東谷津レポート その50 |
2009.6.19(金) am11:00 山梨 晴れ 気温28.7° |
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谷津田沿いの林に入ってみた。下草を踏み分けて入って行くと、ムラサキシキブが花を付けていた。名前の由来である紫色の果実を付けた状態を見ることはあるのだが、小さな花を無数に付けた状態を見たのは初めてだ。梅雨時に咲くことさえ知らなかった。緑一色の林間で、ひかえめな美しさを感じる。 ムラサキシキブは、山道沿いで極普通に生えているため素通りしてしまうので気が付かなかったが、枝の先端の対生した葉が無数に穴があき、明らかに何かに食べられたと思えるものがある。同じような木を何株かみた。最近、ムシの観察力が付いてきた私は、「こりゃ何かいるぞ!!」と細心の注意をはらって観てゆくと、「いたっ」それもかなり変なやつだ。トゲトゲで動かない、もしや冬虫夏草では(気生型といって木などにとまったムシから直接出ているものもいるらしい)と指先でそっと触れてみた。ゆっくりと反り返って姿を見せた。 <イチモンジカメノコハムシの幼虫> さらに、家に帰るとカミサンが「え〜なにこれ〜」と庭で叫んでいる。バラのつぼみが皮一枚残してポッキリ折れていて、「こいつが犯人よ」と切った枝を持って来た。見るとチョッキリではないか「悪い奴だねこいつは」と言いながら、やったーとばかり写真を撮ってそっと逃がしてやった。 チョッキリとオトシブミは特に興味があり、1日に2種に遭遇するなんて何という日だ本当に。 ムラサキシキブ:果実と同じように薄紫色の花を無数につけている。あまりにも普通に生えているので花をじっくり観たのははじめてだ。 イチモンジカメノコハムシの幼虫-1:食草のムラサキシキブの葉上で通常の姿勢。ゴミがついているようにしか見えない、黒いトゲ状のものは自分の糞だ。 イチモンジカメノコハムシの幼虫-2:ちょっと触れると、固まった糞を持ち上げて正体を表す。 イチモンジカメノコハムシの幼虫-3:失礼して後ろから見た図。 ヒメクロオトシブミ:ついに撮った。足が黒いので別種ではないかと思っていたが、黄褐色の足のもものと黒い足のものがいるのだという。 ヒメケナガチョッキリ:なんと我家の庭のバラの木に来ていた。
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東谷津レポート その49 |
2009.6.13(土) am10:00 山梨 晴れ |
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梅雨に入った。谷津ではこの梅雨を待っていたかのようにノハナショウブが咲き出した。たった1株のノハナショウブ今年も咲いてくれた。あぜ道に入ると、オカトラノオの群生がつぼみの先から白い花びらを覗かせて今にも咲きだしそうだ。こ花は、春のヒメジョオンとバトンタッチするかのようにのように昆虫達を集める。梅雨時は、一時の晴間に一斉に昆虫達が動き出す。その行き先がオカトラノオなのだ。
林間の山道脇で、イチヤクソウも咲きだした。4月中旬に葉の間からつぼみが顔を出し、1か月半ほどの時をかけて花茎を伸ばしながら開花の準備をする。昨年このサイクルを知った私は、無駄足を踏まずここに来ることが出来た。 ノハナショウブ:ホタルの里の入り口で毎年1株だけ花をつける。今年もハイカーを迎えているようだ。 オカトラノオ:ホタルの里のあぜ道で群生が見られるのも真近。この花には昆虫達がよく集まるたのしみな花のひとつ。 イチヤクソウ:小さい花だが林間で結構目立つ、ハイカーは気付かず通り過ぎて行く。 コモチマンネングサ:花粉がないので種子は実らず。葉の脇につくムカゴで増えるので「子持ち」の名がついたとのこと。田んぼのあぜ道に群生する小さな花。写真の花の右にある小さな葉のところがムカゴ、これが地面に落ちて増えてゆく仕組み。 カノコガ:梅雨に入る直前に決まって現れる。葉裏で隠れるように止まっているが、なにせ白、黒、黄色とど派手な組み合わせ、草原の緑のなかでよく目立っている。 エサキモンキツノカメムシ:ミズキの葉の上で交尾中のペア、ハートマークを見せつけて「じゃまするな」とでも言っているようだ。そっと写真だけ撮らせてもらった。 エサキモンキツノカメムシ:翌日そっと覗いてみると、卵を保護する雌がいた。
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東谷津レポート その48 |
2009.6.3(水) am10:00 山梨 曇り |
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トウキョウサンショウウオの幼生はどうなっているのだろうか?
