東谷津レポート その130

2012.9.1(土) 山梨 am10:00〜15:30 曇り、雨、晴また雨

 

昨日までの谷津の蒸しかえる暑さも今日は嘘のように涼しいが一時的なものらしい。暑さはまだまだ続くのだそうだ。その暑さにも負けじと、ワレモコウ、ムカゴニンジン、ツリガネニンジンやナンバンギセルなど秋の花が咲き始め、樹上ではチョッキリが産卵後のドングリを枝ごと落とし始めて秋の気配が見え(感じるなんて表現はとてもとても)だした。

 
『大きすぎた獲物−2』
 数日前のこと。あまりの暑さの中、ため池の脇の林床で涼をとる。(キュ〜ウ、キュ〜ウ)ぼーっとして田んぼを眺めていると、『キュ〜ウ、キュウ』何かが鳴いている。そういえば、先ほどからこの音は耳に入っていたのだが、なぜか気に留めなかった。『キュウウウ』小さな鳴き声だが確かに聞こえる。何かほ乳類の生まれたばかりの赤ちゃんのようだ、こうなると俄然興味がわいてきて何なのか確かめたくなり、林の奥のほうに耳を傾けながら数歩進むと、足下の落葉や枯れ枝のなかを動く音がして動く物が見えた。赤と黒の格子柄「ヘビだ!!」ヤマカガシの胴体体の一部が見えた。胴体から頭のほうに目でたどって行く、大きなヒキガエルが左足を飲込まれて『キュウウウ』と声をだした、ヒキガエルの断末魔の声だったのだ。(ヒキガエルは通常は鳴かない、産卵時の合戦でグウウグウウと低い声を出すだけだ)ヘビは近付く私に危険を感じたのだろう、大きなヒキガエルを引きずってずるずると後退しブッシュに消えた。また大きな獲物の食事作法の一部始終を見逃してしまった。

 


ムカゴニンジン:湿地や水中に生える多年草。ムカゴ(珠芽)ができ、白くて太い根が朝鮮人参に似ているところからこの名がついたのだそうだ。花の一つは直径が5ミリほどと小さいが、花蜜があるようでハナアブやハナバチが吸蜜に来ていた。
 

ハイイロチョッキリ:この時期山道に小枝をつけたドングリがたくさん落ちているのを見かける。この虫がドングリを枝ごと落とす犯人だ。この長い口吻でドングリに穴をあけ卵を産みつける。産卵が終わると少し移動して小枝ごと切り落とす。
 

オダカグモ(雌):シラカシの葉裏にいたお腹を大きく突き出したクモ。本州南岸線を北限としていたが、温暖化の影響なのか北上しているのだそうだ。(体長4ミリほど)
 

サツマノミダマシ:通常昼間は脚を折りたたみ(前側の4本の脚は立ち膝をしている)葉裏でじっとしているが、この個体は前に突き出してなんだかだらしがない。よく見ると何かを抱えて食べているようだ。(体長10ミリほど、昼間も狩りをするのだろうか)
 

コガタコガネグモ(雌):巣網にかくれ帯をつけその中央で脚をそろえて獲物が網にかかるのを待つ。腹部の模様が美しいクモだ。(体長8ミリほど)
 

ジョロウグモの幼体(雌):ナガコガネグモとならび谷津で最もよく見られるクモだが、これはその幼体。腹部横腹のサイケな模様が印象的だが、この模様も成体になると大きく変わる。(体長10ミリほどだが成虫になると30ミリほどになる)
 

ヤマカガシ−1胴体:ざっ、ざっっと間をあけてブッシュの中で物音がする。かすかに見えたのは赤と黒の格子模様、『ヤマカガシだ!!』(注、この後の2枚の写真はショックかもしれません)
 

ヤマカガシ−2捕食:胴体から頭部へと目を移すと、口を大きく開き大きな獲物に食らいついていた。
 

ヤマカガシ−3捕食:ヒキガエルは目をとろんとさせて『キュウウ』と小さな声をあげた。ヘビの毒が効いてきたのだろうか、やがて声もでなくなり引きずられていった。自然の摂理である。(ヤマカガシは奥歯に毒腺があるとのこと、毒蛇だ)

