蜂の蛹だったのだ。なぜ? 早速、師匠に状況連絡、診断を仰いだ。答えは、「この時期、女王蜂が雄を産んでしまうことがある。もう雄は不要なので働き蜂が不要な雄蜂を処分しているのだ」とのこと。また「蜂達がおとなしいのは、女王がこの時期には暑さで卵を生まなくなり、そのため、働き蜂も活動が低下しているだけで、秋が近付くと活発になる」のだそうだ。勉強、勉強。 柱立て:杭に鎹と番線で固定する。 梁の取付け:ビスでの仮止め後、番線で固定する。 斜めに補強板を付けて骨組みが完成した。 巣の底板に散乱していた卵らしきもの。 拡大してみると、なんと蛹(雄蜂)であった。この時期、雄は不要のため働き蜂に処分されたものだ。 巣の内部を下から見たもの、蜂達は活動を休止し奥の方に固まっている。
ヤママユ:思わず『ウスタビガ』と叫んでしまったが、ヤママユの雌であった。夜行性の巨大な蛾。(開長70センチほど、フラッシュ撮影のため白っぽい、実際は全体にもう少し茶が濃い)
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東谷津レポート その75 |
2010.7.24(日) 山梨 am10:30 晴れ |
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<多目的窯つくりー2> 朝からじりじりと猛烈な陽射しだ。朝とはいっても、10時過ぎ、真夏のこの時間は既に気温が30度を越えているだろう。今日の作業は、小屋の支柱を立てる基となる杭打ちと、柱と梁に使う丸太運び、その丸太の皮剥きだ。 9本の杭は前回のものとは半サイズ(前回はあまりに太く大変な思いをしたため、縦に割ったもの)にしたもので、かけやで打ち込むとグッグッっとくい込む、とはいえ、足場は悪く、馴れない作業おまけに暑さで汗がふき出てくる。2サイクルエンジン独特の甲高いエンジン音が暑さを助長するからたまらない。熱中症に注意をはらって木陰でしばしの休憩だ。 午後になると、更に気温が上がったように感ずる。丸太運びだ。山の斜面を滑り落とすのだが、足場のせいか、暑さのせいか、それとも年のせいかふらふらしてくる。膝に両手を当て、中腰ではあはあと新鮮な空気を取り込みながら何とか運び終える。 丸太の皮剥きは運が伴う。気持ちがいいほど簡単に剥けるのと、嫌気がさすほど剥きにくいものが混在しているからだが、剥き易いのは、道具で皮の一部を剥がし、手で引くとパリッと大きく剥けて瑞々しく輝く木肌が現れる。「誰かがやらなくてはね」と自分にいい聞かせながら剥きにくい方に当たっ人、「なんとか表面が剥けていればいいですよ」って慰めの声。午後3時作業を終えた。(次回は8月10日火曜日、支柱、梁の取付け予定) 昼休み、昆虫達を探してみた。 杭打ち:杭を適当な長さに切り、かけやで打ち込む。 丸太の皮剥き:剥き易いのはよいのだが・・・。
オオトリノフンダマシ(蜘蛛):このトリノフンダマシの仲間は、夜間巣を張って捕食活動し、朝方その巣を壊して昼は葉裏で鳥の糞に成りすましてお休みだ。それにしても、この派手さ、こんな糞する鳥がいるのかいな、それも葉裏に。(鳥の糞にそっくりな種もいるのだ)
エゴツルクビオトシブミ:ついに出会えた。首を長く延ばして何かを感じ取ろうとしているかのようだ。「首を折って起重機になって!!」ファインダー越しに願いながら待ったが、遭えただけで良しとしよう。
あんた誰?:まるで仮面を付けているような頭部、こんなのに遭遇すると楽しくなっちゃう、後で同定するのに苦労するが。笹の葉の上でじっとしていた体長5ミリほどの甲虫。 シロモンノメイガ:昼間行動する蛾の一種。ため池のショウブの葉の上にいた。黒字に白の斑紋で、いつ見ても「おっ!!」っとさせる。 キチョウ:フワフワと飛び回ってなかなかとまらない。追って行くと、ようやくアキノタムラソウの花にとまってくれた。