3月中旬に産卵され、4月中旬に孵化(レポート-42参照)した幼生を見てみよう。運が良ければ捕えられるとばかりに、いそうなところにタモ網を入れた。何度目かの探りで捕えた幼生は、5センチはどに成長しており、既に手足が生えて、幼生より幼体と呼んだ方が相応しくなっていた。だが、まだ頭部と腹部の間には3対のエラが残っており、もう少し水中の生活をおくるようだ。まるで、ウーパールーパーのようなこの幼体は、やがてエラが退化し、秋には変態して上陸するのだ。(成体の写真はレポート-37参照) トウキョウサンショウウオの幼体:手足が生え、体長5センチほどに成長していた。 頭部を拡大してみた。まだ立派なエラが残っていて、上陸は先のようだ。 ギンリョウソウ:純白な容姿は薄暗い林間で怪しげだ。 ギンリョウソウの花部:筒状の花びらの中に青い皿状のものが雌しべ、その周りの黄色いのが雄しべだ。この色合いがまた怪しげな雰囲気を助長している。 ナルコユリ:つぼみの期間が長く待ちぼうけていたが、長さ2センチほどの花がついに咲き出した。花は、アマドコロに似ていて(レポート-45参照)区別がつけにくい。 スイカズラ:つる性の植物。花は2個づつ並んでつき、よい香りがする。形に特徴のあるこの花、咲きはじめは白いがやがて黄色く変色する。名は、花を口にくわえて蜜をすったことから「吸い葛」とついたとのこと。
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東谷津レポート その47 |
2009.5.27(水) pm2:30 山梨 薄曇り |
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<ヒキガエル幼体の上陸> ついに見たぞ!! ヒキガエル(アズマヒキガエル=ガマガエル)の上陸だ。昨年は上陸寸前までは確認したのだが、数日の違いで見逃してしまい非情に残念な思いをした。今年こそはとそのチャンスを狙っていたのだ。一昨日、オタマジャクシは四肢を生やし、うじゃうじゃと動き回っているのを確認、上陸は近いものと確信した。が、翌日は所用があってこられない、明後日も昼過ぎまでこられない。「う〜ん、また見逃しかあ」 このヒキガエル類の上陸は、アカガエル類と大きく違う。アカガエル類はオタマジャクシの段階で5センチほどに大きく成長、単独で行動し、四肢が生えると俊敏に動き、単独でバラバラと上陸する。ヒキガエルは孵化(レポート-42参照)から上陸まで常に団体で固まっている。体長も2センチほどしかなく、泳ぎも下手くそ、尻尾が退化した上陸時には8ミリほどしかない。動きが鈍いので集団で外敵から身を守っているのであろう。あのガマ合戦(繁殖行動、レポート-39参照)から60日めの出来事。 早足でため池に直行、遠くから様子を確認。「ないっ、塊が見えない〜」また見逃したか〜。それでも近くに行ってみると、水面から上半身を出して、辺りを見ているのが数匹いた。ということはもしかして、期待しながら草をそっと分けてみた。動いている、それもかなりの数が、真っ黒な体色で。上陸だ!!ついに見たぞ上陸の瞬間を。 ヒキガエルのオタマジャクシは、卵から孵化した後も、変態して上陸するまでこのように集団で行動する。 ズームアップしてみると、四肢が生えて上陸まじかのオタマジャクシ(もうオタマジャクシとはいえないかな)が、上になったり下になったりそわそわしていた。それでも集団はくずさない。 何が上陸のきっかけになるのだろう。外的な何かだろうか、それとも、勇気ある奴が、あるいわ無頓着な奴が初陣をきるのだろうか。浅瀬で障害を乗り越えようと、汚れた体で悪戦苦闘は最後尾組の1匹だ。 ついに上陸だ。