 

東谷津レポート その129

2012.8.19(日) 山梨 am9:30〜15:30 晴

 

谷津の草原は陽光がじりじりと照付け、草いきれとやらでむっとしてじっとしていても汗が背中を流れ落ちてくる。この陽光をたっぷりと吸収して、田んぼの稲は生長し稲穂をつけ始めた。

『大きすぎた獲物』
 雑木林から草原に変わる林縁に来ると何やら小刻みな羽音が聞こえてきた。人に気付いて逃げ出すときの遠ざかる羽音ではない。尋常ではない羽音は同じところから長く続く。これはカマキリがセミでも捕らえたのかなと、音のするほうに分け入って行くと、若いカマキリが自分より大きなセミを捕らえて『これどうしたらいいんだ』と自分で捕らえた獲物を持て余していた。
 

大きく成長した稲:あえて1本苗で植え終えた田んぼはいかにも頼りなさそうであったが、3ヶ月近く経過した今は株も大きく成長し稲穂もつけ始めて、見栄えのある田んぼになってきた。
 


カマキリの捕食−1:まだ翅が生えていないオカマキリの幼体(あと1回脱皮すれば成虫となるであろう)が大きな獲物を捕らえた。逃れようと暴れまわる獲物を必死に押さえようとしているが、『わわわ、どどうすりいいんだ!!』獲物は大きすぎたようで上体を大きく振られ持て余している。
 


カマキリの捕食−2:捕らえた獲物はヒグラシの雌のようだ(捕らえられたときに断末魔の叫び声がしなかった)。獲物は翅を押さえられ静かになったが、今度は足でずるずるとカマキリを引きずる。カマキリはこちらをちらりと見て『何見てんだよ、暇なら手伝えよ』とでも言ったのかな。
 


カマキリの捕食−3:一向に衰えない獲物、せっかく捕らえた獲物は逃したくない。『ええい、かじちゃえ』ひきずられながらもお尻に噛みついた。
 


カマキリの捕食−4:獲物はお尻を半分ほどかじられていながらも動きまわり、とうとう両者は葉陰に消えた。
 


ノシメトンボ(雄):今年初見の赤とんぼ(アカネ属)の1種。赤とんぼとはいっても、このトンボは暗い赤褐色になる程度で赤くは染まらない。
 


ハラビロトンボ(雄):平べったい腹部からこの名がついたとのことだが、もう一つの特徴である複眼の間が光るところが撮れなくで残念。
 


オナガサナエ(雄):草原から雑木林にかかる斜面に垂直に立てられた棒の先にいた。後方からしか撮れなかったが、それが幸いして、このトンボの名の由来である長大な尾部付属器を見せてくれた。
 


アオカナブン:うす暗い雑木林のクヌギの樹液を一心にを吸う。オオムラサキが場所を横取りしようとお尻をつっつくが動かない。ときおり風が枝葉を動かし陽が差し込むとすとスポットラオトが当たったように緑色に輝く。しばらく待ったが、顔を見せてはくれなかった。

 

東谷津レポート その128

2012.8.11(土) 山梨 am8:30〜12:30 晴

 

今日は月例のモニ1000植生調査だ。植生調査とは言っても、私は植物には詳しくないのでもっぱら目となって探す役目となり、野草のつぼみ、花、種を探しては『これなんですかあ』と告げるのです。すると『それはオトギリソウ、弟が家系の秘密を他人に話しちゃったので、兄に斬られ血しぶきが・・・・』名前の由来なども解説されたり、『う〜ん、どっちかなあ』近似種には図鑑を持ち出して同定し記録する。こんなんで調査は固定されたコースをゆっくり進んで行く。花には昆虫がつきものですから、『これなあに〜い、奇麗な虫がいるよ〜』で今度は虫談義、またここで道草。普通に歩けば20分ほどのコース、3時間半もかかってようやくゴール。
 

ミズタマソウ:とげのはえた美しい玉状の実をつける。咲き始めた花に早速ハエの仲間が結実の手助けに呼び寄せられたようだ。
 


ベニシジミ:花期の長いヒメジョオンの花に来ていた。このチョウも春先から見られるが、今見られるのは夏型で、春先に見られる春型よりも翅表が黒っぽくなっているのだそうだ。
 


