東谷津レポート その170

2014.8.8 山梨 am9:30〜15:00  晴れ(時々雨)

 

暑いぞ谷津。8月に入ると谷津の草原はさらに草いきれは強く、むっとした暑さはもはや雑木林の中でも冷やされることもないようだ。それでも季節は当然のように動いているようで、ススキの葉の間からワレモコウが秋に向けてそこかしこに花を咲かせ始めている。


ワレモコウ:秋の花のイメージがあるが、実は真夏に咲き始める。小さな花が集まって花穂となって暗紅色の花を上から下に順に咲かせてゆく。早速来ていたのはマメコガネ、今谷津で一番目につく昆虫だ。


ヤブカラシ:これも真夏の花。花は早朝に開き、間もなく花びらを落としてしまい、蜜をたたえたオレンジ色の部分(花盤)を残す。この蜜をめあてに蝶等の昆虫が集まる。ここにもマネコガネが交尾中だ。


ハグロトンボの産卵:夏休み、騒がしい飯能河原の片隅で産卵を始めた。ときおり大きく翅を広げ腹先が少しづつ深く沈んでゆく、ここだけが静かに時が進む。


ショウジョウトンボ:雌と未成熟の雄は体色では見分けがつかない。これは未成熟の雄にようだ。


ショウジョウトンボ:これが成熟した雄、来成熟時代とは全く体色が変わり、得意のポーズで反り返る。


ワキグロサツマノミダマシ:夜間に網を張り、獲物がかかるのをまつ。獲物がかかろうがかるまいが朝になると網をたたみ、葉陰等でじっと夜をまつ。今年はこのクモを多く見る。


ワキグロサツマノミダマシ:この個体は卵のう(卵の固まりを包んだ袋)を守っているのかな?卵のうとしては形が違う、せっかく夜にしとめた獲物捨ててなるものかと抱えて葉隠れを決め込んだようだ。


エビイロカメムシの幼体:ススキの葉裏に枯れ葉でもくっついているように扁平な体型、背面には赤と黒の点刻列がすじ状に伸びる。


ムカデ:アオズムカデであろうか。林床の朽ち木や落ちが等の下にいるはずなのに、立ち木の目線の高さの葉裏にいた、林床も暑く登って来たのだろう。毒牙にかまれると猛烈に痛いぞ、『ふうう』気付いてよかったあ。


あなたは誰:コナラの樹液、ずいぶんと小さなカブトムシ(体長30ミリほど)の雌と思いきや、よく見ると胸部背面に縦に溝がある。いろいろ図鑑を調べてみたが記載なし、単なる変形のカブトムシの雌のようだ。

 

東谷津レポート その169

2014.7.25 山梨 am9:00〜16:00  晴れ

 

東谷津ほとけどじょうの里のシンボルフラワーの巨大なオオバギボウシが花をつけた。大きな葉の間から伸びた茎は大人の背丈にまでなり、その先に花を咲かせる。

一つ山を越えほたるの里に向かう。草原に出るとむっとした草いきれが押し寄せる。草原を渡り、田んぼの稲を揺らして暖まった風が足跡のように近付いてくるのが見える。風は雑木林で冷やされて木陰は心地よく感じる。夕方のなるとヒグラシが鳴き出す。カナカナカナは合唱となり谷津を移動して行く。まるで合唱団が歌比べをしているように谷から谷へ。


クマバチ:オオバギボウシの細長い花の蜜を吸いに来た。太っちょのクマバチは細長い花の奥にある密のところまで行けない、ならばと蜜の場所めがけて外からかじる。


ハナムグリ:アオハナムグリだろうか、こちらは名の通りオオバギボウシの花の中に強引に潜り込んで蜜をなめる。満足げに出て来たところだ。


コチャバネセセリ:こちらは行儀よく蜜を吸うために、乱暴者のクマバチやハナムグリなどが去るのを待つ。


ギンスジアオシャク:夜行性の蛾の仲間。オオバギボウシの大きな葉の上でじっと夜を待つ。


オオチャバネセセリの幼虫:アズマネザサの葉が2枚重なって筒状にまるまっている。「ふむふむ何かの幼虫の仕業だな」と覗き込む。歌舞伎役者のようにメイクした幼虫がいた。


トリノフンダマシ:オオトリノフンダマシ、シロオビトリノフンダマシに続いて今年3種目のトリノフンダマシの仲間。色合や照り加減ともこの種が一番鳥の糞風、次は突拍子もない色合のアカイロトリノフンダマシに合いたいものだ。