クサギカメムシ(と思われる)の孵化:イネ科の植物の穂の先きに産卵したようだ。一斉に孵化するためにごちゃごちゃに混み合っている。「イテテ、誰だ乗るのは」「しょうがないでしょ狭いんだから」「お母さん、もう少し広い場所があっでしょうに」なんて声が聞こえてきそう。(白い球体は卵の殻) |
東谷津レポート その74 |
2010.7.13(火) 山梨 am10:20 曇りときどき雨 |
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東谷津ほとけどじょうの里の多目的窯作りが始まった。初日なのに生憎の雨、整地と窯を覆う屋根づくりのためのくい打ちまで行い、作業を打ち切った。今後、年末完成を目標に、月2回の作業日を設けて進める。その作業進度の成行きを、周辺の情報とともにレポートする。 梅雨の真っ只中、昆虫達を探してみた。雨中の虫探しだが、以外に見つかるものだ。虫達は皆一応に雨に直接当たらないところを選んでじっとしている。曇天や小雨の時は風もなく観察や写真撮影にも適しているのだ。そんな虫達に登場してもらおう。 多目的窯作り:初日は生憎の雨、頑張って窯を覆う屋根の杭打ちまで終了。
ヒメカメノコハムシ:透明のドームをかぶったハムシの一種、ドームをかぶったハムシはジンガサハムシやイチモンジカメノコハムシなど数種がいて、どれも似ており判別が難しいが、これはヒメカメノコハムシであろうと思われる。カメノコハムシ類は、ドームから触角と脚先をちょこっと出して、いつ見ても愛らしい。 ヨツボシハムシ:体の割に大きく自慢の黒紋も、葉裏で雨宿りでは目立たない。 トホシオサゾウムシ:通常クヌギの木で見られるが、雌は、草原でツユクサの茎に長い口吻で穴をあけ産卵するという。この個体は雌なのだろう、草原にいたものだ。 セマダラコガネ:なんと立派な触角だこと。クズの葉上でアンテナを大きく広げ、雲行きを伺っているようだ。 オオニジュウヤホシテントウ:イチ、ニイ、サン・・・ジュウイチ、ジュウニ、う〜ん、黒紋を数えていると飛んで行きそうだ。
ウスイロトラカミキリ:椎茸のほだ木の杭に来ていた。背中に"火"の字を染め込んで「火の用心」とでも言いたげだ。トラカミキリと名の付く仲間は数多くいるが、そのほとんどがこの"火"の字を背負っているぞ。 ニイジマトラカミキリ:こちらも"火"の字を背負ったトラカミキリの仲間。この個体は翅を傷めたのか、草原でうろついていた。 カノコガ:これでも昼間活動する蛾の仲間。雨にも負けず交尾中である。"愛は雨にも動じず"の図。
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東谷津レポート その73 |
2010.7.3(火) 山梨 am10:20 曇り |
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東谷津ほとけどじょうの里のネムノキの花が咲き出した。梅雨時、重苦しい空気の曇天によく似合っている。ここでは、綿菓子のように繊細な花に触れることさえ出来る。大木が、ため池の水面近くまで枝を下ろしているのだ。 さて、今日はなんと運が良いのだろう!!先日、二兎を追って文字通り二兎とも逃してしまったその一兎、「ヒメクロオトシブミの揺籃作り」に出会うことができたのだ。それも、先日見逃してしまったちょうどその工程からという幸運だ。(レポート-71参照) 例のコナラの幼木のある林縁の斜面、一枚のコナラの葉がしよれて垂れ下がり、2つの黒点がかすかに見える。「まさか」近ずくと、その「まさか」、なんとも愛嬌のある容姿のヒメクロオトシブミだ。二匹ともじっとして動かない。数分の間、こちらも動かずじっと見ているとやおら動き出した。なんと、葉先を巻き始めたではないか、前回、中断から放棄してしまったと思い、観察を断念したのは早合点であった事が明確となった。中断、放棄ではなく、葉が更にしよれて扱い易くなるのを待っという「作業手順」だったのだ。今回こそ、他のものには目もくれずオトシブミに集中だ。