サトキマダラヒカゲ:雑木林のクヌギの樹液に来ていた。カナブンなどの先客との場所取りは、パッ、パッと機敏に動く。
 


オオムラサキ(雌):こちらも樹液に来ていた。こちらの場所取りは、翅を開いたり閉じたりして強引に割り込んで口吻を差し込む。
 


シロオビアワフキ:今年はアワフキムシの幼虫の泡巣を見かけなかった。やっと出会った泡巣に思わず触れてしまった。中にいたのは羽化したばかりの成虫であった。成虫は泡巣を必要としないので、巣の修復はせずやがて出て行く。
 


コガシラアワフキ:これも幼虫が泡巣をつくる。頭部が小さいところからこの名がついたのだそうだが、こんな顔の大型犬がいたような・・・。
 


トウキョウヒメハンミョウ:林縁の葉上に何かいる。あの姿に似ている『動かないでくれ』近付くとやはり、久々に出会った小型(体長10ミリほど)のハンミョウの仲間だ。
 


タマムシ−1:サクラの幹を歩き廻っていた。どうやら産卵場所を探している雌のようだ。
 


タマムシ−2:適当な産卵場所が見つからないのか、ついには木から降りて土の上を歩き廻る。
 


タマムシ−3:ついに気に入った場所が見つかったようだ。産卵管をうろの割れ目に差し込んで産卵したようだ。タマムシといえば「エノキ」とばかり思っていたがサクラの木とは、それも枯れ木ではない生木なのだ。

 

東谷津レポート その127

2012.8.5(日) 山梨 am10:30〜14:00 晴

 

東京電力福島第一原発の事故で放射能被害にさらされているこども達に少しでも、放射線量の低い場所で外遊びや川遊びなどをして、保養してもらいたいと思う東京都練馬区民が集まって『福島こども保養プロジェクト@練馬』を立ち上げ、昨年度の秩父でのサマーキャンプに続き、"飯能サマーキャンプ2012"が企画された。てんたの会はこれに賛同し、東谷津ほとけどじょうの里で、石窯でのピザつくりを体験、谷津での自然遊び体験を一緒に楽しくしていただこうと企画、20名の親子と受け入れスタッフ、てんたの会のスタッフ総勢50名余でにぎやかな半日を過ごしていただいた。
 

ピザつくり:午前11時頃からピザ作りが始まると、参加者全員がめいめいにあれやこれやとトッピング、オリジナルのピザを作った。
 


自然の中でのお遊び:午後はため池の周りで、捕虫網を片手にトンボを追いかけたり、池の中からエビやドジョウ、ヤゴ捕りなに熱中。さて成果は・・・。
 


ホトケドジョウ:水路で子供達がすくったものだ。体長3センチほどと、なかなかの大物。子供達はかわるがわる触れてみる。
 


ヌカエビ:網の中に入ってきた体長15ミリほどの小さなエビ、このエビが生息できるのは水がきれいな証拠だよと説明する。
 


ヒラタシデムシ:足下をはっていたのは小動物の死体やふんを食べる森の掃除屋さんだ。オオヒラタシデムシかもしれない、この虫に触れた後は手を洗いましょう。
 


キボシカミキリ:クワの木の葉を食べていた。長い触角に黄色の斑紋でなかなか美しいカミキリムシ。このカミキリは気が強く不用意に捕まえると指をかまれるので注意しようね。
 


アカホシゴマダラ:雑木林のコナラの樹液に来ていた。カナブンやコガネムシなどと場所の取り合いだ。おおっと、近くにはスズメバチなどがきていろことがあるので注意しようね。

 

東谷津レポート その126

2012.7.29(日) 山梨 am8:00〜13:00 晴

 

雨乞い池に行ってみた。目的は小さなトンボ『モノサシトンボ』の写真撮影だ。雄、雌、交尾、産卵までの一連のシーンが撮りたいとの一心で蒸し暑い山道を登って行く。途中には夏草のギボウシやヤブミョウガ、ヤブガラシ、アキノタムラソウなどがは花を咲かせ昆虫達を誘っていた。