ヤマイモハムシ:ヤマノイモの若葉をかじっていた。瑠璃色の金属光沢の美しいハムシだが、最近あまり見かけない。


ヨツボシモンシデムシ(シデムシ科):シデムシの仲間は食肉生で動物の死骸を食べるが、この個体は花に来ていた。色合からイタドリハムシと思い込んでいたがちょっと違うようだ、調べると本種であった。種類が違っても同じような色合がいのものがいる。以下に並べてみた。


イタドリハムシ(ハムシ科):イタドリ等の葉を食べる。


オオモンキゴミムシダマシ(ゴミムシダマシ科):こちらはキノコを食べる。桜の古木に出た堅いキノコを一心に食べていた。3種を比べてみるとオレンジ色の模様が微妙に違うのが分かるが、3種とも触角に大きな違いがある。

 

東谷津レポート その168

2014.7.8 山梨 am9:30〜16:00  晴れ

 

『チィ、ツピィー』谷津にいつもとは違う野鳥の声が響き渡る、カワセミだ。ため池や田んぼを行き来するたびに鳴いている。水深の浅い田んぼで、彼等独特の嘴から水中の獲物めがけて飛び込んでゆくやり方で狩りが出来るのかいな、と見ていたが、見事にやってのけた。枝に戻った嘴にはドジョウらしきをくわえていた。数匹のドジョウとオタマを呑込むと甲高い一声を残して谷津からから消えた。


カワセミ:枝に止まり、眼下の田んぼの中の獲物を探す。清流の宝石と呼ばれる背中のコバルトブルーは見せてはくれなかった。


ルリボシカミキリ:カワセミのコバルトブルーがだめなら、こっちを見てと言わんばかりのブルーを見せつけに飛んできた。


ハラビロトンボ(雄):こちらもブルー。えっ、どこが・・・。『眉間を見てくれ、青く光ってるだろう、それと大人になったら色が変わるんだよ』。(6/23撮影)


『ほらだんだん青みがかって来ただろう』。(6/30撮影)


『これで総仕上げだ。カワセミのブルーと負けず劣らずだぜ』。


オオシオカラトンボ(雄):『おおっと、おいらもブルーだぜ』。ハラビロトンボと似ているが、眉間は輝かないが胸部まで青だ。(この辺でブルーショーは終ろう)


キマダラコウモリ:葉先にぶら下がる姿はまるでコウモリ。これはチョウ目コウモリガ科の蛾である。頭部は何処かな、近付いて見ようか・・・。


まったく奇妙な止まり方だ。口は退化してなにも食べない、そのためか頭部は極端に小さい。


ゴミグモの旅立ち:以前近くで雄を見た。通常クモの雄は雌に比べて極端に小さいが、この雄は雌と同等の大きさがある。その交接が見たいものだと谷津にくるたびにこの雌の巣を覗いていた。今日、孵化した子グモが母親の脇をはなれて行った。交接を終え産卵していたのだ。(中央にまわりのゴミに完璧に擬態した雌がいる)


ゴミグモの子グモ:孵化した子グモは「まどい」を作らず、独立して行くようだ。(1ミリほど)


ゴミグモの雄:以前みた雄、雌同等の大きさだ。写真下が頭部。(5/22撮影)

 

東谷津レポート その167

2014.6.30 山梨 am8:30〜14:30  晴れ時々曇り

 

梅雨のせいか天気が定まらない。今日は晴れ間がありそうなので谷津行きとした。谷津の草原は昨日の雨でたっぷりと湿って緑が初々しい。昆虫達も生き生きしているようだ。


オオウラギンスジヒョウモン:この谷津では一番よく見られる。ようやく咲き始めたオカトラノオの蜜を吸いに4頭が来ていた。


オオヒラタシデムシの幼虫:いつもの地面は水浸しなので葉の上に移動したのかな。アリがやって来てご挨拶のようだが、触角に触れた途端さっと逃げて行った。


キシタバ(蛾)の幼虫:灰色地に黒のピンストライプ、黄色の部分も配色されて美しい。フジ蔓の先端付近に静止する。


アシベニカギバ(蛾)の幼虫:ぬれたガマズミの葉の上にいたのはタツノオトシゴかなと間違えそうな色と体型、頭胸部と腹部後端を持ち上げる特異のポーヅで静止する。(体長30ミリほど)


