東谷津レポート その180

2015.2.20( 山梨 10:30〜15:00  晴れ

 

このところ数日の暖かさで、アカガエルの産卵が本格的に始まった。ため池や田んぼには卵塊が多数点在している。昨日一斉に産卵を始めたアカガエルをノスリが捕えていたという。

東谷津ほとけどじょうの里の北側斜面の雑木林の一部が皆伐された。その昔、里山が維持されていた頃、雑木林はおおよそ20年ほどで、皆伐(立ち木や下草全て刈り払い裸山とする)され、木々は炭や薪などに加工されて出荷され、細い枝先は焚き付けとして囲炉裏やカマドで使われた。切られた雑木の株からは萌芽したヒコバエが成長し、やがて林を形成する。この繰り返しで雑木林が維持されていた。やがて炭や薪の需要が減り、雑木林は人の手からはなれ木々は巨木になり倒木が見られるようになった。皆伐は危険な倒木を避けるため処置だ。そして今、雑木林が形成される過程を観察するチャンスが到来したのだ、そこには新たに多様な動植物が生態を見せてくれるだろう。見届けて行こう。


北側斜面の一部が皆伐された。雑木が放置され大きく生長した木々は倒木のおそれがあるための処置だそうだ。


この通り木々は全て切り倒されるが、株元からは萌芽して新世代の雑木林を形成して行く。


セグロセキレイ:アカガエルの卵塊をカウントしていると、すぐ近くで毛づくろいを始めた。危害を加えられそうもないなと感じたのだろう。


オオムラサキの越冬幼虫:樹上の葉に産卵され、孵化した幼虫は葉が落ちる前に木を下りて枯れ葉の下で越冬する。春を待ち新芽が出る頃にまた枝先に移動する。


こちらも降り積もった落ち葉の下にいた。今成虫ということは、フユシャクガの仲間かな。


ハラダカツクネグモ:葉の裏にいた。小さくごつごつしていて一見ゴミのようだが、よく見ると腹部はイボイボで特異な体型だ。もう少し横から見てみよう・・・。(体長2ミリほど)


なるほど、腹部を垂直に立てて(ハラダカ)いるんだね。(ぶら下がっている状態で写真左側が頭部)


ホシヒメヨコバイ:葉裏にいた小さな小さな(体長3みりほど)ヨコバイ。冬でも元気いっぱいで、近付きすぎるとピョーンとジャンプする。


オオクモヘリカメムシ:葉陰で春を待つ大型カメムシ、背中の褐色の前翅が見えなかったので「アオマツムシみたいだね」と言ったくらいだ。(体長20ミリほど)

 

東谷津レポート その179

2015.2.4( 山梨 10:30〜15:30  晴れ

 

谷津に春の兆し、ため池にはやアカガエルが産卵したのだ。例年より1ヶ月も早い、勿論気の早いフライング組の仕業だが、今年は一斉産卵も早いんだろうな。卵塊カウントの準備を始めなくっちゃ。

シイ、カシ、タブノキなど常緑樹の葉裏で虫を探してみた。11枚はぐってゆくといろんな虫やクモたちに出会う事が出来た。冬の虫探しの常套手段のひとつだが、写真を撮った後はそっとしておこう。「春はもうすぐだよ」


アカガエルの卵塊:早くも産卵されたアカガエル卵塊。これで10個ほどが重なり合っている。(128日に産卵の連絡あったもの)