『モノサシトンボ』(モノサシトンボ科、体長40ミリほど、平地、低山地の樹木に囲まれた池沼に発生する。)
瑠璃色の美しい小さなトンボ。ヒノキやスギ、雑木に囲まれた池につくと樹間を渡る風が心地良い。早速、池に張り出した葉上を探すと、すぐに雄の個体が目に入ってきた。まず撮る。一息入れて周囲に目をやると、あちらこちらに雌待ちの雄が葉上に静止している。アングルの良いところにいる個体を見付けファインダーを覗いていると、長い陰が横切った。雌雄の連結体だ。追いかけてゆくと連結したまま葉上に静止し、トンボ独特の交尾儀式を始める。無心でシャッターを切っていると、何時しか玄人はだしのトンボ屋さん、僕の行動を見ていたらしく『モノサシですか、このトンボを狙ってくるなんて珍しいですね』。ヤブヤンマの産卵シーンを撮りにきたとのこと、どうやらモノサシなんぞを狙って来た私は"珍しい人"らしい。
 

モノサシトンボ−1雄:水面に張り出した葉上で雌を待つ雄。黒っぽく長い胴体に転々と青い斑紋、これが物差しに見えるところからこの名がついたとのこと。
 


モノサシトンボ−2顔面:これは雄の顔面、雌を待つ雄は不用意に行かなければ、この通り近付くことが出来る。顔面の左右の大きな複眼と、顔面中央の黒斑のなかに3っつの小さな単眼が確認できる。
 


モノサシトンボ−3雄幼体:この個体はまだ体色がのってきてない未成熟のようだ。
 


モノサシトンボ−4雌:静止している雌を見つけた。あちらこちらに交尾チャンスを狙っている雄がいるのに単独でいた。まだ未成熟なのだろう。
 


モノサシトンボ−5雌雄連結体:連結したままで飛行しているペアを見つけた。水面から離れた葉上に静止したところをみると、交尾前のペアであろう。
 


モノサシトンボ−6移精:葉上に静止して数分後、雄は(上側)尾部を雌をつかまえたままゆっくりと腹部に近付ける。移精だ。(トンボの雄は生殖細胞を尾端から胴体下部にある副性器に移す、雌は尾端を雄の副性器に接合して生殖細胞を体内に取り込み交尾を完結する)
 


モノサシトンボ−7交尾前:雄が移精を終えると、今度は雌が尾端をゆっくりと雄の副性器に近づける。雄も尾部を少し曲げて雌の接合を手助けする。
 


モノサシトンボ−8交尾:雌の尾端が雄の副性器に接合され交尾が成立した。このハート体位のまま静止し、雌の体内に生殖細胞が取り込まれると、また雌は尾端を雄の副性器からはなし、連結体系に戻り産卵場所を探しに飛び立つ。そして連結体のまま産卵にはいるのだが、そのシーンは撮れずお預けとなってしまった。
 


ヤブミョウガ:林床で咲き始めた花に、早速マメコガネが花粉を食べにきていた。
 


オオバギボウシの花上争い:もう花が終わりに近い花茎の最上部で花粉の取りっこをしていた、アオハナムグリとアカハナカミキリ。
 

 

東谷津レポート その125

2012.7.15(日) 山梨 am9:00〜12:00 曇り時々小雨

 

てんたの会、さいたま緑のトラスト協会他共催の『虫むし探検隊』の日だ。参加者27名(うち付添い大人12名)が朝9時郷土館前に集まり、昆虫の生立ちや、観察時の注意点などの説明(子供達は早く出かけたくてうづうづ)の後出発だ。東谷津から街之背峠を下りほたるの里、能仁寺山門前までのコースで虫を中心に探して歩く。子供達は虫を見つけると、素手で捕まえたり、捕虫網を振ってみたり、捕らえた虫を虫カゴに入れて見たり、持ち帰りたいと言うのを「自分で世話できないでしょ」「死んだらかわいそうでしょ」とかで親の必死の説得でしぶしぶ放す子供がいたり。やらせてみたらよいのにななんて思いながら後を追った。いろんな虫達に出会った子供達のうしろでは当然のことながら虫達の姿は無い。

