東谷津レポート その70

2010.5.7() 山梨 am10:30 曇り後雨

 

谷津はあっという間に緑に包まれた。今日は午後から雨だと言う、暖かくなったこの時期の雨の観察もいいだろうと谷津に入る。東谷津ほとけどじょうの里の入り口のエゴノキも柔らかい若葉を出している。その葉の柔らかいうちにと、オトシブミが早速葉を巻き出した。中に卵を産みつけて、振り下げている。お仕事中のオトシブミが見たくて探すのだが、見つからない。変わりに口吻の異常に長いシギゾウムシがオトシブミの揺籃の近くでうろうろしていた。

午後谷津に久し振りに雨が降り出した。雨が降り出すととたんに「ケケケケケケッ」「ココココココッ」とシュレーゲルアオガエルが待っていたかのように一斉に鳴き出し、谷津中にこだまする。昆虫達は雨を嫌い、葉裏へと避難する。そんな虫達をみようとしゃがみ込むと、真っ白で小さな泡の塊が草の枝に引っ掛かっていた。

<アワフキムシ>の幼虫の泡巣だ。この泡巣は再生するのだそうだ。どう作るのかちょっと見せてもらおう。泡巣を指先でそっと取り除く、泡はかなり粘度があるどろっとした液体に守られていて簡単にははじけない。この泡、どうやって作るのだろうか。アワフキムシの幼虫は、口吻を植物の茎に突き刺し液をしみ出させ、自分の体液と混ぜ合わせて粘度を持たせる。腸の先つまりお尻の先端に小さな袋があり、尻を持ち上げて空気をその袋に取り込む。尻を下ろして液に浸け、袋の弁を開いてシュッと空気を放出して泡を造り、これを自分の体を覆い尽すまで続けるのだそうだ。この泡巣によって乾燥から保護し、捕食者や寄生者から身を守っているのだそうだ。これから雨期に向かって、草原ではいくつもの泡巣が見られるであろう。
 


エゴシギゾウムシ:エゴノキの揺籃の作者がいないかと探していると、近くに、鳥のシギのくちばしのような長い口吻を持ったエゴシギゾウムシがいた。この虫、揺籃は造らず、エゴノキの果実に長い口吻で深い穴をあけ、その中に産卵すると言う。エゴノキはまだ花も付けていないのに何をしているのだろうか。じっとこちらを見下ろしているようだ。
 


アワフキムシの幼虫の泡巣:泡をそっと取り除くと、シロオビアワフキの幼虫がいた。どのくらいの時間で泡巣を再生するのか聞いてみることにした。(12時41分)
 


さらに泡を取り除くと、なんと2匹いた。すでに尻を持ち上げて泡を造り始めている。づんぐりした体形と色合いがなんとも可愛らしい。(12時41分)
 


尻を動かして泡を造り続ける。常に頭を下にしているのは、泡造りに何か関係しているのだろうか。(13時04分)
 


すでに1匹は泡にほとんど覆われた。(13時11分)
 


2匹とも泡の中に埋もれた。
 


反対側へ廻ってみると、2匹が仲良く寄り添っている。通常は、1匹づつが独立して泡巣を造るが、近くで造るとくっついて1つになることがあるのだそうだ。
 


やがて完全に泡で覆われ、泡巣が完成した。(13時25分)44分かけて作り上げた泡巣、1つひとつの泡つぶの大きさまで均一で、まるで正倉院にある器のように精巧で美しい。この泡巣これから雨期を迎えるまで草原のあちらこちらで見ることが出来るぞ。
 

 

東谷津レポート その69

2010.5.3() 大石 晴れ

 

(今回初の大石さんレポートです。)
 