アオスジアゲハの蛹:さあて私は何処にいるかわかるかな。写真の中央にいるんだけどね、ではライト(LEDで熱くないよう注意して)を当てて見てみよう。


ね、蛹にはまるで葉脈みたいな筋が入っている。「葉っぱじゃないの」って、よおく見てみごらん、体を固定させる糸が張られているよね。


ムラサキシジミ:こちらはカシ(アラカシかな)の葉の間で春待ちだ。暖かい日には飛び出してまた元の場所に戻ってくることがあるそうだ。


トガリオニグモ:笹の葉陰にいた。これはまだ幼体で小さなお尻だが、成体になるとお尻はもっともっと大きくなり後端がとがってくるのだそうだ。


葉裏にはよくクモがいるが、この時期は幼体が多く同定が難しい、ほとんどが23ミリなのだがガラス細工のように美しいものが多い。ちょっと見てみよう。


なにかの脱皮殻を見ていると横を通り過ぎた。


横にいるのはダニの仲間かな、それとも甲虫かいな。仲良く冬越しだ。


チャタテムシの仲間の卵:卵は成虫の張った糸で守られて卵のまま越冬する。


葉裏の見て歩き中、近くにあった落葉樹の小枝をうろちょろしていた。ヨコバイの仲間かな、ヨコバイって成虫越冬だったけ。

 

東谷津レポート その178

2015.1.13(火) 山梨 10:30〜15:00  晴れ

 

谷津は厳冬期に入った。この時期に虫を見つけるのはまるで宝探し、立ち木のくぼみを覗いたり木々の冬芽の付根を見たり、常緑樹の葉裏を見たり、落ち葉をはぐって見たりでみつけたときの感動を求めてこの宝探しは春まで続く。

キマエアオシャク若齢幼虫:コナラの枝先の冬芽が何となく不自然、「いたぞ!!」今年も遭えた。


枝先をたぐり寄せてみる、いつもながら冬芽に巻き付いている。上側が尾部、腹部背中と胸部背面の突起が冬芽の先端のようだ。


コミミズクの幼虫:さあて何処にいるかな、ここまで狭めてもわかりづらいね。ではもっと寄ってみよう・・・。


そう上側の冬芽の横に頭部があるね。この幼虫は木のへこみにピタリと張り付く、まるで脚がないようだが意外と長い脚をもっていて、折りたたんで隠してしまえるのだ。


アカコブコブゾウムシ:小枝にしがみついて撮り易い場所にいた。お尻の方にコブが見えるね、肩の方にももう1対コブがあるのでコブコブゾウムシ、邪魔な口吻を上手く葉柄の間に差し込んでいる。


シギゾウムシの仲間:落葉樹の分岐部に陣取っての越冬かなと思いきや、体の1部に白いカビのようなものが見える。どうやら、昆虫病原菌に取り付かれたようだ。やがて死骸は白いカビに覆い尽くされるだろう。


クヌギカメムシの卵塊:コナラの幹の割れめを覗き込むと何やらゼリー状のものがみえた。クヌギカメムシの卵の塊だ。このぜりーが卵を寒さや乾燥から守り、春に孵化した幼虫の餌にもなる。


ナミテントウ:厳冬期なのに鉄製の垣根の上をふらついていた。昼の陽ざしの暖かさにつられて越冬場所から出て来たのだろう。


ジョウビタキ雄:昆虫観察のフィールドの中に縄張りを張った。「これでこの冬は安泰だね」お気に入りの見張り台で尾を振る雄に声をかけた。が・・・。


ジョウビタキ雌:今日は同じ見張り台にいるのは雌、縄張りを横取りしたようだ。(鳥の世界も)偉大なり雌。

 

東谷津レポート その177

2014.12.28(日 山梨 10:30〜15:30  晴れ

 

谷津も12月終盤にもなると、雑木林の落葉樹は葉をすっかり落とす。虫達も越冬場所を決めて動かなくなる。こうなると探し出すのは一苦労、そこで虫友の眼数に頼る事になる。さあて探してもらおうかな。

ミカドシリブトガガンボ幼虫:虫友から「ガガンボの幼虫見る!!」の声。コナラの根本に生えた苔の中に、突起だらけの鎧が見えた。全身を見てみたいと枯れ葉を注意深く取り除くと・・・。


そこにはもう1頭いるではないか。ここで苔を食べながら冬を越すのだ。脚がない彼等は動きがきわめて緩慢で、そう遠くには行けないからだ。


ウスギヌカギバ幼虫:シラカシの幼木の葉の上。吹きっさらしのこの場所で冬を越す気なのだろうか。近付くと尻を上げて得意のポーズ。後からも見てみようかな・・・。


体中に突起や剛毛、顔面までもが剛毛に覆われている。ポーズはいいから早く越冬場所を探しなさいよ。


カギバアオシャク幼虫:アラカシの冬芽に擬態して、少しずつかじりながら春を待つ。(写真中央でUの字に曲がっている)