(訂正:前回レポート124のオニヤンマはどうやら雄のようでした。尾部の卵らしきものは何だったのでしょうか)
 

サンゴジュハムシ:公園などでサンゴジュをみつけたら、根本近くから生えた幼木の葉を見てみよう。体長6ミリほどの小さな虫だがきっと見つかるはずだ。
 


ショウジョウトンボ雌:子供達は遥か先に行ってしまった後、雨の降り出した池のふちにいた。子供達は気付かなかったようだ。地味な体色だが、雄は真っ赤で派手な体色をしている。
 


ショウジョウトンボ雄−1:こちらがその雄だ。頭の先から尾の先まで真っ赤か、まるで赤とんぼのようだがその仲間ではないとのことだ。(7/11撮影)
 


ショウジョウトンボ雄−2:後ろから見ても赤一色、翅の付け根までも赤く染まっている。
 


オオホシオナガバチ:何とも美しい容姿。長い産卵管を朽ち木に差し込んでキバチ類の幼虫に卵を産みつけるのだそうだ。
 


キボシアシナガバチ:刺されると非常に痛む。巣が大きく成長し成虫が多数いる素に近付いてはいけない、攻撃してくるぞ。
この個体は幼虫に与える餌さを探しに巣から離れてきたようだ。後脚をこすって武者ぶるいか。
 


アカタテハの幼虫:子供達とカラムシ鉄砲をならして遊んでいて、カラムシの葉が袋状になっている葉を摘んでしまった。アカタテハ幼虫の巣だ。開いて見させてもらい、カラムシの群生の中に戻したが、この群生はやがて刈り取られてしまうだろう。
 


オオバノトンボソウ:山道脇に咲く多年草、茎を大きく伸ばし花をつける。花は子房や距、唇弁はラン科特有の形をしていて、訪れた虫達への罠を仕掛けてあり、花粉をはこんでもらう。
 


ヒメヤブラン:日当りのよい草地に生える小型の多年草。茎を伸ばして花をつけるが、背が低く他の草の陰に隠れて見逃してしまいそうだ。

 

東谷津レポート その124

2012.7.7(土),8(日) 山梨 am9:30〜16:00 小雨〜薄曇り〜晴れ

 

しとしとと五月雨る雨、やがて日が差すという天候の変化のなか2日間で虫達を探してみた。雨の間中彼らは葉裏や木の幹でじっと動かず雨をやり過ごす。やがて雨が止むと姿を現し、陽が射すと活発に動きだした。
 

オオヒシウンカ:雨が直接降り掛からない場所を見つけたようだ。大きな目をぎょろつかせて、まるで蝉のようだが体長が13ミリほどと小さい、ネムノキに寄生すると言われるがなるほどネムの葉での雨宿りは心もとないのだろう。
 


コマダラウスバカゲロウの幼虫:崖に生えた地衣類のなかで、体に苔をつけてひたすら小昆虫などの獲物が通るのを待つ。雨の日も風の日も苔になりきってひたすら待つ。(写真中央の草鞋のようなのが幼虫、頭は左斜め上。体長6ミリほど)
 


クロオオアリ:一時的に雨が止み、葉上でそわそわしているのは結婚飛行を雨に邪魔された女王か。夕方に飛行というので、どうにか間に合ったようだ。(体長10ミリほど、午前中飛行するクロヤマアリかもしれない)
 


アヤヘリハネナガウンカ:雨の日も晴の日も昼間はいつも葉裏でじっとしている。この美しく立派な翅は、強い光に当たると緑色に輝くのだそうだが、未だ見たことがない。(翅以外の体長5ミリほど)
 


シュレーゲルアオガエルの幼体:雨粒を浴びて生き生きしているのは水中生活から陸上生活に大変身したばかりでまだ尾が残っている幼体だ。
 


オニヤンマ:雑木林で雨をやり過ごす。飛翔の得意な大型トンボも雨には弱いらしく、近付いてもじっとしていて動かないので観察には具合がいい。この個体は産卵を中断されたのか尾部に卵のようなものをつけている。
 