日に日に新緑が濃くなる連休中、谷津田の生物相は毎日新たな新人が姿を現す。本日羽化したばかりのクロヒカゲは、近づいても逃げず、日に透けた羽の模様が美しい。


カワトンボはたくさん出てきて、木陰を飛び回っている。この時期は、濃いメタリックグリーンのが多いようだ。


地を這うメタリックグリーンは、オサムシだ。少し逃げるのをやめて姿を見せてくれたが、こちらも美しい。


刈り払われて明るくなった雑木林には、昨年は見かけなかったキンランが咲き出した。里山保全の効果が早くも出てきたのか。


5月の森は白い花が目白押し。まずは、オトコヨウゾメ。男用済みにならないよう気を付けたい。


林の中のシオデの葉には、ルリタテハが卵を産み付け回っている。小さなスイカのような卵はタテハチョウ科の特徴だ。


夏鳥としてやってきたキビタキのさえずりを追いかけて森の中を歩き回っていると、木の根元で何やらガサガサと動いている。やがて目当てのものを探し出したのか、一気に上に駆け上がった。リスだ。松ぼっくりらしきものをかじりだした。人が少ない時間帯にはこんなサプライズがあるから、山は毎日来ても飽きないのだ。


東谷津は一年で一番美しい季節を迎えている。ティピーテントを見てやってくるハイカーも多くなった。

 

東谷津レポート その68

2010.4.10() am11:30 山梨 晴れ

 

ニホンミツバチの分蜂

ついに分蜂が始まった。昨年7月より始めたニホンミツバチの養蜂、朝3時半からやっとの思いで巣箱を設置、谷津に行く度にご機嫌を伺ってきた。巣門からの出入りの状態、出入りが多いからどうの少ないからこうの、巣虫は付いていないか、天敵のオオスズメバチは来ていないか、時には巣の中を覗き込む、手塩にかけて育てて来たのだ。

4月末頃から分蜂が始まると聞いていたが、まだ4月の9日、予期せぬうちに突然の如くそれは始まった。モニ1000の植物調査の途上、「ミツバチがちょっと変じゃない?」との声に巣箱を見た。確かに巣箱の廻りの蜂の数が多い、だがまだ早い、「天気が良いので多いんじゃないのかな」とタカをくくって植物調査を続行した。

巣箱が設置されている物置小屋の方向がやけに騒がしい。羽音がブンブンと遠くまで聞こえ、無数の蜂が飛び交っているのが見える。まさか分蜂? そう、そのまさかが始まってしまったようだ。蜂が集合しているのは屋根の軒先、梯子をかけなければ届かない。現場にいるのは植物調査担当と僕の二人だけ。捕獲の手順も分からない、さあ大変、どうしよう。ここで逃したら男が廃るぞ、でもどうしよう。蜂達はどんどん集まってくる。早くせねば〜。幸いにも、今日は椎茸の駒打ちで、男衆が集まることになっていた。早めに集まってもらい、準備を整え無事捕獲を完了。めでたしめでたし。
 
翌4月10日、昨日設置した真新しい巣箱を固定しに行くと、またしても本家が騒がしい、昨日の騒動と同時刻、また分蜂が始まった。なんと2日連続、ふう〜う。
 


巣箱の廻りに整列した脱出組の蜂たち。巣門が見えないくらい出て来た。
 


分蜂開始:女王様が飛び出したのだろう。巣箱の廻りにいた蜂達が一斉に飛びたち女王様のもとへ大移動。ブンブンとものすごい羽音だ。(春になり新しい女王が生まれると、旧女王は群の一部をつれて巣を出て行き、新天地で新たに巣をかまえる。これが分蜂だ)
 


やがて女王様を中心に集まり始める。
 


さらに集まり球状になった。この状態で2、3時間留まっている。こうなると廻りを飛んでいるものはいない、この時が捕獲のチャンス、霧吹きで水を塊全体にまんべんなくかけ、動きを鈍くする。
 


いよいよ捕獲、塊の両脇から素手で指を差込む、刺激しないようにゆっくりとゆっくりと。
 


すくい取って巣箱に、これもゆっくりと慎重に。
 


巣箱に入れる。巣箱の廻りは蜂だらけだが、わりと素直に巣箱に入って行く。この作業を数回繰り返す。女王様がうまく巣に入っていれば、取り残した蜂達も自ら入る。後は夕暮れ時にあらかじめ決めておいた場所に設置すれば完了だ。
 