アオオニグモ:葉を曲げて糸を天幕状に張り、ハンモックの中で冬を過ごす。


アカコブコブゾウムシ:常緑樹の葉の下に陣取った。小枝にしっかり抱きついて春が来るまでテコでも動かなそうだ。


タマバチの産卵:葉の落ちたコナラの冬芽がきらりと光った。3ミリほどの小さなハチが産卵していたのだ。冬芽の中で卵で(幼虫になるのかな)冬を越す。


モズのはやにえ:木登りヤゴ現れる。いえいえこれはモズの仕業、葉の落ちた雑木林の林縁ではこんなものも見つかるぞ。

 

東谷津レポート その176

2014.11.19 山梨 am10:00〜15:00  晴れ

 

谷津を吹き抜ける風に冷たさを感じる。ススキは綿毛をその風に飛ばし、穂は頭をもちあげてほうきが何本も立ち並んでいるようだ。そんなススキ原の中に冬鳥達がやって来て餌をついばんでいる。

赤とんぼは何処へ行ったのか。晩秋になると田んぼの周りの石の上や、丸太の上で陽光をたっぷりと浴びて日向ぼっこ、日が傾くと、西日に翅を輝かせて群れ飛ぶ姿が見られるのだが、今年は初秋から赤とんぼが非常に少なく、この谷津の風物詩が見られない、ちょっぴり寂しく秋が更けて行く。


アキアカネ(雄):アメリカセンダングサの果実の先のかぎ爪にひっかってもがいていた。捕食者に捕らえられたわけでもないので、翅が傷つかないよう慎重に外して逃がしてやった。


ナガコガネグモ(手前)とジョロウグモ(奥):こんなに近くに巣網を張っていることは真夏の最盛期にはまずあり得ない。お互いに雄の訪問がなかったようだ。なぜなら、産卵を終えた雌はとうに姿を消している。


モンキツノカメムシ:ヒサカキの未成熟の果実の汁を吸っているカメムシ。「なあんだエサキモンキだ」と撮らずにいると、『なんだかちょっと違う』の声にとりあえずシャッターを押した。


モンキツノカメムシ:見ていると葉の上にでてきた。特徴のハートのマーク・・ではない。図鑑を調べると、さらに両肩の角の大きさと胸部の背中側の色に違いがある。初見参、虫友の虫眼に脱帽。(エサキモンキツノカメムシはレポート−159参照)


ヒメカギバアオシャク(蛾)幼虫:カシの幼木「どうだ、わからねえだろう」とばかりに尾脚でがっしり体をささえて直立、枝先の小枝に擬態『うん、見事だよ』思わず答えてしまった。


ヒメカギバアオシャク(蛾)幼虫:直立不動が疲れたのか、こんな姿。横になったり直立したりでこの周りの枝先で冬を越す。


ナカキシャチホコ(蛾)幼虫:少し色づいた葉裏でぶら下がる。逆光に透けて黄緑色の腹部中央に黒ずんだ傷が見える、どうやら寄生バチに卵を産みつけられたらしい。だが、何事もなったかのように生き続け、土中にもぐって蛹で越冬、蛹からでてくるのは・・・。


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これは何の繭だろうかな。8ミリほどの小さな繭は絹糸の網に守られて冬を越すのだろう。

 

東谷津レポート その175

2014.10.19 山梨 am9:00〜15:00  晴れ

 

今日は東谷津ほとけどじょうの里での『里山バザール』の開催日だ。トラスト地のPRと里山を知り楽しんでもらおうと3回目の開催だ。

一方、周囲の草原や雑木林では冬に向けての準備も怠りなく進んでいる。そんなイモヌシ達の擬態や威嚇等で冬への生命をつなぐ処世術を覗いてみた。


里山バザール:9店舗が参加しての開催、雑木林に囲まれた秋の谷間の1日を、食べたり、食べたり買い物したりおしゃべりしたり・・・ハイカーも立ち寄っで楽しんだ。


ベニスズメ(蛾)の幼虫:草むらからタヌキが顔を出す。いえいえこれはベニスズメの幼虫を正面から撮ったもの、近付くと胸を膨らませる習性を狙ったもの。大きな眼状紋で威嚇する。