水際の草をそっとかき分けると、無数の幼生達が姿を隠そうとするがその動きはにぶい。尻尾がまだ一部残っていておむつをして這っているようだ。(ヒキガエルは成体になってものそのそと歩くだけで動きはにぶく、カエルのくせにジャンプが下手だ) ちょっと御免。体長測定のためにケースに入ってもらった。8ミリと非情に小さい。これがあの大きなヒキガエルになるのだから、100倍や200倍にもなる奴がいるのだからおどろきだ。 プラスチックケースの垂直の壁を登りだした。こんなに小さくてもやることは1人前、いやそれ以上。成長するとこんな垂直な壁はとても登れない。 これが繁殖行動ができるまでに成長したヒキガエル(アズマヒキガエル=ガマガエル)。水辺の哲学者のような風貌だ。
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東谷津レポート その46 |
2009.5.19(火) pm12:10 山梨 薄曇り 気温26.3° |
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東谷津ほとけどじょうの里の入り口のエゴノキが今年も花を咲かせた。昨年は花数が少なくちょっぴり寂しい夏への入り口であったが、今年はすごいぞ、つぼみをいっぱいつけている。 この花は散り方もみごとで、周りの地面一面を真っ白にしてしまう。この花を見ると、ついついあの昆虫を探してしまう。そう、長い首が起重機のように折り曲がって若葉を器用に折りたたみ、なかに卵を産みつけるエゴツルクビオトシブミだ。葉に下げた文(ふみ)が今年は少ない。成虫は、当然見当たらない。(このように書くと、この昆虫に詳しいようだが、実はまだ見たことが無い。トホホ、見たくてみたくてたまらない) 山道に入り、ほたるの里に向かう。途中、コアジサイが小さな花をいっぱいつけて咲かせていた。緑色濃い林間で、艶のある若葉の上に咲く薄紫色のこの花が大好きだ。 エゴノキ:ほとけどじょうの里の入り口で、今年も咲き出した。落葉の高木、夏には卵球形の可愛らしい実を下げる。 コアジサイ:明るい林間に生える落葉の低木。つやのある若葉の上で、小さい花を密集させて咲く。 レンゲソウ:花茎をのばし、先端に小さな花が輪状に集まっている。春の田んぼの風物詩だったのが、最近さっぱり見なくなった。 ハナイバナ:道端などでごく普通に見られるこのはな、葉内花と書く、葉と葉の間に花が咲くからとのこと。(先端の茶色はハムシ) シュレーゲルアオガエル:産卵前は、土中で盛んに鳴いているが姿を見せない。産卵が終えると、このように姿を見せるようだ。一仕事終え、まだねむそうにショウブの葉に手足の吸盤で張り付いていた。 ツマグロオオヨコバイ:シャイなこの虫、人影を見ると横づたいに裏側に隠れてしまう。この習性を利用して、隠れた裏側に手を近付けて、カメラ側に出てきてもらった。死後はオレンジ色に変色する。体長13ミリほど。 イロハモミジ:これは花ではなく果実。秋には茶色く変色し、種を重心としてプロペラのようにまわりながら風に流されてゆく。
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東谷津レポート その45 |
2009.5.10(日) pm9:30 山梨 晴れ |