これが天敵のオオスズメバチ、大顎で巣門をかじり広げて巣の中に入って行く。単独で襲った時はミツバチの逆襲にあうことになる。ミツバチは数10匹がよってたかり熱で蒸し殺してしまうが、群で襲われるとひとたまりも無い無惨な有り様となる。
 

 

東谷津レポート その67

2010.3.30() pm1:30 山梨 晴れ

 

久々の晴れ、谷津は今年の妙な春の訪れにとまどっているのだろうとかと思ったが、さすが自然、ちゃんと春を捕えていた。ため池では、アカガエルのオタマジャクシが成長して単独行動を初め、アヅマヒキガエルがいつの間にか産卵、紐状の卵塊が水底の枯枝や枯葉に絡み付いている。よく見ると、その紐の一部が崩れていて孵化が始まっているのだ。トウキョウサンショウウオの卵も卵のうの中で大きく変形している。間もなくエラを生やし、卵のうから脱出するだろう。

草原も雑木林でも動きは止まっていない。枯葉の間から、セリ、ツクシが姿を見せ、ヒメウズが小さな花をたくさん咲かせ風になびいている。ミヤマセセリが「私達の出番よ」とでも言いたそうに、はねをパタパタさせて雌と雄がおにごっこだ。

コナラの苔の生えた幹で変なムシを観た。「コマダラウスバカゲロウ」の幼虫だ。コナラのごつごつとした特徴のある木肌の間で、大アゴを目一杯広げ、獲物が通りかかるのを気長に待っているのだ。体に苔のくずを付け、その苔の中にまぎれていつまでも待つ。

ここにこのムシが居ることは以前から聞いていた。来る毎に探すのだが、いつも見つからず諦めていた。が、チャンスがついに来た。知らせてくれた本人が、その約束の木で観察しているではないか、「これよ、これ」小枝で指し示してくれたのだが、なかなか確認できない。老眼を駆使「居ったああ!!これかあ」見事に苔の一部になっていた。見たいムシを見つけた時はいつも跳び上がらんばかりに感動してしまう。
 


アズマヒキガエルの卵塊:紐状の卵塊に穴があき、ダルマ胚の形のままで浮き出てくるのが始まっている。
 


トウキョウサンショウウオの卵のう:中の卵も大きく変形し、エラが生えると卵のうの中で泳ぎまわり、やがて脱出する。もう真近だ。脱出すると俊敏に泳ぎ去り、ぶよぶよの卵のうだけが残る。
 


トウキョウサンショウウオの成体:産卵を終え森へ帰る途中なのかな。水路の近くの倒木の下でじっとしていた。
 


ミヤマセセリ:枯葉色の林間で飛翔を始めた。なぜか、逆光で翅裏しか見せてくれない。
 


コマダラウスバカゲロウの幼虫:苔の生えたコナラの幹で、大アゴを広げて餌が来るのを待つ。ウスバカゲロウの仲間だが、地表にすり鉢状のアリジゴクを作らず、木の幹や岩の苔の中で獲物が目の前に来るのをひたすら待つ。写真の中央でオオアゴを下に縦に写っている。背中や頭部に苔を付け、苔になりきる。お見事。
 


蛾の仲間:コナラの幹に止まっていた保護色をした蛾の仲間。見逃してしまいそうだ。
 


こちらがクローズアップの図だが、同定は先送りにしよう。
 

 

東谷津レポート その66

2010.3.15() am10:30 山梨 晴れ

 

東谷津でコナラの大木が倒された。周辺の雑木林を明るくするための開伐なのだ。この雑木林に、本格的に手が入るのは何年ぶりだろうか、今は想像するしか無いが、経済が急速に成長した陰で、里山が放置された。その境を昭和30年代としたら50数年にもなる。この大木も樹齢50〜60年はあっただろう。樹高15メートルはあるであろう普段見ることの出来ない樹冠部を観察するのには良いチャンスだ。枝はらいをしながら慎重に進めた。