シャチホコガの幼虫:なんだか奇妙な形のものがぶら下がっているよと虫友。よく見ると頭胸部と腹部後半部を背中側に大きく反り返らせている。これが静止時のポーズだ。長いはずの胸脚は折りたたんでいるようなので、ちょっとだけ出して見させてもらおうか・・・。


柔らかい枝先で触ってみると、ニョキニョキっと胸脚を出した。なるほど、これが図鑑でよく見る絵だね。


チュウガタコガネグモ:林縁の草間に垂直の円網を張り、その中央にでんとおさまっている。堂々としているように見えるが、足音等のちょっとした振動でも糸をつたって身を隠すので、近付くのは注意が必要だ。


オオトリノフンダマシ:梅雨時に大きく伸びたススキ等の葉裏で、陽の当たる間中鳥の糞に擬態してじっとして夜を待つトリノフンダマシの仲間。


シロオビトリノフンダマシ:こちらは別の鳥の糞にみせている。まだまだいるトリノフンダマシの仲間、今年はどれだけみられるかな。


子クモの出のう:まさに今出のう(卵が入った袋の中で孵化した子グモが袋から脱出する)を始めたところだ。この後、脱出した子グモ達は集結し『まどい』を作って生活し、やがて独立する。近くにいるのは母親かな。また、すぐ横には他種の卵のうらしきも見えるが、こちらも出のうしたらどうなってしまうのだろうか。

東谷津レポート その166

2014.6.14(土) 山梨 am7:00〜16:00 晴

 

梅雨に入り、長く居座った低気圧もようやく太平洋に抜けた。早速谷津に行く。陽光を待ちわびたチョウ達が草や木の葉の上で体を暖めている姿が見られるはずだと急ぐ。だが、今日はそうしたチョウ達には出会えず、また、この時期の谷津は花もなく、待っていてもチョウ達は現れないだろう。それでは、久し振りにに谷津の奥まで行ってみよう。細い流れに沿った谷底の道を奥へ奥へと吸い込まれるように進む。やがて道は大きく湾曲し、植林された木々の樹間にはシダ等の下草に消され幻想的な雰囲気を醸し出していた。最奥地の山懐にまで来たようだ。


ヤマサナエ(雄):林縁の細い流れの草の葉上で休む。近くには雌らしきもいたが交尾には至らなかった。このトンボは健全な細流の指標種なのだそうだ。


アカガネサルハムシ:林縁のコナラの幼木にいた。緑と赤の金属光沢のある美しい甲虫だが、ブドウの葉を食べる害虫とのこと。


アオハムシダマシ:こちらも林縁にいた金属光沢の美しい甲虫。


マエグロハネナガウンカ:陽当りのよい場所にいるときは葉の裏にぶら下がっているのでわからなかったが、自慢の長い翅は正面を向いているんだ。植林地の林床の下草の葉の上にいたのでよく観察できた。では横に廻ってみようかな・・・。


長く幅の広い翅を動かすのにふさわしく、前胸背部には筋肉が盛り上がり翅はがっちりと取り付いている。この翅をどのように動かして飛ぶのだろうか興味がわいてきた。


オサムシの仲間:同行した虫友がじめっとした林床の枯れ葉を指差し「焦点をここに合わせて」とのこと、そっと慎重に枯れ葉を取り除くと、逃げ足の速い虫もこの通りじっとして動かない。


ゴミムシの交尾:オサムシの近くの枯れ葉の影で交尾しているのはスジアオゴミムシだろうか。夜行性のはずだが、子孫を残すためにはそんなことは言っていられないというところか。


ムネクリイロボタル:林床の葉の上でじっと夜を待っているのだろう。この虫も蛍の名の通り、腹部に発光器があり、弱いが光るのだそうだ。


オオトラフコガネ(雄):通常は山地の花に集まるが、まるで花のない植林地の林床にいた。


カメムシの仲間の卵:暗く湿った林床の葉裏に産んであった真珠のような乳白色の卵、カメムシ類の卵であろうか、クサカゲロウの仲間の幼虫が嗅ぎ付けて来ていたが、まだかじってはいないようだ。

東谷津レポート その165

2014.5.31(土) 山梨 am8:3016:00  晴

 