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本日は、月例の"日よう日ふる里散歩"「初夏の野鳥と植物観察の巻」で東谷津から多峯主山に歩いてきました。歩き出すと早速ガビチョウが山道に2羽3羽と舞い降りてきて歓迎しているかのように、しばらくの間姿を見せてくれました。中国原産のこの鳥は最近になって至る所で、それこそ市街地でも、その美しい歌声を聞かせてくれます。(美しい歌声も、声の高さといつまでも鳴き続けるさまは、ほとほとノイズになって聞こえるのは小生だけでしょうか?)この鳥、声はするけど姿は見えずで、普段なかなか見られないのに幸先の良いスタートです。 山道に入ると、いつものコガラ、シジュウカラ、エナガ、ヤマガラなどの群が、枝から枝へと移動して行きます。ウグイスがすぐ近くでホーホケキョと鳴くのですが、この鳥もなかなか姿を見せません。さらに山頂に向けて進みます。山道の周りはもうすっかり緑一色、爽やかな風が林間のアマドコロの花をゆらして通りぬけて行きます。ツクバネウツギ、マルバウツギ、コゴメウツギ、独特の臭いを漂わせてガクウツギも咲き出しました。コアジサイも負けじと、ツヤツヤの若葉の先に薄青色の花を咲かせようとつぼみをいっぱいつけて、1週間後が楽しみです。 山頂下の雨乞い池で昼食中、ヒガラ、ヤブサメ、クロツグミの声も聞こえてきます。山頂からの帰り道、すぐ近くでキビタキの声が・・・、皆立ち止り耳を澄ませ、目を声の方角に向けて神経をとがらせる。オレンジ、黄色、黒の派手な体色を一瞬みせて、雑木林の若葉のなかに消えて行きました。 トカゲ、カナヘビ、シュレーゲルアオガエル、トンボなどなど盛り沢山の一日でした。 すっかり緑一色のフィールドでの観察はとっても気持ちがいい。 アマドコロ:花先をうす緑に染めて、筒状で2センチほどの花が垂れ下がる。地下茎がオニドコロに似ていて、甘い味がするとのことでこの名が付いたとのこと。 ツクバネウツギ:新枝の枝先の白い筒状の花が落ちても、花の基部にある5枚のガク片が、羽根のような形で果実の先に残り、羽根つきのおい羽根に似ていることからこの名が付いたとのこと。
カワトンボ:金属的な輝きを見せているのはカワトンボの雌だ。羽根の先に白く小さな証拠をつける。雄は、そこを黒く染める。 カワトンボ雄:こちらが茶羽根型の雄(雌と同じ編み目羽根もいる)、羽根の先の雌雄の印は黒だ。 ニホントカゲ:鮮やかなストライプ、尾はブルーに輝くが落葉の陰に隠れて見えないのが残念。これはまだ幼体、生態になると体色は鈍ってくる。 ツチイナゴ:越冬した個体だろうか、サツキの枝で目立たないようにじっと休んでいた。 シュレーゲルアオガエル:産卵時期は土中の巣穴の中で盛んに鳴くが、姿を見せない。産卵が終わるとこのように、水辺でよく見掛ける。
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東谷津レポート その44 |
2009.4.29(水) pm12:30 山梨 晴れ 気温28,9°水温21.0° |
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「今日オオルリの鳴き声を聞いたよ」と、このフィールドでよくあう鳥好きの知人が言っていた。谷津田の廻りはもう初夏の気配が感じられるほどに緑の波が押寄せて来ている。 こうなると昆虫達が俄然元気になる。畦道や草むらは虫だらけといっても過言ではないだろう。特に甲虫、それも小さな甲虫がとりわけ元気、それもそのはず、じきに本格的な夏がきて、大きくいかつい甲虫達がハバを利かせる前に動き出せとばかりに出て来ているのだろう。そんな虫達を撮ってみた。