東谷津に向かう途中、ホタルの里に寄り道だ。なぜなら、今日のこの天気(朝晴天ではあるが風が冷たく、昼過ぎに急速に気温が上がる)成体で越冬したチョウの観察には絶好なのだ、彼等は体温を上げるために日光浴が欠かせない、陽光の中でじっとして動かないのだ。前回撮れなかったチョウを探した。

ヨシが刈り倒され、冬枯れ色一色の休耕田が大きく開けている。目を凝らしてゆっくり見て行く、この原っぱに不自然な青い筋が見えた。「いたあ、ルリタテハだ!!」翅をいっぱいに広げ、陽光を吸い取っているところだ。そっと近ずく、動くなよ、さらに近ずく、動かない。私は、無視されているようで嬉しくなった。「ガシャ、ガシャ、ガシャ」シャッター音が心地よく響く。すぐ横にアカタテハ、うーんやはり良い日だ。
 


東谷津の作業小屋裏斜面の開伐された雑木林。下刈りでアズマネザサなども刈り取られ、上を通る山道まで見渡せるようになった。
 


ハラビロカマキリの卵のうであろう。コナラの大木の樹冠で見つけた。こんな高さまで来ていたとはおどろきだ。
 


イラガのマユ:これもコナラの樹冠部にあった。枝分かれの部位にぴったりと張り付いている。高さ13ミリと小さいのだが、非常に強固に作られており外敵から身を守っている。上部に穴があいているのは、蛹が羽化するのに中から頭を持ち上げるとふたが開く仕掛けになっており、蛹は頭部を出して羽化するのだそうだ。そう、これは空家。まるで陶器、ヤブツバキでも生けたくなる風情だ。
 


ルリタテハ:体温を上げようと、恥ずかしげにゆっくりと翅を広げ始めた。
 


ルリタテハ:翅を完全に開いた図、と思いきや・・・。
 


ルリタテハ:ここまで開けるぞと目一杯広げて力んでいるようだ。ボディー丸出し、ここまでやらなくてもよいのにと思うのだが、面積を広げてより多くの陽を浴びようとしているのだろう。
 


ルリタテハの裏側:体温が上がるとすごいスピードで飛びまわる。止まっても翅は開かなくなる。
 


アカタテハ:越して来た冬が厳しかったのだろう。ボロボロになった翅が物語る。
 

 

東谷津レポート その65

2010.3.5() am11:30 山梨 晴れ 気温19.8°

 

ここ数日、暖かい日と寒い日が一日ごとに入れ替わり、谷津の生き物達も対応に苦労していることだろう。特に、外気温によって体温を高めているものにとっては、ギンギン動ける日と、全く動けない日が交互に来るのだから大変だ。

今日は特に暖かい、この陽光を待っていたかのように、虫達が動き出した。寒い冬を成体で過ごしたチョウ達が飛び交っている。ルリタテハ、キタテハ、テングチョウだ。彼等は一応にすごい早さで飛び交っていて、写真に撮るのが難しい。やっとのことでキタテハが撮れた。

アカガエル達のやかましい産卵も終り、谷津は静かになった。変わってトウキョウサンショウウオの産卵が始まったようで、田んぼの中の水たまりに三日月型の卵塊が、静かに横たわっているのが見える。そんな卵塊が、ため池にも有るかも知れないと、覗き込んでいた同行者が「底の枯れ葉がうごいているう」と奇声を上げた。