谷津は初夏のように暑い。この頃になると野鳥の囀りもまばらにしか聞こえてこなくなる。カップルが成立し子育てになるからだろう。草原の虫達もぐっと増えて来て、野鳥達は幼鳥の餌捕りに忙しいのだ(相変わらず何処でもいつでも遠慮なく大きな声で鳴くガビチョウを除いてわの事だが)。田んぼの周りではシュレーゲルアオガエルも恋歌を歌うのをやめて恋の季節が終った。さて、街の暑さも和らいだろうから雑木林の居酒屋に寄って帰ろうかな。


サトキマダラヒカゲ:この時期には樹液場で一番数の多いチョウ。ぱっ、ぱっ、ぱっと樹幹を俊敏に動く。


サトキマダラヒカゲ:樹液場に近付いて写真を撮っていると、三脚を調整している指がなんだかこそばゆい。口吻を伸ばして指先を吸い始めた。(昼は何を喰ったっけ・・・)


アカボシゴマダラ(春型):夏型になると後翅の外f縁に赤い点(アカボシ)が連なるが、春型にはそれが無い。翅が逆光に透けて翅表の模様も浮き出て見える。


アカボシゴマダラ(春型):なかなか翅を開いてくれないが、このように樹液を吸っている時は独占しようと近付くものに威嚇で広げる。この個体は後翅にほんの少し赤みが差している。


クロヒカゲ:雑木林のコナラやクヌギ等の樹液によく来ているが、花には来ない。


マダラアシゾウムシ:樹液の好きなゾウムシ。鎧のようなごつごつした体、渋い色調、おまけに脚には迷彩模様がペイントされて、まるで重戦車のようだ。いつみてもかっこよくて見入ってしまう。


雑木林の重戦車も体のでかい暴れん坊のスズメバチには負けてしまうようだ。近付いて来て大顎でくわえてほおり投げられてしまった。(マダラシゾウムシは2匹いる)


ガビチョウ:樹液場のすぐ脇に来て大声を張り上げだした。何処でもかまわず、時間も気にせずがなり立てる。クレオパトラのようなアイシャドウ、昆虫から木の実まで食べて勢力範囲を広げている。(南アジア・中国原産の特定外来種)


ルリタテハの幼虫:体中に生えた刺はさらに分岐していてものものしい。いかにも痛そうだが、ガビチョウはこれでも食べられるのかな。サルトリイバラの葉を食べてどんどん成長し、体色はもっと派手になる。


イチモンジチョウの幼虫:薄暗い林床のウグイスカグラの葉の上でもう10日もこうしている。こちらも凄い刺をはやしているので、棒切れでちょっと触れてみた。ウワッ、ぐにゃっと動いた。

 

東谷津レポート その164

2014.5.9(金) 山梨 pm12:3017:30  晴一時荒天

 

5月も中旬にもなると、雑木林の落葉樹は葉が緑色濃く重なり合って陽を遮り、林床まで届く陽光は所々に点在するだけとなる。せっかく芽を出したドングリも成長を止められてしまう。大木は大きく枝を広げ陽光をたっぷり浴びて活気づき、幹に樹液を出して昆虫達のオアシスとなる。


カノコマルハキバガ:前翅の前半分を黄金色に輝かせるが後半分はまるで枯れ木のような色合だ。都合良く何かに擬態してるつもりなのかな。


コハナグモ:巣網は張らず葉や花の上や下側面等で吸蜜に来る昆虫を待ち伏せする。この個体は、花粉に来た獲物に背後から飛びかかれるよう絶好な位置に陣取った。


ヒロバトガリエダシャクの幼虫:ハギの若葉の中に居た。顔面には何やら模様があるらしい、見てみようか・・・・。


これがその顔面、海賊の旗印の骸骨のようだ。それともパンダ、いやいやヒロバトガリエダシャクの顔面である。


ムモンアシナガバチ:冬眠から目覚めた女王蜂が巣作りを始めた。女王は単独で巣作りし、産卵して仲間を増やし、巣をどんどん大きくして行く。


ヨツボシケシキスイ:コナラの樹液のしみ出し口に群がって頭を突っ込む。樹液が出始めると真っ先に来て、スズメバチやカブトムシ、クワガタ等の強力な虫が現れる前にまず一杯だ。