クロボシツツハムシ:ナナホシテントウ(レポート-41参照、ナナホシテントウは体内の血液に苦い物質が含まれていて鳥などの捕食者は嫌がって食べようとしない)の模様に擬態して、捕食者をだましているといわれる。体長6ミリほどのこの虫、雌は産んだ卵を後ろ足で受け止め、自分の糞で塗り固め地上に落とすという奇妙な習性をもっているらしい。今度であった時はそれを観てみたいものだ。 ジョウカイボン:草や花の上で、花の蜜や昆虫を食べているところをよく見掛ける。一見カミキリムシのようだが別種である。それにしてもこの個体おなかが異常に大きいが卵を持っているのかもしれない。 コメツキ:シモフリコメツキであろう。コメツキは面白い習性を持っている。仰向けにすると、パッキっと音を立て背中の筋肉を使っで勢いよく跳び起きる。体長15ミリほどの小さな虫で、草むらにいるので出会ったらやってみよう。
アカガネサルハムシ:体長7ミリほどの極小さな虫だが、名のとおり前バネが緑がかった赤銅色で、日光が当たると虹のように輝き非情に美しい。カメラのファインダーで観ていると時を忘れてしまいそうだが、現実はブドウの葉を食べる害虫なのだそうだ。 ヤマトシリアゲ:常に尻を持ち上げているところからこの名がついた。特に雄はまるでサソリのように上げている。長く突き出た口吻をもち、死んだ昆虫の体液を吸う。 ワカバグモ:体長7ミリほどのこのクモ、巣網をはらず獲物を待ち伏せする。今日もマルバウツギの花の下で、花の蜜を吸いにくる虫を待ち伏せだ。大きく手を拡げ、いくつもある単眼を駆使して見逃さないぞと言わんばかりだ。 カワヂシャ:田んぼの畦や川岸などの湿ったところに生える。直径が4ミリほどでオオイヌノフグリ(レポート-34参照)によく似た花を着ける。
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東谷津レポート その43 |
2009.4.20(月) pm12:30 山梨 曇り 気温19,9°水温21.0° |
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東谷津のヒキガエルの幼生は池底で横向きに倒れて動かなくなっていた。オタマジャクシの形になって泳げるようになるのを待っているのだ。しばらくそっとしておこう。 さて、今、カラスノエンドウが面白いぞ、そう、あのどこでも見られるカラスノエンドウがだ!!あまりにも普通過ぎて写真を1枚も撮っていなかった。可愛らしい小さな花を1枚ぐらいはと思ってファインダーを覗き込み、オートフォーカスのピントが合うと、花の脇に何かがいる。接写レンズでさらに近ずくと、何とアブラムシの尻ではないか。日本には約600種のアブラムシがいるのだそうだが、その1種を観ているのだ。このアブラムシは集団を作り、茎汁を吸っている。どの集団も茎の上の方で口吻を柔らかい茎に突き刺しているのだ。 さらに廻りを見ると天敵であるてんとう虫の幼虫が捕食に来ていた。アブラムシは逃げも隠れもせず、体をかじられてももがきもせずただなされるがままに食べられているのだ。春のアブラムシは無性生殖で、親と全く同じ複製の幼虫を(卵ではない)無数に産む、自分と同じクローンなのだ。だから、どれだけ喰われても、最後の1匹さえ残れば自分が生き延びることになる。無抵抗でもよいのであろう。 そんなところにてんとう虫の成虫が現れた。これもアブラムシを喰っている。また別のところではてんとう虫が交尾をしている。雌はおかまいなくアブラムシを食らっているが、さすがに雄は我が子孫を残すのが先と、この時ばかりは食事はおあずけだ。 おっとアブラムシ君、羽の生えたやつもいるぞ、これが有翅型というやつだ。この有翅型が移動して、他の場所にクローンを次々と産む。産まれたクローンは全て雌で、これらがまた複製をどんどん作り爆発的に増えることが出来るのだ。 こんなドラマがカラスノエンドウで繰り返されている。さあ、虫めがねを持って近くの草地に行ってみよう。もっともっと色々な昆虫が見つかるかもしれないぞ。 カラスノエンドウ:街なかの空き地や道端、草原、どこでも普通に見られる。花を撮ろうと近寄ってカメラの焦点を合わせると、花のそばにアブラムシが現れた。 近ずくと、ソラマメヒゲナガアブラムシの集団のようだ。 びっしりと茎の先を埋めつくしたアブラムシ、それを食べようとナナホシテントウ(成虫はレポート-41参照)の幼虫が頂上から顔をのぞかせた。目の前には産まれたばかりの小さな複製が茫然と立ちつくす。