<エグリトビケラ>の幼虫であった。近くには、沈んだ枯れ葉がまるく噛み切られているものがたくさんあった。この虫は、噛み切った枯れ葉を自分の家の外壁に使う。寝ぐらは自分で出した絹糸で筒状につくられ、その表裏に切り取った枯れ葉を貼付ける。表に3枚裏に3枚を貼付けて、池の底に沈んだ枯れ葉に埋もれていて、よく見ないと分からない。幼虫はイモ虫型だが脚が長く、水中の障害物の中を移動するのに都合がよくなっているようだ。幼虫の体側には気管さいと呼ばれるところがあり、ここから水中に溶け込んだ酸素を取り込んで呼吸しているとのことだ。この巣の中で蛹にもなるという、この虫、面白そうだ観察を続けてみようかな。

近くをマツモムシが得意な背泳ぎで通り過ぎて行った。
 


キタテハ:陽光に誘われて飛び出したようだ。すごい早さで飛翔するのは、切れ込んだ翅の形状によるものだろう。
 


水底に沈んだ枯れ葉がまるく切り取られている。写真中央に切り取られた葉が重なってみえる、エグリトビケラの幼虫の住処だ。
 


すくい上げてみると、表裏に3枚づつ貼付けてある。それも表裏で上手くオフセットされておりこの表裏の枯れ葉の間に筒状の部屋がある。
 


これは表裏逆さまの状態、葉の間からアゴ側が見える。表裏が決まっているので、体をのばし、ひっくり返って通常に戻る。
 


これが通常の状態、歩き易いように上(表)側の葉が下(裏)側の葉より少し前にオフセットされている。これは又、捕食者が近付いたときに、ちょと頭を引き込めば簡単に隠れてしまうことも出来る優れものだ。
 


これが幼虫の姿だ。卵、幼虫、蛹と水中で過ごすこの虫は、体側に気管さいと言う呼吸器をもち、水中に溶け込んだ酸素を取り入れて生きているのだそうだ。(体長25ミリほど)
 

 

東谷津レポート その64

2010.2.25() am11:30 山梨 晴れ 気温19.8°水温13.5°春一番が吹く

 

谷津のアカガエルの産卵の続報です。
 

東谷津は2/6フライング組のあと2/14に第一ピークが来て一気に卵塊の数が増えた。ため池には2つの大きな卵塊団が見られる。山を越えた隣の谷津、ホタルの里でも、フライング組の卵塊がため池や田んぼの中で見られ、その卵塊にカウント用の識票を立てていると、ケケケッっとため池の方からアカガエルの声、1匹が鳴き出した、と、とたんに「キュキュキュキュッ、キョキョキョッ」と例の大合唱、合戦が始まった。

田んぼの調査を早めに切り上げ池に近付く、抜き足差し足忍び足さらにほふく前進とあらゆる前進技術を駆使して。途中、この暖かさに誘われて出て来たクモに「おまえ何やってんの」ってな目で見られながらもめげずに進む。何とか気付かれずに近付くと、数10匹が水面を波立たせて騒いでいた。通常この騒ぎは2〜3日続き池には無数の卵塊が残る。

アカガエルの産卵が終わると谷津は急速に春が訪れる。
 


ため池に大集合したアカガエル。この時大合唱が始まる。
 


合戦中のアカガエル、愛らしい姿に似合わず乱暴に泳ぎ回り雌を探す。
 


産卵のピークには無数の卵塊が集まった卵塊団が一夜のうちにあちこちに残される。(この卵塊団にはおおよそ25個の卵塊が集まっている)ここ東谷津とホタルの里は2度のピークがある。
 


ため池のクリスタル:産まれたばかりの卵は1つぶひとつぶが透明の寒天質に包まれてクリスタルのように美しい。
 


春を待ちきれず今日の暖かさに誘い出されたのかクモの幼体。(コモチグモかハシリグモであろうか)
 

 

東谷津レポート その63

2010.2.6() am11:30 山梨 晴れ 気温14.8°水温6°

 

谷津で一番早い春の動き、アカガエルの産卵がいよいよ始まった。

東谷津で作業中の仲間から「カエルの卵があるよ〜!!」と連絡が来た。翌日はモニ1000の調査日になっている。はやる気持ちを何とか落ち着かせ、翌朝、待ち合わせた調査同行者と行ってみると、透き通った氷の下に2つの卵塊があった。気の早いフライングカップルの産卵だ。1つはヤマアカガエル、もう1つはニホンアカガエルのものだ。