葉巻きの作業を始めると、以外に早い、少し巻いたところでストップ、巻き終えた部分に口吻で産卵用の穴をあけて産卵、またせっせと巻いて行く。さて、巻き終えたところをほつれないようにどう止めるのか、我輩の最大の感心事まで来たぞ、・・・なななんと・・・。おみごと。揺籃作りの一部始終と、この時期まで揺籃作りが続いていることをしかと見届けた。
ヒメクロオトシブミの揺籃作り手順(後半):葉のチェックを終え、合格した葉の葉脈を口吻でかじって傷付けしおれさせる。さらに柔らかくなり、巻き込み作業がし易くなるまで待っている。
葉のしおれ加減の頃合いを見極め、葉先に移動。雄は雌にマウントしているが、交尾は既に終わっているので、この行為は、他の雄に雌を奪われないためのものなのかも知れない。この後も、雄は雌が揺籃を作り終えるまで近くをうろうろしているのだ。 雌は葉の先端から巻き始める。(10時30分開始) 少し巻き、産卵のため口吻で穴をあける。
あけた穴に産卵する。 どんどんと巻き込んで行く。雄は全く手伝わない、手順を知らないので手伝えないのだろう。
前後左右、上下に移動し、よじれたるみなどを微調整しながら更に巻き込む。この動きは決まっているのだろうか、それとも巻き具合をみてアレンジしているのだろうか。アレンジしているのであればこの小さなちいさな虫が・・・驚異な世界だ。
完成まじか、巻いて来た揺籃がほつれないようにどう止めるのかが見ものだ。写真の揺籃の上の一部が浮いているが、この部分を逆に折り曲げて包んでしまった。さすが、すごいことを知っている。
完成だ。完成するとすぐに葉の上部に移動し、主脈を口吻でかじって揺籃を落としてしまった。これがオトシブミの名の由来だとのことだが、個体によっては、切り落さずぶら下げて置くものも数多くいる。(10時46分、巻き始めからの所要時間16分)
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東谷津レポート その72 |
2010.6.20(日) 山梨 am11:00 晴れ |
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ほたるの里の田植えも終わり、いよいよ梅雨の季節となった。草原の花も様変わり、草原でよく目立ち、昆虫達の食事どころとなっていたハルジオンも終わり、ヒメジョオンに変わって来た。このヒメジョオンの花は、ハルジョオンの花によく似ているのだが、食事に来る虫達は比較にならないくらいに少ないのはなぜだろうか。
この春、ハルジオンに来た虫達を集めてみた。(写真はほんの一部に過ぎない)やがて谷津の草原の主役は、チダケサシ、ツリフネソウ、ホタルブクロやツユクサに変わって行き、夏の虫達が集まってくる。
シモフリコメツキ:ヒメシモフリコメツキかもしれない。花粉や蜜を食べに来たのか、次のごちそうを選んでいるのか、幹でうろうろしていた。この虫、背中を下にして置くとピョーンと跳ねてもどる面白い習性をもつ。