ナミテントウの2紋型(黒地のはねに赤い紋が2つある)が捕食に現れた。
こちらはナミテントウの紅紋型の雌と(赤地のはねに黒の斑紋があるもの全てを紅紋型と言う)交尾を始めた。それでも雌は、おかまいなしにアブラムシを捕食している。雄の方は、自分の子孫を残す方が大事なのだろう、交尾に夢中だ。 さらに、近くの株では、ソラマメヒゲナガアブラムシの有翅型がカラスノエンドウに口吻を差込んで汁を吸っていた。これからクローンを産みだすのであろうか? 下にいるのは無翅型だ。 セリバヒエンソウ:陽のささない道端で咲き出した。葉がセリに似ていて、花がツバメが翔んでいる姿のようだとのことでこの名が付いたといわれる。中国が原産で明治に渡来したといわれるが、載っている図鑑が少ないのは何故だろう。
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東谷津レポート その42 |
2009.4.10(日) am10:30 山梨 晴れ |
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先日産卵された東谷津のため池のヒキガエルの卵塊では孵化が始まっていた。帯状の筒の一部に穴があき、そこからまだオタマジャクシの形になっていないダルマ胚の状態で浮き出るという、静かで神秘的な孵化だ。あのにぎやかなカエル合戦の産卵から16日目の孵化である。 トウキョウサンショウウオはどうかなと覗いてみると、こちらも卵塊からの脱出寸前まで成長し、卵塊の中で動きまわっているのが透けて見える。卵塊の一方が崩れてすぐにでも脱出しそうだ。
谷津田の廻りから、山間にも花が咲き出すであろうと、いつもとコースを変えてみた。案の定、山道脇でジュウニヒトエ、フデリンドウ、センボンヤリなどが咲き始めていた。 アズマヒキガエルの孵化:帯状の筒の一部に穴があき、そこからダルマ胚のままでカプセルに守られて浮き出てくる。やがてさらにカプセルが溶けて、幼生は池底に沈み、オタマの形になるまで数日間は死んだように動かない。 トウキョウサンショウウオの孵化:卵塊の中で盛んに動き出しているのが透明な卵塊の皮を透してみられる、脱出はまじかだ。脱出するやいなや幼生は、さっと泳ぎ去ってしまう。 モモイロキランソウ:谷津田レポート-40で紹介した紫色のキランソウと同種で花の色がピンク(淡紅色)バージョンだ。ここ天覧山・多峯主山周辺では見られないものと思い込んでいたが、植物の観察中に枯草の中で咲いていたのを偶然見付けた。 ジュウニヒトエ:やや明るい林の中や道端などに生える。花は淡紫色と白色のものがあり、これは白色のほうだ。花が幾重にも咲く様子からこの名がついたとのこと。
フデリンドウ:陽当たりの良い林際に咲く、小さな小さなリンドウ。長さが2センチほどの花を茎の先にいくつも付けて咲く。この咲き方からこの名がついたと言う。
センボンヤリ:陽当たりのよい林間や草地で、直径が15ミリ程の小さな花を咲かせる。千本槍と書くが、この可愛らしい花に槍とつくのは、実はこの花、秋に茎を高く伸ばしその先に開花しない閉鎖花をつける、その姿を槍にみたててこの名がついたとのこと、秋にはこの閉鎖花をレポートしようと思う。
センボンヤリの花の中心部だ。外側に一列に並んだ花びらの中に筒状花がたくさんある。