ベニスズメの幼虫:こちらは横から、威嚇派は仮想武器を持っているためかよく目立つところに平気でいる。(体長80ミリほど、蛹越冬)


モントガリバ(蛾)の中齢幼虫:このイモムシ中齢幼虫になると、この通り鳥糞擬態派になるのだそうだ。どろりとした真新しい糞のようだ。(体長25ミリはど、蛹越冬)


モントガリバ若齢幼虫:なんだか分からなかったものだが、前出と同じクサイチゴにいたもので姿形から同種と思われる。数日前の撮影なので若齢幼虫の体色であろう。終齢になるとさらに体色変化するらしい。


ホシヒメホウシャク(蛾)の幼虫:これは擬態派それとも威嚇派、あのいやな臭いのヘクシカズラを食草にして、紫色や橙褐色等もいるらしい。(体長50ミリほど、成虫越冬)


ホソバシャチホコ(蛾)の幼虫:コナラの枝先で見事な擬態、葉が部分的に枯れたところや枝の色に溶け込めるように複雑な彩りだ。(体長40ミリほど、蛹越冬)


ホソバシャチホコの幼虫:こちらは真上から、体側の一部に緑色、頭部にまで細い線が入る。


ギンシャチホコ(蛾)の幼虫:こちらも擬態派、背面の突起、色合とコナラの枝先の入り組んだ小枝や葉の間に溶け込んで、どうどうと食草を食む。(体長40ミリほど、蛹越冬)


コミスジ(蝶)の幼虫:フジ等マメ科植物の葉を独特の食べ方をする。食べ残して枯れたハギの葉片に擬態している。手前が葉片、左下が頭部、まさに擬態派。(体長25ミリほど、幼虫越冬)


コミスジの幼虫:こちらはフジの食べ残した葉脈にぶら下がって静止。枯れてしよれてひっかかっている葉のようだ。体の中央から折れ曲がる下方が尾部。

 

東谷津レポート その174

2014.10.3 山梨 am10:00〜15:00  晴れ

 

谷津のススキ原はあっという間に穂を出し、風波に揺れている。雑木林ではカケスがギャーギャーと騒がしく鳴きながらドングリを冬越しのために運び始めた。「秋だなあ」と一人言。

『グモの出のう』

雄グモの決死の覚悟での交接を受入れた母グモは、特別仕立ての糸で柔らかいベッドを作るとそこにたくさんの卵を産み落とし、優しく包み込んで卵のうを作る。やがて卵のうの中で卵から孵化した子グモで卵のうの中はぎゅうぎゅうのすし詰め状態となり、破れた(子グモ達が破るのかもしれないが)穴から外へと脱出する「出のう」だ。しばしの間子グモ達は集団となって過ごし、独立して行く。この出のうに出くわした。


子グモの出のう:このところ子グモの集合体(まどい)をよく見るが、これはその前段階で卵のうから脱出するところだ。勇気ある1匹が外に出ると「おーい、早く出ろよ外はひろいぞー」とでも言っているのかな。


ちょっと不安げに外を伺うが、まだその気になれないのか躊躇している。


中にはまだまだたくさんいるようだ。


数匹が出ると安心したのか、次々に出てくる。


親グモ:近くにいた親グモ、イオウイロハシリグモであろうか、このクモは巣網を張らず卵のうをくわえて徘徊する。いよいよ時期が来て卵のうを葉上に置き、出てくる子グモ達を見守っているのだろう。


アズチグモ:通常は花の上で獲物を待つ姿が見られるが、この個体はススキの葉裏で卵のうを守っているようだ。頭部先端の三角形の褐色の斑紋が特徴だ。


毛虫のようだ:ススキの葉裏に尾部に白い塊を付けて静止しているのは毛虫かいな、こんな毛虫見たことないが・・・。


毛虫だ:失礼して葉を返してよく見させてもらおう。なんとドクガ系の幼虫に繭が、おそらく寄生した主が毛虫の体内で成長し脱出して繭をつくり、その過程で尾端を巻き込まれたのだろう、進むことは出来ないがまだ生きていた。