オオチャバネセセリ:翅の白点模様から本種であろう。雨が止むと、他の蝶類が現れる前に飛んできて吸蜜していた。
 


クマバチ:こちらは小雨決行型、多少の雨粒は気にせずブンブンと大きな羽音をたてて花から花へ飛び回る。しと降る雨という情緒をかき乱すKYな奴だ。
 


オオシオカラトンボの交尾:雨が止み陽が射してくると、『待ってました』とばかりに飛び出し、バチンとぶつかって合体した。雌と雄の体色がよくわかる(写真の上が雄)。合体したなまま器用に飛び回る。
 


イタヤカミキリ:カミキリ達も動きだした。これはイタヤカミキリ(体長25ミリほど)であろうか。左の触角が折れているのはどうしたのだろう。
 


ゴマフカミキリの一種はナガゴマフカミキリ(体長20ミリほど)だろうか、ゴマフは類似種が多く同定には全く自信なしだ。
 


ミドリシジミ(雌)−1:カミキリムシを撮影していると『あそこに奇麗なチョウがいるよ』と指差している先に、『ミミ、ミドリシジミかも』さいわい近くに居た蝶君を呼ぶ。『おお。ミドリシジミだ!!』
 


ミドリシジミ(雌)−2:お尻をつけて、どうやら産卵しているようだ。あちらにちょん、こちらにちょんと、歩きながら尻をつけて産卵したようだ。

 

東谷津レポート その123

2012.6.28() 山梨 am9:30〜15:30 晴れ時々薄曇り

 

梅雨のこの時期雑木林は薄暗く静まり返っている。そんな山道を歩くときはいつもある虫に合えるような気がして木々の幹に目を配る。が、夜行動する彼らにはそう簡単には出会えない。林の先に大きく開けた草原が見えてきた、今日もだめかなと思ったとき、それも最後のコナラの幹にそれはいた。青白い絹の衣を身につけた雑木林の妖精オオミズアオだ。

『オオミズアオ』
 開長90ミリほどもある大きな蛾。翅がほぼ全体に水色がかった白、後翅には長く伸びてよじれた尾状の突起がある。まさに雑木林の妖精だ。この妖精達が出会うのは夜、雌の発散するフェロモンに雄が吸い寄せられるロマンチックな出会いなのだ。だが、現実はそうでもなさそうで、フェロモンが漂う範囲は数メートルとかなり狭いらしい。雄は雌のフェロモンを感じ取るまで夜な夜な飛び回り、やっと感じ取ってもそれから先は目視で探し当てなければ愛は実らないらしい。(出現期5〜8月)
 

オオミズアオ−1:やっと遭えたオオミズアオ、コナラの幹にいた。いろんなことがあったのだろう右の後翅はちぎれてなくなっている。
 


オオミズアオ−2:昼間はほとんど動かない、少し角度を変えてみた。長く伸びた尾状突起がカールしている。
 


オオミズアオ−3:コナラの幹ではなく小枝の葉に止まっていたのだ。太い大きな脚でがっしりと掴まっている。
 


オオミズアオ−4:さらに近付く。頭部には立派な触角、雄だ。このアンテナのような触角で雌の出すフェロモンを感じ取る(待の雌の触角は貧弱)。口吻は無く、何も食べないでひたすらフェロモン感知に飛び廻り雌を探す。そしてこの大きな複眼で雌にたどりつく。
 


テングベニボタル−1:大きなフキの葉の端に赤い甲虫がいた。おっ「ベニボタル!!」、今にも飛び立ちそうなので急ぎ数枚撮る。
 


テングベニボタル−2:だが横顔を見ると口が飛び出している。この突き出た口が天狗の鼻のようなところからこの名がついたようだ。(体長7ミリほど、発光せず)
 


クズノチビタマムシ−1:「さてこれから何を描こうかな」クズの葉を食べ進むのは体長が3ミリほどの極小さなタマムシ。自分より太い食痕を残して思案中。クズの葉でこんな食痕を見つけたら探してみて、きっとみつかるはずだ。
 