タチイヌノフグリ:オオイヌノフグリと同様に、ユーラシア、アフリカが原産で、日本では明治の中頃に気付かれたとのこと。花は直径が4ミリ程で葉の中に埋もれるように咲く。 マムシグサ:山野の木陰や草地などに生える多年草。独特の形をしているのでよく目立ち、花の色は淡緑色のものもあり地方変異が大きい。茎の模様がヘビのマムシの体色に似ているところから、このすごい名がついたとのこと。
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東谷津レポート その41 |
2009.4.9(土) am9:30 山梨 晴れ |
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花が咲き出すと虫達も動き出す。田んぼの畦道や山道の花を観ながらゆっくり注意深く歩いていると、色々な昆虫達に出くわす。花の写真を撮ろうとファインダーを覗き構図を決めていると、極小さな昆虫に気付くこともしばしばだ。
昆虫達を見つけるのは、対象を決め、その食草とか行動パターンとかを熟知してある程度狙いを絞って見つけだすのが常道であろうが、私は対象をほとんど決めず、花を目当てに遭遇することにしている。言わば徘徊形なのだ。だから虫達に遭うのは偶然なのだ。そんな見付け方なので、名前がわからないのもしばしば、家に帰って調べるのだがそれでも分からないものが出て来てしまう。今回も、2種類が不明だ。誰かおしえてくださいな!! モモブトカミキリモドキ:その名の通りももが異常に太い。体長7ミリ程でキンポウゲの花粉を食べていた。クサボケやミツバツチグリの花の中でもよく見掛ける。
ホソヒラタアブ:多くいる花に来るハナアブの中で、体長10ミリ程の小型のアブだ。こちらはミツバツチグリの花に来た。花の写真を撮ろうとファインダーを覗いていると突然視界に飛び込んで来た。 ルリマルノミハムシ:コブシの花を覗くと、雄しべに足を取られながら一心に花粉を食べていた。身の危険を感じるとピョンとノミのように跳んで逃げてしまうので細心の注意が必要だ。
ナナフシの幼体:シュンランの花にカメラの焦点を合わせると、花びらにゴミが着いているのに気付き指ではじこうとすると動くではないか。体長1センチ程のナナフシノ幼体が擬態を真似てへばりついていたのだ。ズームアップしてみると触覚が短い、ナナフシモドキの幼体であった。 ヤブキリの幼体:新芽のテッペンでお山の大将を気取ってニラミをきかせている。 ヨコズナサシガメ:虫の体液を吸う肉食のカメムシの1種。桜の大木の幹でうろうろしていた。
ハエトリグモ:切株の上から獲物を待ち構えている。徘徊形で巣を作らないこのクモは飛びかかって餌を捕まえるのだ。マミジロハエトリグモのようだ。 ナナホシテントウムシ:カラスノエンドウの葉の上で足早に動いていた。追って行くと葉伝いに上に登って行き立ち止った。アブラムシを見付けて食べだした。写真の中央にアブラムシが数匹見える。 カラスノエンドウでナナホシテントウの捕食の近くで、ゴミのような小さなものに気付いた。よく観るとクモである。ここに何をしに来たのか分からないが、じっとして動かない。ファインダーの中で目が合ってしまった。体長3ミリ程のこのクモ、名前が分からない。 スイバの写真を撮り終え、三脚を折りたたもうと手を伸ばした所に小さな虫がいた。妙な体形をしたこの昆虫、枯草の先端でこちらを見ている。思わずパチリ、すぐに逃げられてしまった。家に帰って調べたが分からない。カマキリモドキのようにも見えるが、それにしてはカマガないのだ。体長数ミリ。
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