ヤマハッカ:林縁に咲く、ハッカという名がつくが匂いはほとんどない、雄しべと雌しべは突き出したした下唇の中にあり、虫が通ると下唇下がって顔を出す仕掛けになっているらしい。∧

 

東谷津レポート その173

2014.9.16 山梨 am10:30〜15:30  晴れ

 

初秋の午後、樹々の葉が天を覆う雑木林の薄暗い山道、葉の間から漏れた西日が小さなクモを照らし出した。小さなクモでも奇麗な模様を持つものがいるぞとファインダーを覗くと・・・。意外な光景が展開されるところであった、その一部始終を見てみよう。主人公はアシナガサラグモだ。

『グモの交接』

網を張るクモの雄は、雌と同じように網を張り獲物を捕らえて幼体、亜成体と成長する。そして成体になると、網を張る事を止めて雌を探しに出かける。このとき雄はクモ特有の変わった行動をとる。雄の生殖器は腹部にある単なる穴で外部生殖器を持たないため、雌と交尾する事が出来ない。ではどうするどうするか、精網と呼ばれる目の細かい網を張り、そこに精子を出し、頭胸部の先にある触肢の先端部にあるスポイト状の栓子で吸い上げて蓄える。そして雄は雌の残した性フェロモン(網やしおり糸に含まれる)を頼りに亜成体の雌を探し出し、その雌の近くで、雌が脱皮して成体になるのを待つ。亜成体の雌の体には生殖口が開口していないので、成体になるまで待つのだ。いよいよ雄は注意深くゆっくりと雌に近付き、腹部中央の生殖器に栓子を挿し込み精子を移すのだ。

これがうまく行っても満足感にしたってはいられない、雌は交接相手を食べてしまう事があるからだ。


アシナガサラグモ(雌):交接を終えて静止する雌。(体長6ミリほど脚は含まない)


アシナガサラブモ(雄):交接を終えてさっと俊敏に雌からはなれる。(体長5ミリほど)


アシナガサラグモの交接行動接近:雌の巣網にたどりついた雄は機会を待ち、そっと近付く。


雌は受け入れ準備ができたようで、腹部中央に外部生殖器を見せている。(腹部後端は糸を出す糸疣)


雄は触肢を伸ばしそっと外部生殖器に触れる。受入れてくれるかを確かめているのだろう。この時は雌と雄は互いに腹側で接する。


交接が始まる。雄は右側(本体左)の触肢の先の栓子を押し込む。このとき既に雄は背側を雌に向けている。


今度は左側(本体右)の栓子を押し込んでいる。左右両方を押し込んだようだ。


左右両方の栓子を押し込むと、雄は小刻み腹部を振る。雌も呼応したかのようにゆっくりと振る。交接は終ったようで雄はさっと俊敏に雌からはなれた。


ジョロウグモの交接行動:雌の巣網で成熟を待っていた雄は雌が脱皮したことを確認し、ここぞとアタック、しかし雌はまだ亜成体への脱皮であった。未成熟の雌は『まだ早いよ!!』とばかり拒否、雄はあわてて巣網の隅へ引き返し次の脱皮を待つ。(上側の小さいのが雄、右下が雌の脱皮殻)

東谷津レポート その172

2014.9.5 山梨 am9:30〜15:30  晴れ

 

 

9月に入りここ数日の天候のためか過ごし易い日が続いたが、今日はまた真夏日に戻ったようだ。そんな谷津では、チョッキリが葉を付けたドングリの小枝を道巾いっぱいに落とし、ススキや笹の根本にはナンバンギセルが花を咲さかせ始めて秋を告げている。


ハイイロチョッキリ:山道に葉のついたドングリの小枝を散らかした犯人だ。この長い三つ目錐のような口吻で穴を開け、卵を産みつけて枝を切り落とす。そうドングリには卵が入っているのだ、踏みつけないよう気をつけよう。