アカガエルは通常2〜3のフライングカップルが日を置いて産卵し、その後条件の良い日に一斉に産卵する。この一斉産卵のとき、雄が先に池に現れ「ケケケッ、キュキュキュキュッ、キョキョキョッ」と鳴きながら誰彼かまわず目の前のカエルに抱きつく。やがて雌が来ると、今度はこの雌めがけて雄が殺到し、「我がDNAを是非とも!!」と雌を奪い合う。これがカエル合戦だ。山を越えたホタルの里にも行ってみたが、今日はみつからない。こちらの谷津はまだのようだ。予定の調査コースの確認を終え調査を終了した。

アカガエルの産卵時期にあわせ、猛禽類のノスリも毎年やってきてため池にはり出したコナラの枝に止まる。恋に盲目となったアカガエルは簡単に捕らえることが出来ることを知っているのだ。このノスリの写真が撮れないかと、一人また東谷津に戻った。

山道を行くと、何やら谷底が騒がしい。アカガエルの合戦が始まっているようだ。と言うことはノスリは来ていない、来ていればカエル達は合戦どころではないのだ。ならば合戦の写真を撮ろうとカエル達に気付かれないようブッシュの中を音をたてないように慎重に進む。これが難しい、バキバキ枯れ木を踏む音が自分には非常に大きく聞こえる。「ヤバい、気付かれる」背をかがめ一歩進んでは耳を棲ませて気付かれていないことを確認し、また一歩。この姿を誰かが見ていたら大笑いであろうが、かまうもんかこのチャンスは逃さないぞ。ついに望遠レンズの射程にまで近付いた。数10匹が波立てて雌のいない雄どうしの模擬合戦であった。
 


今年最初の産卵。左のデレッとしたのがヤマアカガエル、右のプリプリ感のあるのがニホンアカガエルの卵塊。水面の氷越しに見える。
 


冬眠から目覚め、池に来てまだかまだかと首を(アゴを)長くして雌の到着を待つ雄ガエル達。
 


まだ雌ガエルが来ない。取り敢えず雄は目の前のカエルに誰それかまわず抱きつき、雄だとわかるとまたつぎへ。
 


他人(カエル)の卵の上で一休み。
 

 

東谷津レポート その62

2010.1.23() am11:30 山梨 晴れ     

 

 冬の里山、一年を通じてさまざまな顔を見せてくれる谷津も、真冬の一時期、ひっそりと静まりかえり、何も動きをみせない時がある。今まさにその時期だ。そんななか、生命の痕跡を探してみた。

 生命の痕跡を探していると、生命の源もみつかる。カマキリの卵のう3種がみつかった。分厚い断熱剤のなかで卵のまま寒い冬をやり過ごし、暖かい春に孵化し動き出すのだ。ハラビロカマキリ、オオカマキリ、チョウセンカマキリであろうか、定かではない。いずれのカマキリの卵のうも持ち帰って家の中にいれないことだ、ある日突然孵化し、百匹近い幼虫が湧き出してくる。壁も天上も部屋中が子カマキリだらけになる。昨年やってしまったのだ。
 

ミノムシ:コナラの幹に付いていた。ミノガの仲間のミノ(幼虫から蛹までの住処、雌は一生この中で暮らす)であろうか、すでに空き家となっているが、未だに幹と一体化し、じっくり探さないとみつからない。
 


ウスタビガの繭:すっかり葉を落としたコナラの枝先で風に揺れていた。冬枯れの雑木林でよく目立つ色をしている。天敵にみつかり易いと思うのだが、実はこの色は保護色なのだ。中はもうとっくにからっぽ、秋口に羽化するので、その時期の葉の色なのだ。
 