コアオハナムグリ:花の中に頭を突っ込み、一心不乱に花粉や蜜を食べており、いつもお尻を見せている。次の花にうつる時がシャッターチャンスだ。飛翔も得意で、まごまごしているとさっと飛んでいってしまう。 これは上の写真、コアオハナムグリノ変異型かな?前翅の模様に変化が見られる。花に潜り込む習性や、体中に産毛状の細い毛が生えているところは同じなのだが。 クロハナムグリ:黒字に金色のモザイクが美しい。モザイクをかけて何かを隠しているのかな。(考え過ぎだよ) ジュウジナガカメムシ:嫌な臭いで嫌われ者のカメムシの仲間には、美しく着飾ったものがたくさんいる。その三役級に入れてもよいかな? マルボシハナバエ:ハルジオンにはハエの仲間もやってくる。このボリュームのある素敵なお尻を形よく保つには花粉や蜜がいっぱい必要なのだろう。
ヒメギスの幼体:体全体が鋼鉄でできているようだ。これで案外気が弱い、慎重に近付かないとピョンと跳ねて逃げてしまう。成体は肉食性が強く、草地で獲物を狩るが、幼体は葉の上や花の上でよく見かける。
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東谷津レポート その71 |
2010.5.25(火) 山梨 am11:00 晴れ |
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今日は何という日だろう!! 一度この目で見たいと思っていた生き物の生態に、同時に2つも遭遇してしまった。オトシブミのゆりかご(揺籃)作りだ。ここは必ずお仕事をするだろうと、通る度に確認していた雑木林の林縁と休耕田の間の斜面にあるコナラの幼木だ。 葉は大きく柔らかそうで、子育てにはもってこいのゆりかごになるはずである。しかも目線で観察できる。他の場所では、もういくつもゆりかごが風に揺れているのに、一向に気配無し、駄目かと諦めかけていたが、来ていたのだ。ヒメクロオトシブミが既にお仕事中だ。そっと近付きカメラを設定、観察開始。柔らかい葉は、ちょっとした風にも大きくゆれピントが定まらない、苦労して幾度かシャッターを切っていると、足下でカエルの声だ。
シュレーゲルアオガエルの鳴く姿と、抱接だ。「やった〜あ!!」水辺でお祈りのポーズをしているヤツはよく見るのだが、産卵時の雄が鳴いている姿と、雌と雄の抱接は見たことがない、もう5年も追っかけしているのにだ。それもそのはず、産卵時のシュレーゲルは、土中の穴の中で鳴き、産卵も抱接したまま土手の壁に穴を掘って行うからだ。今まで何度も、鳴き声をたよりに、物音をたてないように苦労して近ずき、足下で鳴いているのに見えないのだ。それが今目の前にいる。
絶好のチャンスを逃してしまった虚しさを引きずって、ほたるの里で一仕事、夕刻名残惜しさに舞い戻る。完成したゆりかごが風に揺れていた。ううう〜「何と言う日だ今日は!!」。
ヒメクロオトシブミ(黒色型)の揺籃つくり:葉の状態をじっくり調べ、気に入った葉の脇から片方ずつ主脈に向かってかみ切り、主脈をかじって葉をしおれさせる。主脈をかじりだすと雄が飛来し交尾する。 しおれて折れ曲がった葉先に移動、葉の裏側に廻って側脈をかじり始める。交尾をしたままだ。 さらに念入りにかじって行き、さらに柔らかくして、主脈を中心に2つ折りにする。 葉のふちを折り始める。ここで、カエルに誘われ目を離してしまった。これから先、先端を少し巻き、卵を産んでさらに巻き込んで行くはずだが、確認できず。 時間を置き、再度来てみると揺籃は完成していた。
盛んに鳴くシュレーゲルアオガエルの雄。雌がすぐ近くに来たので思わず巣穴から飛び出したようだ。アゴの下の鳴のうをふくらませて鳴くのだが、膨らんだ状態は上手く撮れなかった。 さらに雌が近ずくと、一気に飛びついた。雄は雌に比べるとかなり小さい。 これはシュレーゲルアオガエルの別の個体、背中からお尻にかけて黄色の斑点がある。普通は、模様のない鮮やかな緑色一色だが、このような個体もまれにいる。
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