ヨツボシオオキスイ:前出のヨツボシケシキスイの数に圧倒されてか、彼等の周りでうろうろしていた。スキあらば潜り込もうという作戦のようだ。


ホシアシナガヤセバエ:こちらも樹液を狙う。スッ、スッとせわしなく動いてちょっとなめてはサッっとひくヒットアンドアウェイ戦法だ。


ウスモンヒロバカゲロウ:帰り道河原の桜の幹で大きな翅を風にゆらせて夕日に照らされていた。翅の斑紋や黄色い頭部で本種と思うが類似種のウスモンヒロバカゲロウかもしれない。色鮮やかな頭部を見てみようか・・・。


これが頭部、大きな目玉の間の眉間に褐色の斑紋らしきものがありそうだ、やはりウンモンヒロバカゲロウなのだろう。

 

東谷津レポート その163

2014.4.25(金) 山梨 am11:3017:00  晴

 

谷津の雑木林は落葉樹も常緑樹も一斉に新芽を芽吹かせて山一面が萌黄色に染められ、あっという間に淡い緑色に変わった。これから日一日と色を濃くして行く。雑木林は暑くもなく寒くもなく、葉の間から陽が射し込み、淡い緑に囲まれて一番気持ちのいい季節を迎えている。遠くでキビタキの美しい囀り、夏鳥が来始めたのだ、そんな雑木林で若葉の中を覗いてみた。


ハナイカダ:葉の中央に花を咲かせる。雄株と雌株があり、これは雄株、つまり花粉を飛ばし実はつけない。花の下にいるのはムネビロアカハネムシのようだ。花粉を食べに来たらしく、触角に花粉をつけて彼等も花粉を雌花まで運んでくれる。


ツマグロオオヨコバイ:多種の植物でよく見かける。人影が近付くと横にはって実を隠す。(体長13ミリほど)


クロヒラタヨコバイ:こちらはヨコバイとはいえ前種のように横ばいはしない。黒くずんぐりでこぼこしててつやがあり、脚をたたんでいるところは他の虫の糞に擬態しているのかもしれない。どうやらお尻には白い模様まであるようだ。ではお尻を見せてもらおうか。(体長6ミリほど)


こちらがお尻、失礼、翅の後端だ。腕のよい職人が手掛けたろうけつ染めのようだね。


コミミズク:若葉の成長とともに脱皮して成虫になった。カモノハシのような頭部は幼虫時代(レポート−161)と変わらない。やがてこの場所から離れて行く。


シロジマエダシャクの幼虫:黒い横縞と淡い黄色の縁取り、常緑樹の深緑の葉の色にマッチして何とも美しいではないか。頭部は上側だが頭は見えない、白い点はゴミ。イモムシ系で背景とマッチして美しいと見とれてしまったのはシダの上に留るマダラツマキリヨトウ(レポート−135)以来だ。では頭を覗いてみよう。


これが頭部、上には擬目のような模様まである。


クヌギの樹幹に目を移すとクレバスの底に赤い小さな点が見えた。カメラでクローズアップしてみると、クモの頭部にダニが2匹も寄生ていた。うっとうしいだろうなあ。


夕刻雑木林から出てくると、西に傾いた陽だまりにシオヤトンボとルリタテハが仲良く日向ぼっこ。陽が傾くまで谷津にいるとこんな光景にも出会う。そうだトンボも出始めたぞ。

 

東谷津レポート その162

2014.4.2(水) 山梨 pm12:3016:30  晴

 

暖かい日が続き谷津の田んぼではアカガエルの卵がオタマジャクシに変態し、今度はシュレーゲルアオガエルが恋歌を歌い始めた。雑木林の木々も新芽を大きくふくらせて春はそこまでやって来ている。

『目覚めた越冬蝶と遊ぶ』

まだ冬枯れ色の雑木林を歩く。目の前に降り立ったのはヒオドシチョウ、気温が低いと翅を目一杯広げてポーズしてくれるのだが、気温が高いとなかなか開いてはくれない。そんな蝶の翅を開かせる方法を見つけたぞ。それは、舞い降りた個体の翅広げをじっと待っていたときのこと、木の影が蝶に掛かった時だ、蝶は翅を広げ少しして飛去った。『もしや』蝶は翅を開かなくても活動できる気温では、留ったところが日陰になると低体温化を恐れて陽を受けようと反射的に翅を広げるのでは?早速試してみる。そっと近付いて帽子で影にした。すると、『ひらいたあ』同行の虫友と何度か試す。開く、そして飛び去るを繰り返した。さてこれは他の個体にも有効な・・・。