ヤマオニグモ:薄暗い林床、折れ曲がった葉の陰でうずくまっていた。後脚をクロスして奇妙な姿だ。それもそのはず、右前脚を失っている。この格好でバランスを取っていたんだね。


右前脚を2本も失っている。死んでいるのかなと小枝で触れてみると、ひょこひょこと歩いたが、これで巣網は張れるのかな。


双胴の蜂現る。キク科植物の花粉を食べている2つの胴体を持つ奇妙なハチ、「そんな馬鹿な!!」。


さらに見続けると、頭が2つ現れた。


双胴の蜂はトックリバチの仲間(キアシトックリバチのようだが)、交尾を邪魔したようだ。先日巣材を運んでいるのを見た、近くにとっくり型の巣があるのかな。


シロヒトリ:草原に全身が真っ白な蛾がいた。こんな目立つところで鳥等の捕食者に見つかってしまうのに。いや大丈夫、奥の手が・・・。


シロヒトリ:この通り6本の脚の内側が真っ赤なのだ。さらに腹部の両脇にも真っ赤な斑紋がある。これを見た捕食者は『うへっ不味そ』ってな具合かな。


カマキリの捕食:前回に続きカマキリの捕食、今回はクマバチの雌、毒針を振り回されては大変とお尻から食いついた。


タテスジグンバイウンカ:カマキリの食事中、すぐ下にいた。黒い目が何とも愛らしい。じっとしていて動かないのでカマキリには見つけられなかったようだ。

東谷津レポート その171

2014.8.24 山梨 am8:30〜14:00  晴れ後薄曇り

 

谷津も立秋をすぎて秋の気配、いやいやまだ暑いぞ。今日はホタルの里の田んぼの作業日、蒸し暑さの中田んぼの周りの草刈りだ。2時間の草いきれに蒸かされての作業が終り、皆が帰ると虫見もせず1人雑木の下で涼みながらのんびりと時を過ごす。足下ではカマキリが大きな獲物を捕らえた。

そんな訳で、今回は先日記録したクモを特集しよう。


カマキリの捕食:休んでいた足下、大きな獲物を捕らえたのはオオカマキリかな、頭からむしゃむしゃと食べ始め、約1時間でたいらげた。


アカイロトリノフンダマシ(雌):『アカイロトリフン見たよ』と同時に二人からの連絡。翌日早速見に行く。教えられた場所を探すと、ススキの葉裏にてんとう虫のような姿が目に入った。


初めて見る。前側からも見たい、気付かれないよう慎重に近付く。それにしても凄い色合わせ、初見の興奮がさめると「こんな色の糞をする鳥はいるのかいな」とニタリ。


後側からも失礼して。お尻には水玉模様はいらないようだ。これでオオトリ、シロオビ(レポート167)、トリノフンダマシ(同169)に続いて4種目を見る事が出来た。


ゲホウグモの卵のう:草原から立ち上がったアズマネザサに純白の布がひっかっているような物が見える。近付いてよく見ると、まるで真綿でこさえた袋のようで仕上げにはピンク色の絹糸をちりばめたようだ。卵のう(卵を守るための袋)中央には無数の卵の固まり(卵塊)がぼんやりと見える、経過観察してみよう。(7月16日)


12日が経過、中の卵塊が黒ずんで変形している。中で孵化したようだ。(07月27日)出のう(袋から子グモが脱出)まじかかな、だが数日このままでうかつにも見逃してしまった。


幸い近くに真新しい卵のうがあった(7月26日)。こちらで観察を続け、ついに出のうして近くで「まどい」(写真左上の黒い固まり)をつくっていた。(8月13日、19日後)


「まどい」に息を吹きかけると、さっとちらばる。これが「クモの子を散らしたよう」の語源、すぐにまた固まりとなる。


別のクモのまどい:水面から伸びたヨシに産卵された卵のうから出のうしたもの。水辺でよく見られるハシリグモの仲間なのかな、この時期、クモの「まどい」はよく見かける。