クズノチビタマムシ−2:大きくクローズアップしてみると、扁平な頭に金の微毛をはやして金属色に輝く。極小だがタマムシだ。
 


コフキゾウムシの交尾:近くのクズの葉の上では交尾中のカップル。雄は雌の背中から落ちまいと触角を折り曲げて必死の形相。(体長5ミリほど)
 


シラケトラカミキリ:白い微毛が体に生えているカミキリムシ。背中に「火」の字はトラカミキリ族の一員、彼らは雑木林の火消し番なのかしら。
 


ツマキホソハマキモドキ:東谷津のため池のショウブの葉の上で、後脚をぐるりぐるりと回している。動かすことにより、捕食者に触角だと思わせてこちらに攻撃させ、頭部を守っているのだそうだ。緑色と金色がメタリックに輝く美しい虫だが、食草のショウブが何者かに刈り取られ、めっきり見なくなった。

 

東谷津レポート その122

2012.6.14() 山梨 am9:30〜16:30 曇り後晴れ

 

週間天気予報の雲や傘マークが続く中、突如晴マークが現れた。「雨乞い池」にイトトンボを見に行くことにした。久し振りの山道は、景観間伐がされて林の奥まで見通せて、まるで別の地に来たようだ。「雨乞い池」にはイトトンボは見られず、外来種の水草が繁茂し、色とりどりの金魚がその間を縫うように群れていた。金魚はまた増えているようだが、山の中の湧水の池には不釣り合いに思うのだが。イトトンボには合えなかった帰り道、2年ぶりに出会った虫がいた。

『オオトラフコガネ』
 草原に降りて来ると、背が高くのびたヒメジョオンの花に上に何か甲虫らしいのがいるのが見えた。背中の派手な模様はもしや2年ぶりの、気付かれないように、しかも草が繁茂した足下にも気をつけながら近付く、やはりオオトラフコガネの雄だ。花の上でいろいろとポーヅをとってくれた。(初夏に現れ、昼間活動性で山地のはなに集まる。雄は触角で土中で羽化している雌を探し当て、土の中で交尾してしまうことが多いtのこと。飛翔能力が高く、体長は15ミリほど)

『ハイイロチョッキリ』
 シラカシ(アラカシかも)のおいしそうな若葉をかじっている虫はいないかななんて覗き込むが何も見つからない。だが、結実したばかりの小さな実に甲虫らし姿が見えた。まさか、こんな若い実に何をしているのだろうとカメラでクローズアップ、長い口吻をそのドングリンの小さな実に突き刺そうとしていた。そのまさかのハイイロチョッキリだ、穴をあけ、産卵のように尻をつける仕草をすると、とぼとぼと歩き始めた。(出現期8〜10月、ドングリに穴をあけ中に産卵し、落下したドングリの中で幼虫となり、ドングリを食べ尽すと脱出して土中にもぐり蛹となる。体長8ミリほど)
 

オオトラフコガネ雄−1:ヒメジョオンの花粉を食べにきていたのだろう。こちらに気付いたのだろう、花から顔を上げてちらりと見ている。飛び立つかもしれないので近付くのを止めた。
 


オオトラフコガネ雄−2:安全と思ったのだろう、緊張を解いて背中を見せた。これが名前の由来の虎模様(雌は黒っぽく背中に少しの斑紋があるだけ)、なるほど大きな触角は土中の雌を探し当てるのに必要不可欠なのだろう。
 


オオトラフコガネ雄−3:飛び立つ前ぶれか。花の上で動き出し少しポーヅをとって、やはり飛去った。
 


ハイイロチョッキリ−1:脚を伸ばし、長い口吻の先で結実したばかりの小さなドングリに突き刺す場所を見定める。
 


ハイイロチョッキリ−2:場所が決まると、脚を踏ん張って体を左右に振りながら口吻をキリのように差し込んで行く。こんなに小さなドングリでもちゃんと殻斗に差し込んでいる。
 


ハイイロチョッキリ−3:産卵したのだろうか、お尻をドングリの穴につけたような仕草の後とぼとぼと歩き出した。枝を切り落とさないところをみると産卵はしなかったのかも知れない。いかにも時期が早すぎるのだ。
 


ハイイロチョッキリ−4:つぎのドングリを探しているのか立ち止まる。写真左上が結実したばかりのドングリ。

 