ウグイスカグラ:枯れ葉色の雑木林の中で、春いち早く花をつける落葉低木。この花が咲くと春はもうすぐそこまで来ていて、雑木林が活気づいてくることを知らせてくれる。


ヒオドシチョウ:成虫で越冬を終え雑木林を跳び廻る。気温が低い時は翅を広げて陽を浴びるが、気温が高い時はこのように閉じたままなかなか開いてくれない。


ヒオドシチョウ:そっと近付き帽子で陽を遮ると、この通り開いてくれた。左は帽子の影、帽子を引いて少しの時間がシャッターチャンス。


クヌギカメムシの幼虫:卵塊を経過観察していたもの。孵化して数日のもの、孵化の瞬間は見逃してしまった。母親の用意してくれたゼリー状の離乳食を食べている。3齢になって食べ尽すと個々に分散独立して行く。


クヌギカメムシの卵塊:コナラの樹皮のクレバスの中に産みつけてああった。ゼリー状の物体の中のつぶつぶが卵、このゼリーが寒さや乾燥から卵を守り、さらには若齢幼虫の餌になる。(3/15撮影)


シラホシコヤガの幼虫:コケを厚く綴り3対の瘤までつくったかぶり物をまとってコナラの樹皮のクレバスに潜んでいる。本体はシャクトリムシ型で半透明で緑色なのだそうだ。


フクラスズメ:コナラも水を吸い上げ芽吹きの準備を始め樹液(白色のもの)を出し始めると、早速、越冬から目覚めたフクラスズメが嗅ぎ付けてきて赤い口吻を伸ばし一心不乱に吸っていた。


常緑の葉をハーフループ状に曲げ天井には絹布のような細かな糸を張った巣を覗き込むと、奇麗な緑色のクモがこちらを見ていた。ワカバグモかな、でもワカバグモはこんな巣をつくたっけ???


イトヒキミジンアリタケ:コナラの幹に張り付いていたアリの頭部から突き出た冬虫夏草の1種。中間の黒い丸い玉はには種(胞子)が入っているのだそうだ。


クローズアップしてみると冬虫夏草はアリの胸部先端から突き出ているようだ。屍は養分を吸われ腹部がべこべこになっている。アリはムネアカオオアリのようだ。

 

東谷津レポート その161

2014.3.12(水) 山梨 am10:3016:00 晴

 

今日は谷津の気温もグーンと上がった。これを待ってましたと真っ先に現れ、冬枯れ色一色の草原に彩りを添えるのは成虫で越冬したチョウ達だ。早速目の前に現れたのはルリタテハ、暖かい日がます毎にアカタテハ、キタテハ、テングチョウ、ヒオドシチョウ等も続いて、さらに彩りもましてくる。一時騒がしかったアカガエルの産卵騒動も終わり、小鳥達は恋歌を歌い始め、虫達も動きだす。


ルリタテハ:目の前に現れたまるで羽化したばかりのように初々しい個体だ。成虫で越冬するが、昨年遅くに羽化し越冬たものだろう。


陽を浴びて暖まっている間に横に廻ってみた。暖まった丸太にぺたりとくっついているものと思っていたが、効率よく陽を受けるためなのか太陽に向けて角度を調整しているようだ。


翅を閉じたり開いたりを繰り返し飛去った。


近くにいたこの個体はボロボロの翅をしている、秋も早くに羽化し、飛び廻った後で越冬したのだろうが、厳しい冬を乗り越えてまだまだというところかりんとした立ち姿だ。


コミミズクの幼虫:「変な虫だか卵だかがいるよぺたっとしてるの、見る?」変な虫と言われれば見ないわけにわゆかない。思った通り小ミミズクの幼虫であった。さてどちらが頭かわかるかな・・・。


幸い細いところにいる、角度を変えてみてみよう。脚がちょこっと見えているね。そう左側が頭部だ。頭の先はヘラのようになっていて木のくぼみ等に張り付くと分からなくなる仕掛けなのだ。


コミミズクの幼虫の近くにいたシャクトリムシの仲間、成虫が何なのか全く分からない。尺取り歩きで動き出した。


ツヤアオカメムシ:長い丸太の上をちょろちょろと移動中、暖かさに誘われてあてもなく動き出したようだ。


カワゲラの仲間かな、この時期に成虫でいるのはクロカワゲラだけなのだそうなので本種であろう。翅を持たない個体もいて雪の上を歩いており「雪虫」とも呼ばれているらしい。