ヤママユの繭:こちらも葉を落とした枝先に付いて目立っている。ヤママユもウスタビガと同様に秋口に羽化し空き家になっている。
 


ムラサキシジミ:葉裏などでじっと動かず冬を過ごし春を待つのだが、よい天気に誘われたのか飛び出したようだ。だが、そこはまだ冬、体が思うように動かず池に落ちてしまったのだろう。羽をボロボロにしてまでも生き長らえて来たのが水底にうつった影に現れている。無念であろう。
 


ハラビロカマキリの卵のうであろうか、小高い枝先に付いていた。

 


こちらはオオカマキリの卵のうであろう。畑に残って立ち枯れしたシソに付いていた。
 


チョウセンカマキリの卵のうと思われる。農作に使われ、積み上げられた竹に付いていた。
 
 

 

東谷津レポート その61

2009.12.2() pm1:10 山梨 晴れ     

 

今日は朝から素晴らしい天気、まさにインディアンサマーだ。(インディアンサマー:小春日和、米国ではなぜか晩秋や初冬のよく晴れて暖かい日をこう呼ぶ)東谷津はまだティピーが張られており、ぴったりの雰囲気だ。

東谷津の廻りは少し陽が傾いて霞み掛り、小鳥の鳴き声以外は物音ひとつ聞こえない。インディアンの少年にでもなったような感覚で、ため池の周りである生き物を探した。

それは飛行グモ、子グモや小型のクモは、晩秋の風のないよく晴れた日に、自分の糸を使って旅立つ。枯れ枝や枯れ草のてっぺんに登り、お尻を上に向けて糸を少しずつ出す。空中に浮いた糸は、上昇気流に乗って上空に向かい、やがてクモを引き上げ始める。クモは8本の脚で踏ん張る。さらに頑張ってぎりぎりまで我慢し、完全に浮力がついたところで、ぱっと脚をはなして飛んで行く。行き先は気流まかせ、行き着く先で生き長らえるか分からないが旅立つのだ。

残念ながら、今日は飛行グモは見られなかったが、ため池周りで見かけた昆虫達を紹介しよう。暖かい日をねらえば、まだ出会える虫達だ。
 


飛行グモ:今まさに飛び立たんと踏ん張っている。写真の左斜め上に糸がうっすらと写っている。(昨年12月11日に撮影したもの)
 


ハエトリグモ:ネコハエトリの雌かも知れない。ハエトリグモの種は巣を張らず、徘徊して餌を探す。餌が見つかるとそっと近付きジャンプして捕まえる。
 


見事な擬態はシャクトリムシ(何の幼虫かは不明)、上の写真のハエトリグモを撮ろうとして、枯れかけたショウブの葉の上のじゃまな枯れ枝を取り除こうと、つまむとぐにゃっと柔らかい感触、どきっとしてよく観るとなんとシャクトリムシであった。微妙な模様や色合いの変化がコナラの枝先にそっくりだ。
 


ガガンボ:咲き残ったナンブアザミの花に来ていたのはマエキガガンボであろうか。ひとつの花に数匹が群れて、長い脚を使いにくそうに動かし陣取り合戦をしているのをたびたび見かける。
 


ため池の中のショウブの葉の上でウロウロしていたゾウムシの一種。
 


アオマツムシ:月明かりの中でスズムシやコウロギ、カンタンなど、遠慮がちに鳴く声をかき消して、大きな声で一斉にリーリーと鳴き、初秋の情緒を消し去ってしまった中国原産のアオマツムシ。晩秋まで生き延びて、左後肢を失い、切株の上で大きく延びた影がなぜか寂しそう。
 


オツネントンボ:ため池の廻りを縄張りにしていた。大きな目玉はどこから見てもこちらを見ているようだ。やがて雑木林に入り、名の通り成虫で越冬する。
 


ナミテントウ:晩秋でも天気のよい暖かい日に見掛けるが、いつもいそがしそうに歩き回っている。ナミテントウははねの色や斑紋に異変が多い、これは四紋型。