東谷津レポート その121

2012.6.8() 山梨 am9:30〜14:30 晴れ

 

虫を採らない虫撮りにとっては、虫に合うのは一期一会で2度と合えない虫がたくさんいる。なるべく自然生息状態のものを撮りたいのだが、次に何時合えるかと思うとその場で撮って味気ない写真になってしまう。が、虫達は意外と人口建造物にいることが多いのだ。そこには隠れる場所も無いし、擬態も効かずかえって目立ってしまい多くの一期一会はそんな場所になる。虫達はなぜそんな場所にいるのだろうか。なかなか見られない虫に出会えるのは嬉しいが・・・。

『イボタガの幼虫』
毎年春先にアカガエルの産卵調査が始まると、同時に雑木林の樹幹にも目を配り探すものがいる。イボタガだ。成虫は春先に現れ、翅の模様はフクロウの顔に擬態しているという。未だ見たことが無い、この辺にはいないだろうなと思いながらも、初夏になり、食草のイボタノキが花をつけ独特の匂いを発すると幼虫はいないかと探してしまうが見つかったことはない。そんなある日『イボタガの幼虫見たいですか』と虫友からの連絡が舞い込んだ。言われた場所にはネズミモチの木、そこには確かに居て図鑑で見たアンテナを誇らしげに歩いている。ネズミモチ、調べてみるとイボタノキ属と書いてあった。自然生息状態の写真が撮れた。
 

イボタガ中齢幼虫-1:これは4齢幼虫だろうか、1齢から4齢までは頭部に4本と尻部に3本のアンテナのような長い突起を持つ。(終齢になるとこれらの突起は無くなる)敵が来るとこの突起を体ごと振り回して撃退するという。ヤドリバチのような小さな虫が飛んできてそれをやって見せてくれた。(5/31撮影)
 


イボタガ中齢幼虫-2:これが頭部、突起は長くちじれていて四方に張り出してアンテナのようだ。よく見ていると、このイモムシはそのままの体制で後退(リバースギアがあるようだ)が出来るのだ。数センチ後退すると、普通のイモムシのように体を曲げて前後の向きを変えるのだが、このアンテナが後退の機能を担っているのだろうか。
 


サラサリンガの幼虫:集団で行動するので近寄りがたいが、体表は繊細な刺繍を施したようだ。コナラの葉を集団で喰らっていた。
 


アケビコノハの幼虫:度々出会うこのイモムシは何時見ても滑稽な格好をしている。目玉模様を目立たせるために頭をお腹にくっつけて尻を持ち上げている。(これは食草からはなれてぶら下がっている状態)
 


ヤママユガの若齢幼虫:首に白い襟巻き、お尻に三角模様、蛇腹のボディーに産毛が生えている。ヤママユガの若齢幼虫のようだ。山道脇の土留めのヒノキにいたのは、頭上のコナラの枝先から落ちてしまったようだ。
 


ヒメオサムシかな:ヤママユガの幼虫を追いかけて行くと目の前に甲虫がいた。あわててカメラを向けると気付いたようで、サッと木の下に潜り込んでしまった。たった1枚撮れた写真だ。
 


アリグモ:橋の欄干の上をめまぐるしく歩き回るのはアリ、と思いきや何か変だぞ頭が異常に大きい。『アリグモだあ』擬態しているクロヤマアリのように前脚2本を触角に見立てて6本脚で歩く。動きが早く撮れたのはこれ1枚だけ。
 


エゾサビカミキリ:これも欄干にいた小さなカミキリムシ。(体長7ミリほど)
 


ナガジロサビカミキリ:山道沿いのガードレールの上でじっとして動かない。これも小さな(体長10ミリほど)カミキリムシだ。上記とこの2種名は違うかもしれないが、錆びた体色が何とも言えぬ味がある。
 


ニジマルキマワリであろうか:春先の薪割り中に朽ち木から出てきた美しい虹色に輝く翅をもった甲虫だ。よく似たニジゴミムシダマシかと思ったが、図鑑を見ると本種らしい、が、もし本種だとすると大変なコトになりそうだ。なぜなら、ニジマルキマワリは生息域が八重山諸島だからだ。